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ココナツによる死という都市伝説の裏で

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ココヤシは、南国風情をいかにも感じさせてくれる樹木である。
その果実であるココナツは、ココナツミルクを楽しむ他、脂肪分が利用でき、太い繊維はタワシにもなる。
一方、その巨大で重量のある果実が実るのは、樹高30mのはるか上空であり、収穫は容易ではない。

黙っていればいずれ熟して落ちるが。
重さ4kgにもなる果実が落下した時、その衝撃は100万ジュール。元ヘビー級ボクサー「マイク・タイソン」のパンチが1600ジュールなので、600倍を超える威力という事になる。
『ココナツによる死』は、実は年間『150件』もある身近な事件である事を、諸兄は知っていただろうか。

目次

という都市伝説

2002年データによると、ココナツ衝突による死者は年間150名。サメによる死者が5名ほどなので、実に30倍にも達するという。

ハインリヒの法則によれば、1件の重大事故の前に、軽微な事故が29件隠れており、さらに事故寸前だった事例が300件隠れているという。
従って、ココナツは報告件数の300倍もの人が、紙一重の危機にあったと言える。
恐ろしい話である。
これが事実なら、人類の敵たるココナツを撲滅せしめ、20年に1度の海外旅行の時も、ココナツだけは不買せねばならない。

さてさて。これはどうにも誇張された話ではあるまいか。少なくとも知人でココナツ死した人はいない。
保険のプランにも「ココナツ死」は通常項目にない。
だが、ココナツによる死は実在する。

  • 1943年 ガダルカナル島
  • 1966年 パプア・ニューギニア
  • 1973年 ハワイ
  • 1991年 スリランカ
  • 1997年 バヌアツ共和国

など、枚挙に暇が無い。
セイロン島では4人に1人がココナツで死んでいるとの記述も見られる。

起きそうな事は、どこかでは起きている

ここまで読んで、ココナツが本当に危険だと思ったとすると、あなたは重要なポイントを見逃している。

この話には、おおよそ客観的な統計的根拠がない。
事故死者の事例は事実(ウィキペディア記載程度には)だが、大元の根拠である年間150名という死者数が誤りである。

この話の元ネタは1984年のピーター・バルス博士のイグ・ノーベル賞受賞論文の、「パプアニューギニアの定点において、怪我の入院患者の2.5%がココナツの負傷で、2名が死亡した」という記述である。
そして150名という人数は、旅行保険を売る為にイギリスの保険会社が、前述のデータを元にでっち上げたものである。
何をどう計算するとそうなるかは分からないが、ごく限られた地域の2.5%を、世界の怪我による入院患者数と死亡率に当てはめたようだ。

思い出はいつも綺麗だけど

人はしばしば起きた事象のドラマティックさに気を取られ、確率を忘れる。

人類は60億人いる。

60億回の試行の中では、信じられないような偏った結果を引く者もいる。宝くじに当たる人もいれば、雷に打たれて生きている人もいる。
情報過多の時代、意外な情報が出た時は、ソースを確認するクセを付けないと、印象操作に容易に引っかかってしまう。

だが我々はもう1つの視点も持たねばならない。
あまりに馬鹿げた事実は、別の何かを隠すために用いられているという可能性である。

これを仮に「赤毛組合メソッド」としておこう。
この150名説が一般に広まったのは2002年である。

サメの専門家が、サメの危険性が小さいという比較に引用し、着目されたという。
2002年に一体何があったのか?

赤毛組合メソッドによる考察

2002年、それは、欧州連合のユーロ貨幣流通開始年である。

通貨統一によりヨーロッパ内の交流が頻繁になるのは良い事ばかりではない。
消費行動は偏り、生産力やサービスに劣る加盟国はやせ細っていく。歴史に残る制度の始まりだ。
実際の経済的影響について、加盟国は細心の注意をもって見守り、あまりにも問題があるならば、定着する前に停止する可能性もあったろう。

だが、折しも発せられたココナツ危険説は、EU諸国を駆け巡る。

各国でココヤシの撤去が検討された事は想像に難くない。実際、同じヨーロッパを源流に持つオーストラリアのクイーンズランドでは、ココヤシ撤去の記録もある。国民が危険性を知った以上、EU各国は国内のココヤシ撤去に動かざるを得ない。

南国の植物は、大半のヨーロッパ諸国には生えていないと思うかも知れない。だが万に一つでも見落としがあれば、発生するのは無辜な国民の死だ。
ヨーロッパではベラルーシとロシア以外は死刑が廃止されている。2002年時点でもギリシャとアルバニアが増えるだけだ。

どんな犯罪でも死を免れるヨーロッパで、行政の怠慢で死者が出たとなれば、内閣どころか議員は衆参総辞職、選挙の街宣車で夜も眠れない。
だが、「ない事」を確認するのは、「ある事」を見つけるより大変だ。
こうして、膨大な人員が極秘裏にココヤシ捜索に振り分けられた。極秘なのは当然だ、迂闊に世論を刺激すれば、ココヤシを見に行き、ガラケーで記念撮影をする物好きが出て来る。
こうして監視の薄かったユーロ貨幣だが、幸いにも大きな問題なく一年目を終え、定着していった。

2010の欧州債務危機までは。

これによって誰が得をしたか、この憶測が事実であったかは、歴史が明らかにしていくだろう。

尚、ココヤシが危険なのは別に嘘ではないし、怪我人も出る。あくまで人数と算定の経緯がおかしい、という話である。
下で寝るような事は厳禁であり、ハワイにも警告標識がある。
ただし街路樹のココヤシは行政が管理しており、果実が無闇に落ちるような事はない。普通に下を通り過ぎる分にはそうそう当たるものではない。
怪我をするのはもっぱらココヤシ農園で、ココヤシを収穫する人である。

※画像はイメージです。

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