義理の父は私が結婚してからわずか3年で、肝臓がんで亡くなったので、短い付き合いでしたが、よく戦争中の話をしていました。
義父は身長が160センチに満たなかったので、「まさか、赤紙が来るとは思ってなかった」といつも言ってました。
赤紙が来た
赤紙と言うのは「召集令状」のことです。あなたは日本国の軍人に選ばれたので、お国のために戦ってください、という感じの令状です。
義父は身長が160センチに満たない小柄な人だったので、「まさか兵隊さんになるとは思っていなかった」そうです。国のために戦うためには、丈夫な体が必要だから、背が低くて小柄な男の人など、兵隊さんになるはずがないと思っていたので、まさに青天の霹靂でした。
その時に義父が思ったのは、「もしかしたら、神風特攻隊だろうか?」と言うことです。神風特攻隊と言うのは、飛行機ごと的に突っ込んでいく捨て身の特攻隊です。まさに命を捨てて、敵をやっつけるのです。
神風特攻隊なら、背が低くても関係ないだろう、どうせ死ぬのだからと、恐ろしくなったそうです。チビだから赤紙が来ることなんてないだろう、今までずっと赤紙が来なかったのはチビだからだろう、と義父は思っていたようですが、敗戦色が濃くなってきて誰でもよくなってきたんだろうか、などと色々なことが頭の中をグルグル回ったと、話していました。
衛生兵
しかし、いざ蓋を開けてみたら、義父は「衛生兵」でした。
衛生兵というのは、看護助手のような感じです。看護師の免許は持っていないけど、看護師さんや医師のお手伝い的なことをします。
包帯の巻き方を習って、負傷した兵隊さんたちの腕や足に包帯を巻いた、と話していました。そのほか、戦争中は麻酔薬などもほとんどないので、麻酔なしで治療をすることもあって、痛がって暴れる兵隊さんたちの上に乗ったりして抑えたり、食事を与えたり、着替えを手伝ったりしていたそうです。
包帯の巻き方を嫌と言うほど練習したから、今でも包帯を巻くのは上手やで。今はゴムが入ってて、伸び縮み自由やけど、当時はそんな上等の包帯なんかなかったから、傷口の真ん中に巻いて、両端に広げていくとか、外側から徐々に内側に寄せていくとか、いろいろな巻き方があったそうです。
背が低くてよかった
「背が低かったから、衛生兵と言うことで直接戦線に出なくてすんで良かったし、直接敵を殺したりすることなく済んでよかった。”背が低いことで得になることなんてない”って、それまでは思ってたけど、戦争だけは背が低くて良かったわー」と話していました。
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