第二次大戦中、ドイツ宣伝省が国内の映画館で上映した自国民向け宣伝映画『ドイツ週間ニュース』ですが、戦争末期、1945年3月に公開された最終号では、虚偽と思われる部分と真実と思われている部分、その両方が映像から見えるように思ったのでした。
都市での不発弾処理と総統自身による少年兵への叙勲
まず、真実と思われるのは、映像冒頭でのベルリン市内らしき都市での不発弾処理の様子です。将官の階級をつけた人物(騎士鉄十字勲章もつけている)が、楽しげ(なのか?)に時折笑顔を浮かべながら、不発弾の信管を除去している様子は、国民を励ます意図もあるのでしょうけど、日本の宣伝映画『日本ニュース』では見ることが無い場面(演出)のように思います。
次いで、かの「ちくしょーめ!」と総統閣下が叫ぶ映画でも登場した、総統ヒトラーによる少年兵へ鉄十字勲章を授与する場面ですが、実際のヒトラーは、この際、若き少年兵の姿を見て何を思ったのか、気になるところです。一方、少年兵の制服を見ると、武装SSやら空軍やら在庫がある制服を着せているところを見ると、「戦争末期だなぁ」という雰囲気をも感じます。
自国が戦場であることを隠せなかった?戦局地図
映画の3分45秒頃に表示される東部戦線の戦局地図、飛び地である東プロイセンから旧ポーランド、ベルリンから東側の本土部分を示していますが、本土が戦場であることをこうして地図でも示しているのは、宣伝省といえども隠せなかったというべきなのでしょうか。
もっとも、1945年になり東プロイセンが戦場になった際、参謀総長の職にあったグデーリアンが「本土が戦場になる」旨をラジオだったかで発表しているということで、隣国と陸続きのドイツの事情と言えばそれまでですが、この部分は実直なドイツらしさが出ているのかもしれません。
まぁ、西部戦線では、1944年末には、西武国境近くにあるドイツの都市・アーヘンが西側連合軍に占領されてはいるのですが・・・
列車で戦車を輸送?そんな余裕があるのか??
後半、東プロイセンからの民間人の海場脱出が描かれた映像の後、東部戦線に戦車(IV号戦車系の突撃砲、上部転輪が3個に減らされたJ型がベースになっている)が輸送されている場面が登場するのですが、制空権が連合国に握られている時点でも、列車により戦車が無事に輸送されているというのが、本当なのか!?という疑問を感じる場面です。
もしかしたら、宣伝省がバンクしている映像から、戦局を有利に進めているということを印象づけるために、戦車を輸送している映像を意図的に入れているのかもしれませんが、IV号戦車J型をベースにした突撃砲を輸送しているという点では、戦争末期のドイツ装甲師団の姿を記録していると受け止めるべきなのかもしれません。
いずれにしても
『大本営発表』に忠実な日本の『日本ニュース』と比較しても、五十歩百歩かもしれないですが、自国の不利な部分も映像として国民に公開している、ドイツ宣伝省が戦争末期、後世に「何か」意図を込めて制作したような、そのように個人的に感じながら見ていた『ドイツ週間ニュース』でした。
image source:WWⅡドイツ週間ニュース 1945.3.22 帝国最後のニュース-youtube
思った事を何でも!ネガティブOK!
コメント一覧 (2件)
ヒトラーユーゲントと国民突撃隊は事実上の被害者。
最後に上映されたドイツ週間週刊ニュースは事実上の反戦映画だ。