上官の命令は天皇陛下の命令。
大日本帝国の軍隊においてはそう言われた命令は、現代の軍隊ではどうなのでしょうか。
トップダウンのリーダーシップ否定
米海軍原子力潜水艦サンタフェの元艦長は、彼の著書「最強組織の作り方」の中で、命令を下すリーダーシップを否定しています。
彼は委ねるリーダーシップを推奨しており、それは言い換えれば現場への権限移譲です。
戦場での最新情報は前線でこそ得られます。
その情報をリーダーの所に集め、それを基にした命令を再び最前線に戻すには時間がかかります。
最前線ではその間に刻々と状況が変化しています。
軍隊の機動性向上や兵器の進化で、戦場の変化が速くなっている現代戦では、従来型のこの命令方式は使い物にならないというのです。
だから現場に権限を委譲して、早い状況変化に即応できる組織にする必要があるわけです。
彼はサンタフェでこの組織作りを実際に成功させました。
米英の試み
テロ組織に対し、各国の寄せ集めである多国籍軍が対峙した戦後の戦争では、神出鬼没な敵と統制が不完全な多国籍軍が戦場の不確実性を高めました。
この不確実性により、従来型のトップダウン式命令方式では対応し切れなくなりました。
米英軍は不確実性を前提にした命令方式を模索し始めています。
それは具体的な行動命令がなくても、前線の兵士や部隊が適切に行動できる組織です。
その組織で示されるのはまず明確なミッションです。
途中のビジョンや行動の条件なども一緒に下命されますが、ミッションを果たすための具体的な行動は現場に一任されます。
つまり最終目標は一点に明確化されていますが、そこへ至る方法論はある程度の幅を持たせてあり、実戦部隊がその時の情勢によって最適な行動を選べる自由度があるのです。
これにより現場の判断力と即応力を高め、何が起こるか予測しにくい現代の戦場に対応できる組織作りを目指しています。
自衛隊の命令
自衛隊法で定められている自衛隊員の服務に関する規定の第57条に、「上官の命令に服従する義務」があります。
この項目で隊員が命令に忠実に従うことを要求されているのはもちろんですが、一方で命令内容については、適法で実行可能なものでなければならず、それが明白かつ重大な違法である場合は当該命令は無効である、と明記されています。
防衛大学校でも「命令と服従」に関する授業があり、そこで実際に「明確な合法性がない命令には服従してはならない」と教えられたと、海自の元自衛官が語っています。
命令のイメージ
命令とは絶対的なもので、命令された者の拒否権は皆無だと、今でも一般には理解されています。
「上官の命令は天皇陛下の命令」として命令に盲従を強いたことが、色々な意味で日本を悲惨な戦争に導いた一因だったのかもしれません。
あらゆるモノが時代と共に変化して行きます。
絶対的なはずの「命令」にも変化が求められています。
参照:指示しないマネジメント 働き方改革ラボ/海軍におけるマネジメント 紺野真理/なぜ軍隊なのに、命令なしで勝てるのか 東洋経済
※画像はイメージです。
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