青森県八戸市には鮫町という町があります。
太平洋に面した海岸地域で、近くにはウミネコの繁殖地として有名な蕪島神社や海を見渡せる鮫角灯台という観光スポットもあるのが特徴的です。
しかし1番の見どころと言ったら、この町でしか見られない特異な神楽、鮫神楽の墓獅子でしょう。
今回はその神楽についてご紹介させていただきます。
鮫神楽ってなに?
鮫神楽とはざっくり言ってしまうと、山伏神楽こと山伏たちが伝えた神楽を民衆が受け継ぎ、娯楽となっていった神楽です。
例を挙げるなら岩手県の早池峰神楽などでしょう。
岩手県の山伏神楽は多彩で、修験道の呪法を意識した神楽もあれば能や狂言を取り入れた神楽もあります。
鮫神楽もまた山伏神楽に歌舞伎を演目として吸収しており、源平の壇ノ浦錣引き、奥州平泉へと逃げ延びていく義経一行の安宅の関勧進帳、道成寺の鐘巻などが挙げられますね。
逆に伝統的な山伏神楽もあり、そうした神楽は四方堂権現舞や神楽舞と呼ばれています。
つまるところ鮫町の神楽は、伝統的な山伏神楽、歌舞伎の演目を取り込んだ神楽の2種類があるわけです。
演目の数は合計34番あるそうですが、このなかでひときわ特異な舞こそ墓獅子となります。
墓獅子ってなに?
墓獅子は鮫神楽のひとつではあるものの、他の神楽と違い、お披露目される時期は毎年8月14日および15日だけです。
ようはお盆だけで、しかも場所は浮木寺という寺の墓地のみとなります。
つけ加えると雨天であれば中止になるため、見に行こうとしたものの、雨で見れなかったという報告も見受けられました。
雨天中止は分からなくないですが、時期と場所がかなり限定的であるのは気になりますよね。
けれどそれもそのはず、この墓獅子という演目は先祖の霊を供養するための舞なのです。
鮫神楽を守っているのは地元の保護団体「鮫神楽連中」ですが、お墓参りに来た人の希望を聞いたうえで獅子舞をしてくれるんですよね。
その舞は迎え火を焚き、先祖供養の歌に合わせて黒い獅子が墓前に伏してから舞うというシンプルなもの。
一般的な獅子舞の派手派手しさはなく、本当に独特で、哀愁を感じさせる墓獅子は見ている人の心を揺さぶります。
墓獅子には神と仏がいる?神仏習合の舞の意味とは?
「墓獅子は神仏習合がされている芸能」というコメントを見かけたことがありますが、その神仏習合についておさらいをしておきましょう。
神仏習合とは文字通り、神道と仏教が共存を果たした日本独自の宗教体系です。
もともと日本では神道が根付いていましたが、6世紀の飛鳥時代に仏教が伝来してきました。
最初こそは対立したものの、時代が進むにつれて神社の境内に寺が併設されるなど混合化が始まります。
この理由について色々とありますが、自然崇拝な神道と死後の教えを説いた仏教はお互いがお互いの足りないところを補うことで融合が始まったというのが定説ですね。
さて、ここで墓獅子に戻ってみましょう。
墓獅子の由来は山伏神楽、その山伏とは仏教修行者のことです。すなわちその始まりは仏教といっても差支えないでしょう。
なら神はどこにいるのか?
結論から言えば、それは舞に使われる獅子頭が妥当ですね。
なにしろ獅子頭は神楽由来のもので、獅子頭を左右に振るだけで邪気を退ける効果があると神道では伝えられています。
つまるところ墓獅子、ひいては鮫神楽自体が神仏習合をしていたわけでが、けれど私は神とは墓獅子が弔っている故人だとも考えています。
古来日本では太陽と先祖は信仰の対象で、大切なものでした。事実、墓獅子という演目がわざわざ墓地で行われているのも故人を思いやってのことだと思います。
墓獅子
鮫神楽とは青森県八戸市の鮫町という町にしかない神楽で、なかでも墓獅子という演目はお盆の時にしかお披露目されません。
おそらく分類上は伝統的な山伏神楽だと思います。
深掘りすれば神仏習合など歴史を感じさせますが、何よりも故人を供養するために舞う姿とその音色はどこか懐かしく、また優しくもあります。
派手なお祭りもいいですが、こうした供養のための舞も夏ならではの光景でしょう。
※画像はイメージです。


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