バートンアグネスホールは、イギリス・ヨークシャー地方に実在する16世紀末建造の大邸宅である。
歴史的建築物として知られる一方、この建物には古くから不穏な噂が付きまとってきたのだ。
バートンアグネスホールの背景
バートンアグネスホールは、イギリス・ヨークシャー地方に建つ16世紀末の大邸宅で、現在も保存・公開されている。
邸宅は、当時ヨークシャーで勢力を持っていたサー・ヘンリー・グリフィスによって建設され、ロングリート・ハウスなどで知られる建築家ロバート・スマイソンの設計に基づき、エリザベス朝様式を取り入れた壮麗な建築物である。
左右対称を強調した外観、大広間を中心とする明確な空間構成、装飾性の高い内装など、屋敷は家の格式と権威を示す設計がなされ、地方貴族の邸宅としては異例の完成度を誇った。
建築には数年を要し、完成後は周辺でも屈指の豪邸となった。
グリフィス家には三人の娘がおり、なかでも末妹アン・グリフィスは、まだ建設中であったにも関わらず邸宅に強く魅了されてしまう。
美しい建物の構造だけでなく、内装や家具の配置、装飾の細部に至るまで心を奪われていたというのだ。
アンの悲劇
屋敷がほぼ完成に近づいたころ、末妹アン・グリフィスは思わぬ不幸に見舞われた。
ある日、近隣のハーパム村を訪れた帰り道、彼女は強盗に襲われ、致命傷を負ってしまう。
死の間際、アンは姉妹に向かって告げた。
「死しても愛する館に身を置かねば、魂は永遠に安らぐことができない。首を切り離して館に保管してほしい。」
当然の事ながら、姉妹にはそんな異質な願いを叶える勇気はない。
希望に沿うことなく、教会の墓地に埋葬した。
だがそれから屋敷では奇妙な現象が相次くようになった。
夜ごとに聞こえる屋敷をなにかが徘徊しているような足音、勝手に開閉する扉、女性の悲鳴や遺品の位置が変わるといった怪異が姉妹たちを悩ませた。
それは単なる怪異ではなかった。まるでアン自身が屋敷にとどまり、遺言を無視されたことへの怒りと執念を形にしているかのようだった。
姉妹はもはやアンの遺言を果たすしかないと悟り、墓を掘り起こした。
すると、まるで待ちかねていたかのように、アンの頭部はすでに胴体から分離していたという。
頭蓋骨を邸宅へ持ち帰ると、それまで続いていた怪異は嘘のように収束したのだ。
現在のバートンアグネスホール
伝承が残されているにもかかわらず、アンの頭蓋骨がどこにあるのかは明らかではない。
怪異が収まったと語られていることから、今も館内に安置されていると推測される。
いくつかの説の中で一番有力なのが、グレイト・ホールの壁の内部、暖炉上部のパネルの裏だと言われている。
他にも、玄関ホールから入って左側の壁の中に塗りこまれているとも伝えられるが、いずれも確証はなく、あくまで口承の域を出ない。
いくつかの説があるなかで、ザ・クイーンズ・ステート・ベッドルームの存在は無視できない。
この部屋は館内でもとりわけ装飾性が高く、優雅さを極めた部屋らしい。
アンは生前、この館に強い執着を抱いていたと伝えられている。そう考えると、頭蓋骨がこの部屋のどこかに安置されていたとしても不思議ではない。
少なくとも、私はそう思う。
いずれの話にも決定的な証拠はなく、もしかすると怪異やアンの頭蓋骨の話も作り話なのかもしれない。
バートンアグネスホールは現在も一般公開されているので、確かめに足を運ぶのも一つだろう。
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