プロペラ攻撃機が有効!?米空軍 エンブラエル A-29スーパーツカノ とは?

2020年現在において特に軍用の航空機はそのほとんどが機関部にジェットエンジンを採用したものが大半であり、高速度で機動性に優れた機体が戦闘機や攻撃機の分野では当たり前となっている。

只近年は所謂第5世代戦闘機の潮流としてレーダーに捕捉されにくいステルス性能を備える機体が主流となってきており、最高速度は従来機よりも若干抑え気味と言うことも出来る。
しかし第二次世界大戦でジェット機の軍用機が実用化されてこの方、それまで主流であったレシプロエンジンのプロペラ機が完全に駆逐されたかと言えば答えは否であり、今でも新造の機体が存在する。

これこそが日本では馴染みが薄いと思われるが実は世界第3位の規模を誇り、ブラジルの輸出企業として同国で首位に君臨するエンブラエル社が手掛ける「EMB-314 A-29スーパーツカノ」だ。

世界3位の規模を誇るエンブラエル社とは

エンブラエル社は1969年に設立された航空機製造企業でブラジルのサンパウロに本社を置き、2013年にアメリカのボーイング社、ヨーロッパのエアバス社に次ぐ世界第3位の規模に到達している。
それまではカナダのボンバルディア社にツ次ぐ世界4位が定位置であったが、2000年代に世界的に拡張傾向にあったビジネスジェット分野への参入にも成功しシェアを拡大させた。

エンブラエル社の民間用旅客機・ERJ-170は、日本でも日本航空グループのジェイエア運輸や、フジドリーム・エアラインズが導入するなどしており国内でも目にする機会がある。
元々ブラジルの国営企業であったエンブラエル社は、その絡みからブラジル空軍で多くのシェアを獲得しており、実に同空軍の保有する機体の半数占めるなど検討を見せている。

しかしこれまで経営が順調だったかと言えば、1991年に深刻な危機に陥ったことで1994年に民営化、1999年にはフランス・ダッソー社に株式の2割を売却して提携するなど慌ただしかった。
更に2019年には一旦旅客機部門をボーイング社に売却することが決定するも、翌2020年に中止が発表されており、先行きは不透明な状態が続いているとも言える。

Rob Schleiffert, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

エンブラエル EMB-314 A-29スーパーツカノの諸元

「EMB-314 A-29スーパーツカノ」は、ターボプロップ式の単発エンジンを搭載した練習機「EMB-312」を元にして開発された機体で、単座の「A-29」と複座の「AT-29」の2種類がある。
「EMB-314 A-29スーパーツカノ」は全長11.30メートル、全幅11.14メートル、重量3,200キロ、出力1,600ps、最大速度時速590キロとなっており、ブラジル含む世界14ヶ国で採用されている。

因みに「零式艦上戦闘機五四型」は全長9.237メートル、全幅11.00メートル、重量2,150キロ、出力1,560ps、最大速度時速572キロであり、太平洋戦争時の同機と類似した諸元と言える。

「EMB-314 A-29スーパーツカノ」が注目を浴びたのは自国ではほぼジェット機のみの運用していないアメリカ空軍が、2013年にアフガニスタン用に「A-29」の導入を決めた事が大きい。
これを皮切りにして2015年以降の航空ショーで「EMB-314 A-29スーパーツカノ」はアフリカのマリやガーナなどの国々から引き合いがあり、また南米のチリ・コロンビアにも採用されている。

アフガニスタンでの主な用途はタリバンなどの武装組織に対する地上への掃討任務とされており、他の導入国でもこうした非対称戦への対応や訓練用としてのニーズに対応したものと言えるだろう。

アフガニスタン仕様のエンブラエル A-29スーパーツカノ

「EMB-314 A-29スーパーツカノ」が世界的にも注目を集めることとなったアメリカ空軍によるアフガニスタン向けの機体は、複座でプロペラ機とは言え各種の兵装が可能となっている。
まず主翼に2基の50口径のM2重機関銃を備えており、さらに主翼の下部のパイロンに70mmロケット弾のポッドが懸架される形式となっている。
アフガニスタンでの「EMB-314 A-29スーパーツカノ」は、タリバン等の武装組織を掃討する為、かなりの低空飛行が予期されるため、操縦席周りには追加の防弾装甲が施されている。

また導入自体は2016年初より実施されていたが、2018年にはレーザー誘導方式を採用した爆弾・GBU-58ペイブウェイへの対応も追加され、対象機には機首底部への照射ポッドも装備された。
既にこのGBU-58ペイブウェイは実戦に投入され、タリバンの潜む建物や車両への攻撃において実に96パーセントもの命中率を誇り、ピンポイントでの攻撃に非常に効果を発揮していると言う。

アメリカ空軍が2013年に最初の20機をアフガニスタンへの売却に計上した費用は合計で4億2,700万ドルとされており、日本円で約460億円、1機あたり約23億円ほどのコストと見られる。
アフガニスタンは2018年までに22機の「EMB-314 A-29スーパーツカノ」の導入を終えており、今後の状況次第では更に増加させる可能性もありそうだ。

Staff Sgt. Larry Reid Jr., Public domain, via Wikimedia Commons

アメリカにおけるエンブラエルEMB-314 A-29スーパーツカノの導入

アメリカ空軍がアフガニスタンに向けてエンブラエルEMB-314 A-29スーパーツカノを導入させたことは前述の通りだが、そこでの多大な戦果を目にして2019年には自軍への採用も決定した。
アメリカ空軍では先ず3機をエンブラル社に発注し、機体自体は2020年頭に納入予定とされており、ネバダ州ネリス空軍基地に配備されGBU-58ペイブウェイに続く精密誘導兵器の開発も見込まれる。

これまでアメリカでは民間軍事企業大手のブラックウォーターUSA社が独自にエンブラエルEMB-314 A-29スーパーツカノを調達し、訓練用に使用しているのみであった。
しかしアメリカ空軍が自前で調達を始めたことで、更にエンブラエルEMB-314 A-29スーパーツカノの導入を検討する組織や国が拡大していくことも予想されている。

eyecatch source:U.S. Air Force photo by Ethan D. Wagner, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由

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