出羽三山の開祖 蜂子皇子を深掘りする

「西の伊勢参り、東の奥参り」という言葉があるように、伊勢に参拝をしたら、東の奥にも参拝しなさいといわれている。
その東の奥というのが、山形県にある出羽三山である。

出羽三山の開祖蜂子皇子（はちのこのおうじ）は、第32代崇峻天皇の第3皇子である。
飛鳥時代の皇族である蜂子皇子が、なぜ、大和の地ではなく、遠く離れた、当時は蝦夷の地であったはずの地に開山したのか。

出羽三山とは？

出羽三山は、古来から山岳信仰の場として、現在でも多くの修験者・参拝者を集める場である。現在も山伏による秋の峰入りと呼ばれる山にこもる荒行が行われるとされる。
生まれ変わりの黎場と言われ現在でも多くの参拝者が訪れる理由には、羽黒山では現世、月山で死後の世界、湯殿山で未来を体験できる三関三度の霊山であるからである。

開祖である蜂子皇子は、父崇峻天皇が蘇我馬子に暗殺されると、従兄弟の聖徳太子の手引きにより宮中を脱した上、丹後の由良から逃亡を図り、山形県鶴岡市（現在の由良）にたどり着いたのだった。
そこで目にしたのは、美しい8人の乙女が神楽を踊っているところでした。
その乙女たちは、蜂子皇子を呼び止めたと言われ、何とか船を寄せ二人の乙女恵姫（えひめ）・美凰（みおう）の手招きに導かれ上陸したという。

その乙女等に聞くところ、東側に聖なる山があることをしった蜂子皇子は、山に向かい深く山奥に入ったが道を失った。その時、三本足のカラスが導き観音像のある聖なる山にたどり着いたのだった。

苦行の末、羽黒大権現の霊験を得たことさらに月山・湯殿山も開き三山の神を祀ったとされている。

崇峻天皇暗殺事件

日本の歴史上、配下により暗殺された天皇は崇峻天皇ただ一人である。
当時は、蘇我馬子の絶大なる権力を持つ朝廷の中、その力で擁立して天皇即位したのが崇峻天皇だった。
崇峻天皇は内心傀儡政権であった実状を思ってか、ある日
「この猪の首のように自分が憎む人物を切ってやりたい」
と発言したのを、聖徳太子はとても危険な発言として口外禁止にしたが、蘇我馬子に漏れてしまったのだ。
それが自分の事だと激怒した蘇我馬子は、部下である東漢直駒に暗殺させたという。

一説に大友氏の血筋である妃、小手子は崇峻天皇が他の妾に気を取られているため、嫉妬から猪の首の事を蘇我馬子に漏らしたと言われている。
蜂子皇子が逃亡を図ったことを知り、小手子も娘の錦手皇女をつれて東北へと逃れ、福島県伊達郡に落ち延び地域の人に養蚕を教えたと伝説がある。

蜂子皇子の血筋を深掘り

蜂子皇子の姿の絵画がある。
その風貌は、まるで人間とも言えない真っ黒な肌に鬼のような目と裂けたような口、でかい鼻といった容貌である。
一説には、民の苦悩を除く霊力があり、その苦悩を多く聞いた末にこのような姿になったと言われている。
興味深い話ではあるが、本当にそうなのか疑問であると共に、現在の日本人とは違う人種であったのではと思わせる何かがある。

母の血筋は大伴氏で、祖先は天孫族のアメノオシヒノミコト。
天皇の護衛をする役割や軍事に関する重役であり、物部氏・蘇我氏と三強豪族だった時代があった。
物部氏は先に蘇我氏に討たれ、崇峻天皇の子が天皇になる際に大伴氏族の子が天皇になれば、蘇我氏の立場も危ういとしたらどうだろうか。

小手子の秘密の漏洩は、本当だったのか。
次に推戴された推古天皇は、蘇我馬子の姪にあたること、聖徳太子の母も蘇我氏出身なのだから、何かしらの陰謀が感じられてしまう。
ちなみに、聖徳太子も絵にあるような日本人顔ではなく堀が深く身長は２ｍを超えていたという説もあり、外国人疑惑が出てくる。とにかく、その頃の大和国は、人種が多数いたのではないだろうか。

何故東北なのか？

筆者最大の疑問は、何故東北に逃れたのかということだ。
東北は古代には蝦夷の国だったことが分かっている。
また他の文献には、日高見の国、古代出雲の国、多数の豪族があった説などさまざまである。
神武天皇に討伐されたナガスネヒコも、ある説では死んでおらず東北の秋田に逃れたという話がある。

日本武尊は関東・東北を攻めその勢力を鎮圧させた。
また、坂上田村麻呂もアテルイとの戦いにてようやく東北の地を日本と併合でき、それまでは蝦夷と呼ばれた人種がいたことになっている。
全く違う種族の人物が、いきなり逃げたからと言って果たして安全なのか、その行った先で対立しないのか。

出羽三山でも中核をなす山である月山の神は、天照大御神の弟月読尊である。
月の神が宿る場として、やはり何かしらの裏事情があったのではないだろうか？
古来、本当の神の国とは実は関東から東北にあったのではないか？

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