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赤い紙、青い紙は誰が伝えたのか?

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下校時刻を告げるチャイムが鳴る。
教師に呼び出されていた少年が教室に戻った時、既にクラスメイトは全員いなくなっていた。
荷物をまとめた彼は、トイレに立ち寄る。
個室に入り用を済ませ、ペーパーを使おうとしたところ。

「あ・・・・・・紙が」

ペーパーは芯だけになっていた。
その時。

『赤い紙が欲しい? 青い紙が欲しい?』
どこからか声がした。

ありがと、えっと、赤い紙――」

言いかけた瞬間。
少年は身体中から血を吹き出して死んだ。
しばらくして。
噂を聞いた別の少年が、トイレで同じ声を聞いた時「青い紙」と答えた。
その瞬間、彼は身体中から血が抜かれ、今度は真っ青になって死んだという。

この都市伝説のおかしいところはなにか?
そう・・・目撃者がいないのである。

目次

他は全て現実通り

都市伝説は、基本的には事実ベースで話が展開する。
現実の中に、怪異が放り込まれた、そういう体裁になるのが通常で、それ以外の部分にオカルティックなものは含まない。
「神のお告げで語った話」には出来ない。

伝えるための目撃者が設定されているのが通常だ。
だが時折、このように全目撃者が死亡して、報告者がいない都市伝説がある。
これはどのように解釈すべきだろうか?

「作り話だから、理屈なんてない」

今はそういう話はしていない。
この話がオカルト的な事実だった場合について考えてみよう。

第三者語り部説

登場人物を改めて検討しよう。
登場人物は、実質的には2名だけだ。

  • 赤い紙を選んで死んだ少年
  • 怪異

青い紙の少年の方は省略。
理由は後述する。

この話が伝わる為には、当事者か目撃者が「語り部」になる必要がある。
まず、第三者が語り部の可能性について考える。
場所は学校のトイレだ。
語り部たる他の児童や教師が出入りする事は十分あり得る。
だが、第三者説には一つ大きな問題がある。

それは、被害者の少年が、トイレの個室に入っていた事である。

語り部が壁をよじ登って、個室を覗き込む可能性はあるが、そこまで近寄れば、怪異が見逃す筈がない。
最低限、何かしらリアクションを取らない事について、語り部の言及がなければおかしい。
だとすれば、語り部が少年達に気付いたのはドア越しだ。
つまり、語り部が認識出来るのは、少年と怪異の「声」だけという事になる。
この場合、語り部は次のように描写する筈だ。

「私がドアを開けると、血まみれで倒れている少年しかおらず、もう1人の声の主は忽然と姿を消していた」

これである。
第三者語り部の場合、「赤い紙青い紙」の声を怪異によるものではなく、人の声と認識してしまう。
この時、語り部がこの怪異の能力と認識するのは「透明化」または「瞬間移動」であり、紙の話はほとんど記憶には残らない。

怪異語り部説

消去法からすると、語り部は怪異自身だ。
つまり、怪異自身が言い触らしたのだ。
怪異は語り部としては十分な力がある。
この事件の全体を把握しており、物語の最後まで死なず、語る声を持っている。

だが怪異に、この話を広める動機があるだろうか。
認識される事で存在が強固になる」
確かに現代創作どころか、古代ギリシャ神話にすらある考え方だ。
しかし、この怪異は遭遇者を死なせてしまう。
「語られたい」という動機なら、怖がらせて逃がし、噂を広めさせる方がずっと効果的だ。
どちらかと言えば、怪異の動機は少年の殺傷、もう少し具体的には「血液」であると考えるべきだろう。
赤い紙も青い紙も、選択結果は失血死である。
怪異としては、飛び散った血を舐めるにせよ、抜き取った血を飲むにせよ、血を欲しているように見える。

血が動機の怪異には、怖がられるような都市伝説を広める理由がない。
むしろ、安心してトイレに来て貰わなければ、獲物がいなくなってしまう。

第三の男説

消去法、と先ほど言った。
だが、実はもう1人、検討していない人物がいる。

少年自身である。

少年の作り話という意味ではない。
出血までは事実だったと考えよう。
自分の身体から大量の血が噴き出す。

だが、致死量ではなかったら?

人間の大動脈も大静脈も、体表にはない。
「身体中から」「瞬間」に大出血して見えても、それは体表の毛細血管からの血液だ。プロレスにおいて「流血」「血まみれ」と騒がれる時、出血量は100ccにも満たないという。
体重50kgの人間で、1200cc程の血液が失われると血圧低下が始まる。
例えば、だ。
1リットルの血は、容易に身体を覆う。
それでも致死量ではない。
恐らく「赤い紙」は、怪異にとっては回収効率の悪い「ハズレ」選択肢だったのだ。

少年は身体中から噴き出す血に驚きながら、まだ動く手足でトイレを飛び出した。
怪異がトイレで待ち伏せていた事を考えれば、テリトリーはトイレの外まではいけない。
逃げ出した子供は、その後、教師に発見され一命を取り留めた。

本人が話す「死ぬかと思った」、目撃者の「血まみれだった」という言葉が、「血まみれになって死んだ」に変換されるのは噂の当たり前の機序だ。
噂話や都市伝説は、ショッキングな方が面白がられる。
一方、死んだ筈の少年が語り部になっては矛盾が生じるため、その部分は曖昧にされてしまったのだ。

青い紙の少年

次に語られる青い紙を選んだ少年。
彼については、時系列的に後に起きた出来事で、その後一つにまとめられたと考えれば良い。
既に赤い紙の少年の話が伝わっている以上、トイレで失血死して青く見えれば、「青い紙を選んだ」と類推される。
いや、既に赤い紙の少年の噂は伝わっている界隈の事だ。
むしろ、「青」がイメージされる死体が発見されれば、それは全て「青い紙」に結びつけられただろう。
青い軽トラにはねられた、青い海で溺れた、青いブダイでシガテラに当たった、何でもある。

「失血」も、怪異と遭遇したとは限らず、何らかの犯罪者や別の怪異が血液を抜き取った可能性も十分ある。
そう。人間が加害者の場合も珍しくはない。
人間が自分を「吸血鬼」と誤認し、人間の血を吸う事件は幾度か発生している。
結局、人間だろうが吸血鬼だろうが、青い紙の怪異だろうが、大きな違いはないのだ。

血を抜かれる側に、してみれば。

※画像はイメージです。

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