私の家には8月のお盆の頃になると幽霊が出ます。
かすれたような軍服を着た、よれよれの男性の幽霊です。
就職してからもずっと実家暮らしの私は、否応なしにこの幽霊と鉢合わせします。
真夜中になると、二階にある自室の私が寝ているベッドの横を音もなくすーっと通りすぎます。
たちが悪いことに、どうやらこの幽霊は私以外には見えないようで、一度父に一晩中見ていてもらった時は幽霊が父をじーと見つめていたにも関わらず父は何もいなかったと言いました。
怖くて仕方ありませんが実害があるわけでもなく、幽霊の追い払いかたなど分からないのでずっと我慢していました。
その年もまるで我が家ように図々しくその幽霊は現れました。律儀にも毎年現れる幽霊に腹を立てていた私は、真夜中に現れた幽霊をじっくりと観察しました。
頬は痩せこけ、かすれて所々が破けた軍服、目はまっすぐと正面を見ていました。そして、よく見てみると左手の小指は第一間接から先がありません。
おそらく、生前に小競り合いか何かでなくしたのだな・・・などと、まじまじと幽霊を見ていると、いきなりまっすぐに歩いていた幽霊が私の真横で止まりました。
心臓が早鐘のように脈打ちました、今まではずっと通りすぎるだけだったのに!なんで今になって止まるの!?と頭のなかはこんがらがりまともな思考は出来ません。
体の上に一枚乗せただけの薄っぺらいタオルケットを頭に掛け、視界を塞ぎ早く幽霊がいなくなることを神様仏様に祈りました。
祈りが通じたのか、少し経ってからタオルケットから顔を出すと幽霊はいなくなっていました。
ほとんど眠れぬまま朝を迎え、朝ごはんの支度をしている母親に飛び付き、幽霊のことを話すと母親は懐かしそうな顔をして語り始めました。
私にはお爺ちゃんが居たようで、私がまだ小さい頃に胃ガンで亡くなったため、私はあまりよく覚えていません。
お爺ちゃんは第二次世界大戦に参加し、シベリア送りになった後に日本へ帰国しました。
シベリアでの労働の際に凍傷で小指を切り落としたそうです。
幼い私はお爺ちゃんに可愛がられたようで、お爺ちゃんは胃ガンで亡くなる直前まで私と遊んでくれたそうです。
ああ、そうだったの。お爺ちゃん、それなら言ってくれれば良かったのに。
それ以来お爺ちゃんは姿を現さなくなりましたが、なんとなく今もお爺ちゃんに見守られている気がします。
※画像はイメージです。
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コメント一覧 (1件)
祖父殿も一言言ってくれれば( ^ω^)・・・