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知っているようで知らない、衛生兵のいろいろ!

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若い方の中にはそんな作品知らないと言われる方もあるかも知れないが、1960年台に制作された第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台とし、そこに従軍するアメリカ兵達の活躍を描いたドラマに「COMBAT!」がある。
同作「COMBAT!」は日本でも吹き替え版等がオンエアされ、歩兵ながら戦車兵用のタンカース・ジャケットに身を包み、トンプソンSMGを愛銃とするアメリカ陸軍のサンダース軍曹らの分隊を主役とするアクション作品だ。

そんな「COMBAT!」の中で通常の戦闘員ではなく、日本語吹き替えでも「ドク」(医師:ドクターの略称)の愛称で皆から呼ばれていたのが、正式には医師ではないが戦場に同行する衛生兵だった。
ヘルメットや腕章等に赤十字のマークを身につけた彼ら衛生兵は、アメリカの戦争ものの作品では数多く目にする存在だが、改めて軍隊における彼らの役割やあり方を振り返ってみたい。

目次

衛生兵の定義と主任務

衛生兵とは所謂戦闘員とは異なり、専ら友軍の負傷者に対して応急の救命処置や衛生管理を施す事を主任務とした軍人の事であり、現在の日本の自衛隊であれば「衛生科」に所属する隊員の事を指す。
前述したようにアメリカの戦争もののドラマや映画などではよく「ドク」の愛称で呼ばれているのを見聞きするが、衛生兵は必ずしも正式な医師等である必要はなく、軍で決められたカリキュラムを収めている人物となる。

そのため戦場の状況にもよるが、医師としての技能までは持ち合わせていない衛生兵は、負傷した友軍兵士が出血死に至らぬように止血を行う事や、痛みを抑える為に麻酔等を施すなど、緊急の延命措置を担っている。
その延命措置が功を奏して後に野戦病院等に兵士が搬送されると、通常そこには本職の医療免許等を持った軍医が配置されており、外科的な処置を含め本格的な医療による治療が行われる事となる。

衛生兵らが携行・使用する物品

戦場で専ら友軍の負傷者に対して応急の救命処置や衛生管理を施す事を主任務とする衛生兵は、これを遂行する為の各種の医療用の物品を携行・使用するが、無論軍や任地によってその内容は大きく異なる。
大まかに何れの場合でも装備しているであろう物品には、如何なる応急の救命処置にも必須の止血帯・包帯・ガーゼ・絆創膏等の衛生・消耗品が先ず第一に挙げられるだろう。

次に痛み止めの麻酔等を行うのに必要な注射器やその内容物、聴診器や消毒薬、輸血用のチューブや生理食塩水等の物品が挙げられ、これらだけでもかなりの量を携行しておく必要があると思われる。
因みに近年のアメリカ軍の場合、兵士各人もIFAK (インプローブド・ファースト・エイド・キット)と呼称される個人単位の救急医療キットを支給されており、衛生兵を介さないセルフ・ケアも以前より行い易く見える。

日本のインターネット通販でも、こうしたアメリカ軍放出品のIFAKを入手可能ではあるが、販売元は何れもコレクションの一環だと謳っており、実際に使用した場合の不具合の責は負わない旨を謳っているのが興味深い。

第二次世界大戦時のアメリカ軍の衛生兵
Source [1], Public domain, via Wikimedia Commons

ジュネーブ条約と衛生兵

国際法の一種として戦時国際法があるが、この中のひとつにジュネーブ条約(別名:赤十字条約)もあり、傷病者と捕虜となった兵員の待遇を改善する事が定められており、これに付随して衛生兵の保護も謳われている。
このジュネーブ条約の中では、衛生兵が所属する部隊や施設・設備は交戦国がこれを相互に保護する事が定められており、それは衛生兵自身が武器を使用して戦闘に加わらない限り保護される事を定義している。

こうしたジュネーブ条約上の衛生兵の保護を担保するために、第二次世界大戦時までの各国は自軍の衛生兵にそれとわかる白地に赤十字のペイントを施したヘルメットや、腕章等の装着を義務付けていた。
しかし奇しくもこの2022年にウクライナへと突如侵攻を始めたロシア軍の無差別攻撃等でも明らかなように、建前としての戦時国際法は主体となる軍の主張如何によっていとも容易く形骸化してしまうのが実情ではある。

そのため第二次世界大戦時でも攻撃する側の軍からしてみれば、負傷させた敵の兵員の延命を担う衛生兵は、何らかの理由をつけて排除する方が効果的だと見做され、意図的にこれが攻撃されたと思しき事例も多いようだ。

伝説の衛生兵「デズモンド・T・ドス」

第二次世界大戦時にアメリカ陸軍の衛生兵として従軍したデズモンド・T・ドスは、日本とアメリカとの太平洋戦線で献身的な働きを見せ、殊に沖縄戦で75名もの命を救った事績は映画化され、世界中で最も有名な衛生兵となった。
この映画は2016年に公開されたメル・ギブソン監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の「ハクソー・リッジ」であり、本作は沖縄本島の浦添城址近郊の日本軍陣地を巡る激戦の地を舞台にその活躍を描いたっものだ。

衛生兵であるデズモンド・T・ドスの実話を元にしたこの作品は、巷に溢れるアクション戦争映画とは趣を異にし、宗教上の理由から良心的兵役拒否をしていた彼が、献身的な救護で多くの命を救った事を伝えている。
デズモンド・T・ドスは衛生兵としての数々の功績から、アメリカ軍の最高位の勲章であり、時の大統領から直に授けられる名誉勲章を授与した唯一の人物であり、これは今後も変わらないと思われる。

現代の衛生兵と日本

特に21世紀に入って以降は、ある一定規模以上の国の正規軍同士が直接の武力衝突、戦争状態に突入する事は少なくなっており、この2022年にウクライナ戦争が勃発するまではその傾向が強まっていたと言って良いだろう。
但し最近のアメリカ軍などでは殊に中東での軍隊以外の敵組織との非正規戦闘が多かった事もあってか、そうした勢力が国際法の枠組みに縛られない事もあるのだろうが、一見して衛生兵とわかる形態はとっていないようだ。

故に昨今のアメリカ軍の衛生兵は通常の兵士と同じく、護身用の拳銃のみでなくM4カービンをも携行しており、友軍に負傷者が出ない限りは同様に戦闘行為にも参加する位置付けのようで、時代の変化を実感せずにはいられない。
因みに無論今の日本の自衛隊にも衛生兵は存在するが、そもそも軍隊ではないと言う自衛隊の定義は日本国内の政治的な思惑にも左右されながら、海外派遣されるなど傍から見ていても非常に危うい状況に思えてくる。

ウクライナ戦争を皮切りに新たな安全保障のあり方が問われる中で、有事の際には最前線に立つ可能性が高い自衛隊の方々の為にも、日本も対外的にその扱いを確固としたものとする法整備を進めておくべきだと思えてならない。

※画像はイメージです。

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