昨今、インスタグラムなどで、花をアップする事が流行っているらしい。
炎上する余地をなくすための苦肉の策とも言われるが、花自体、写真にして眺めると複雑怪奇で興味深いものなのは間違いない。
大人が気付いたという事は、もう流行遅れになっているだろうが、まあそれはそれ。
花に付き物なのは、「花言葉」である。
美しい花だと思ってSNSに上げたのに、「偽りの富」とか「苦しんでいるあなたが好き」とか「浮気癖」とか酷い言葉が付いていて、悪意に気付かれてしまった、という事故も起こりえる。
だが、この花言葉「どこの誰とも知れぬ輩が勝手に付けたインチキである」という説もある。
だとするとこの話題、俄然オカルトや都市伝説の方面の話に舵を切る。
花言葉の起源
まず、正確な情報から把握しよう。
花言葉の明確な起源は不明である。
古代ギリシャでもエジプトでも、「花」が神と結び付くなど、象徴的は意味はあったが、それが「花言葉」であったかは定かではない。
明らかな範囲では、1600年代にコンスタンチノープルで使われた「セラム」が起源であるという。
これはアラビア語の「セタム(挨拶)」が元になった言葉である。
花に限らず、万物に関連した詩句があり、これを組み合わせメッセージを伝えるというものだ。
これが1716年にメアリー・ワートリー・モンターギュによってヨーロッパに伝えられたとされる。
1800年代初頭には、フランスの貴族の間で、花を擬人化した詞華集が流行した。
そうやって生まれた言葉を収拾した最初期のものが、シャルロット・ド・ラトゥールの『花言葉』(1819年)である。
ライブ感で増える花言葉
別にこれが聖典という訳ではない。
花言葉は、国や時代に応じてライブ感で作られ、変更もされる。
例えば「青いバラ」の場合、かつては「不可能」といった花言葉が付いていた。
だが、サントリーが「アプローズ」という青バラを作ったお陰で、「夢叶う」「奇跡」という花言葉が追加されている。
また、新たに作出された園芸品種は、種苗会社が売り出しついでに花言葉を公募する事もある。
こちらも例を挙げるなら、2016年に「サカタのタネ」がインパチェンスの改良品種「サンパチェンス」の花言葉を公募し「太陽のように輝く笑顔」が大賞受賞している。
更に雑な例で言えば、小売業者が店頭で適当な花言葉を付ける場合もあるという。
この花言葉図鑑を完璧にしてほしいのじゃ・・・無理
あまりのいい加減さに驚くかも知れないが、世の辞書に掲載されている語句も、結局同じ事である。
言葉は学校の教科書や辞書から生まれるのではない。
やせいの言葉をゲットし、図鑑のように整理したものが辞書だが、次のシリーズでは山ほど未収録言葉が追加されるのだ。
端的に換言するなら、「花言葉は誰かのでまかせ」で結論付けられる。
従って、諸兄がインスタにインスタントにインパチェンス辺りの写真を上げ、「この花の花言葉は、『ブチキレ金剛』なんだよ!」とかメッセージをつけたとして、イイネ加減では定番になる可能性があるという事だ。
こんなものに力がある訳がない。
デタラメである。
そういう思考停止は良くない。
非オカルト的である。
花言葉に力を持たせる方法は、つまり言霊である。
花言葉は言霊と共に
言霊は、声に出す事(言挙げ)によって実際の現象が伴うという考え方で、特に神道で重視される。
日本を「言霊の幸ふ国」と記したのは『万葉集』である。
言霊に力があると考えた場合、多くの人の口の端に上がった「有名な花言葉」は当然結果をもたらす。
だが、どこか遠くの誰かが、別の事の為に言挙げした言霊が、ずっと力を残しているというのは、やり過ぎだ。
言霊は、より具体的に言葉を使った方が、ピンポイントに効くし、発した瞬間が一番強いのが道理だ。
水鉄砲は穴が小さい方が、勢いよく遠くまで飛ぶのだ。
当然、自分が使うために、自分が今言葉にした言霊が最も強い。
従って、花言葉の使い方というのは、花を誰かに贈る時、
「○○という花言葉の意味で、あなたにこの花を贈ります」
とはっきり声に出して伝えれば良い。
はっきり決然と、澱み無く。
言い間違いも許されない。
神道の祝詞も、言い間違いは御法度だ。
どもるのは関係ない、自分の可能な範囲で、動揺せず言い切れば良い。
だが、取り繕うために妙な事を挟んでしまえば、言霊は成り立たず、時に暴発する。
悪い花言葉との付き合い方
この時、その花についている「悪い意味の花言葉」はどうなるのか?
当然「どうにもならない」。
声に出していない言葉に、何の力もない。
もしそんなものに力があるなら、本棚の近くにいるだけで、世界が何度も終わるし、剣豪はどこをどうやったものか盗賊を制圧するし、壁に飢えきった大きなネズミは出続けてしまう。
予防線のつもりで、「この花には××という悪い花言葉もあるんだけど、それは気にしないで欲しくて……」などと言ってしまうと、これはいけない。
複数の花言葉は注文書みたいなもので、声にした部分のオーダーが即座に通ってしまうと思っておけば良い。
オーダーミスしても、料金は発生する。諦めよう。
ひょっとしたら他のメニューと合わせると案外喰えるかも知れないが。
手に入れやすい花に、使いやすい花言葉を、予め作って流布させておくのも、1つの付き合い方かも知れない。
尚、AI作成の花言葉も、既にどこかに現れている可能性があるが、これは色々とお勧めしない。
現在、AI「学習」は無法地帯だ。
あなたが学生時代に送った恥ずかしいラブレターの文面を、「クサスギカズラ」の花言葉の由来としてまことしやかに解説するChatGPTというのは、確率的に十分有意に存在するだろう。
こいつばかりは、存在そのものが許されない「悪い花言葉」だ。
※画像はイメージです。
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