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アメリカの大いなる勘違い ~硫黄島の星条旗~

有名な硫黄島の星条旗の写真は、その真実が大きく歪められていました。

目次

最初の星条旗

数人の米兵たちが協力し合って、今まさに星条旗を掲げたポールを立てようとしている写真。
それは、日米の太平洋戦史上最大の激戦だった、硫黄島攻略戦のシンボルとして、米国ばかりか世界中で有名な摺鉢山の星条旗の写真です。
しかしこの写真は実は摺鉢山に揚がった最初の星条旗ではありませんでした。

上陸作戦が始まって5日目の朝、島南部の摺鉢山攻略は最終段階で、頂上部へ偵察部隊が派遣されました。
未だ日本軍の抵抗は散発的に続いていましたが、偵察隊はなんとか登頂に成功し、持参した星条旗を掲揚しました。
彼らはその時、島を囲んだ無数の艦船が鳴らす汽笛や、山の斜面から麓や海岸線に散らばっている兵士たちが挙げる歓声を耳にし、打ち振られるたくさんのヘルメットを目にしました。
そして掲揚された星条旗とそれを取り囲む海兵隊員たちの写真が、海兵隊員のカメラマンによって撮られました。

この写真は、米国史上の記念の一つと言ってもよい価値あるものでした。
太平洋戦争は日本軍の真珠湾攻撃から始まりました。
日本側の手続き上のミスから、米国にとっては騙し討ちとなったこの攻撃に激怒した米国民は、「リメンバー・パールハーバー」のスローガンの下に厳しい対日戦争を戦ってきました。
そしてこの日、正真正銘の日本国土の一部を占領し、それは真珠湾攻撃で米国国土を犯した日本に対する報復の成功に他なりませんでした。
しかしこの時の星条旗は、有名なあの星条旗とは別物だったのです。

2枚目の星条旗

摺鉢山山頂に最初の星条旗が立った後、現地司令部ではその国旗をもっと大きなものに交換することが指示されていました。
その理由は、この重要な星条旗を所望した、作戦に帯同していた海軍長官の目を欺いて、大隊の所有にするためだったと謂います。
(一説には、最初の旗が小さ過ぎるので、遠目によく見えるようにということに過ぎなかった)。

2枚目の国旗は連絡用電話線を引くために登頂する小隊に託されました。
この小隊にはAP通信社のカメラマンが同道していました。
頂上で最初の星条旗が降ろされ、交換された第二の星条旗をくくり付けたポールが立てられる様子を、彼は写真に収めました。
海兵隊員と通信社カメラマンは事務的に淡々とこの仕事を行いました。

持参した国旗は彼らにとっては最初の星条旗の代替品に過ぎず、最初の星条旗のような特別な意味を持つものではありませんでした。
ところがこの写真が後にピューリツァ賞にも選ばれて、世界的に有名な写真になってしまいます。

米本国の大いなる勘違い

最初の写真と第2の写真は軍と通信社それぞれのルートで、別々に本国に送られました。
本国に先着して新聞に大々的に掲載されたのは第2の写真でした。
「やっとパールハーバーのお返しができた」という沸騰するような驚喜をもって、この写真は米国民に迎えられました。

写真はまた芸術的に優れたものでした。
風にはためく星条旗とポールを立てようとしている海兵隊員たちの姿が、完璧な構図を構成していました。
躍動感溢れる画面からは、それまでの苦しい戦いを共に戦い抜いてきた人々の連帯感と、その結果としての勝利の栄冠と喜びが全て表現され尽くされていました。
そして歴史的瞬間を凝縮したこの写真はピューリッツァ賞を受賞し、世界に喧伝されました。

一方で硫黄島で戦った兵士たちは一躍ヒーローとなりました。
折しも戦費調達に腐心していた国が、この写真を戦費用国債のキャンペーンに利用すべく、急遽、第2の星条旗を掲揚した兵士を帰国させようとしました。

しかしこの指示を受けた現場部隊では、前線での混乱も加わって最初の星条旗との混同が起こりました。
結果、実際に帰国してキャンペーンに参加した海兵隊員が、第2の星条旗に映っていた兵士ではなかったいう疑惑が現在に至るまで続いています。

星条旗の真実

キャンペーン中のインタビューではある帰国兵士は、
「私はヒーローではありません。」
「ヒーローは硫黄島で共に戦った戦友たちであり、戦死した兵士たちです。」
と必ず答えています。
彼は後に疑問視された一人で、帰国後に硫黄島の事は家族にも全く話さなかったそうです。
一個人では抗いようのない全米を覆う巨大な流れの中で、真実を話せなかったことが生涯彼を苦しめ続けたのかも知れません。

歴史大好きじいさんです。
誰でもが知っている歴史の出来事の中には、真実でないものもあります。

参照
硫黄島の星条旗 ジェイムズ・ブラッドリー 著
硫黄島に掲げられた星条旗 ピュリツァー受賞撮影秘話 
日経ナショジオスペシャル ビル・ニューコット 文

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