週刊ヤングマガジンに連載中の「アルキメデスの大戦」、2019年に実写映画が公開されました。戦艦大和建造を巡る部分を中心に描かれています。
原作漫画では、それ以外にも戦闘機の開発やドイツからの新技術の導入、中国戦線不拡大に向けた東條英機への直談判、上海での精密爆撃の実施など、これでもかと言わんばかりに主人公・櫂中佐が八面六臂の大活躍を見せます。
しかし、なんでもかんでも櫂中佐の有能さが協調される展開も多く、ちょっとなんだかな?とすら感じてしまいます。
たとえば、先の上海での精密爆撃の実施のくだり。
櫂中佐は海軍の上海での爆撃作戦に際し、民間への被害を最小限に抑えるべきだとする観点から、的の物資集積所のみに絞った爆撃の実施を主張します。そしてそれを実現するためには、爆撃機の中で瞬時に爆弾の投下隊タイミングを計算し直す必要があるとして、自らその計算の為に爆撃機に乗り込み見事成功させます。
主人公なのだからこの活躍は良いとしても、その後が?です。何かというとその櫂中佐が行った精密爆撃が、ナチス・ドイツにもたらされ、その後のドイツによる電撃戦の元として用いられることになったと描かれているのです。
いやいや、民間の犠牲を抑えるために精密な爆撃をしたのであって、迅速な縦方向への進撃を爆撃で支援する戦術とはどう考えても別だろうと突っ込みたくなるシーンでした。
そもそも櫂中佐の精密爆撃は、非戦闘員を戦争に巻き込まないようにしたというヒューマニズムから発していました。それがドイツに参考にされてポーランド侵攻を招くというのでは、櫂中佐の存在自体がむしろ戦争を引き起こしているという事になってしまってます。
こうした部分、戦争賛美と取られないようにあくまで主人公はヒューマニズムを追求していると描かざるを得ない点が、架空戦記や異世界物と違うジレンマを感じずにはいられません。
(C) アルキメデスの大戦 三田紀房 講談社 / ヤングマガジン
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