死ぬ直前の人間は、恐怖や痛みを和らげるため、脳内物質を大量放出するという。
これによって痛みに対する感覚は鈍磨する一方、脳は加速状態になる。
事故の瞬間はゆっくりに感じるとか、集中したバッターにはボールが止まって見える等がそれである。
これが、飛び降り自殺の場合は恐ろしい経過を辿るという。
クロックアップした脳に落下は永遠に感じられ、無限の恐怖にさらされるのだ。
実際にそんな事が起きているのだろうか?
脳は緊張でクロックアップするか
重力加速度というのは馬鹿にならず、地上に到達するまでの時間はかなり短い。
ビルの5階でも2秒かからない。東京タワーの333mでも8.2秒だ。
緊張状態の時、人間の脳は活性化する。
千葉大学が行った「短時間で映像認識出来るか」という実験で、「緊張感」を伴う映像の方が認識されやすいという結果も出ている。
この緊張が極限まで高まった時、指数対数的に認識力が跳ね上がる可能性はある。
死の直前は永遠に長く続くのだろうか?
結論からいうと、そうだとしても、恐れる必要はない。
落下シミュレート 空中
事故にせよ自裁にせよ、あなたが高所から落下した事を想定しよう。
死を確信した脳は緊張状態に入り、脳内物質を急激に分泌する。
そして時間は極端にゆっくり流れ出す。
あなたはゆっくり迫ってくる地面を見ながら、怖い事が起きると考える。
ここまでは間違いない。
だが、脳内物質が、苦痛を和らげる事も忘れてはならない。
落下の恐怖は、脳内物質で忘れられるようなものではない?
そんなことは無い。
ドラッグから何故人が抜け出せないか。
人間の快感は、脳内物質の作用だ。
人間は成功したから嬉しいのではなく、成功によって出た脳内物質が気持ちよいから嬉しいのだ。
だからこそ、古典的な大鬱病の人間はどんな事も楽しめない。
そしてドラッグは、脳内物質のパロディだ。
ドラッグによる二次創作ではなく、公式の脳が最高のコンテンツを作のだ。
最高にハイな状態が訪れる。
だが、地面はまだ近付いてこない。
当然だ。脳内物質の効果は短時間といっても、実際の時間はほぼ経っていないのだ。
ごくゆっくり動く世界の中で、あなたはハイな頭になっていき、そして、落下し続ける。
あなたはぼちぼち退屈になるだろうが、それが嫌になるのは脳内物質次第だ。
あなたは、ふと、この素晴らしい気分があるなら、もっと生きていれば良いのでは、と考え始める。
隙あらば生きようとするのが脳だ。
脳内物質は正に、生きる方向にぶら下げ人を操るニンジンだ。
猛烈な後悔が押し寄せる。
ああ、死ぬんじゃなかった。
だが、脳内物質はギンギンだ。
気分は絶対的に落ち込まない。
それが笑えてくるレベルだ。
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落下シミュレート 接触
この永遠に近い時間の末、ようやく地面に接触する。
当然、肉体はゆっくりすりつぶされるように破壊されていく。
だが、緊張状態でハイになった脳は、痛みを伝えない。
限りなくゼロに近い時間の中の事だ。本当に痛覚信号自体が辿り着いていない場合もあり得る。
感情は動かない。脳内物質が移動する時間が足りない。
感情はこの上ない多幸感に浸っているだけだ。
過去の辛い記憶が思い返されても、感情は幸せだ。
そして、唐突に幕が下ろされる。
これが、死の直前が極限に引き延ばされた世界だ。
徒に恐怖する必要はないが、後悔は絶対するというのが結論だ。
補足 自殺者ループ説について
自殺した場合、生まれ変わっても自殺し続ける
という説があるようだ。
「なんだろう、うそ言わ(略)」
「心のひろゆき」が出そうな、雑な説である。
それは一体、それ何教の発想だろうか。
独自宗教だとしても、「生まれ変わり制度」がある宗教観で、「同じものを繰り返す」系の死後は噛み合わない。
理由は簡単で、魂がホールドされてしまうと、一定割合で減り続け、最後には生まれる魂がゼロになってしまう。
この点、大手宗教はきちんと回避している。
- 仏教
仏になって輪廻から抜け出るごく僅かな魂以外、懲役などを経て再び現世に戻ってしまう。 - ヒンドゥー教
閻魔大王がいるので、仏教と近い展開 - ユダヤ教
基本的には言及せず、「なんじ塵なれば塵に還るべし」 - キリスト教
最後の審判までは墓地で待機 - イスラム教
待機型 - 神道
死んだらゲームセット、黄泉国から出られない。魂はスナック感覚で人間の工作物にも発生する
ちなみに仏教の場合、自殺に対する扱いは、重いが絶対悪ではない。
仏教の戒律解説書とも言うべき『五分律』では、「殺生戒」を犯したのと同質とされている。
だとすると、等割地獄で1兆6653億1250万年ばかり処刑され続ける事になる。
処刑内容は、ウルヴァリンのアレみたいなので互いに殺し合ったり、鬼が身体を切り刻んだりされ、一定タイミングで涼風が吹いて、ウルヴァリンのアレみたいな感じでHPが全快になるので、また頑張りましょう、となる。
・・・ウルヴァリンって、ひょっとして地獄の最中?
まとめ
落下して人が死ぬ時、人が無限の恐怖にさらされる可能性は薄い。むしろ心地よいが圧倒的後悔はある。
自殺を肯定するものではない。
生存第一主義の脳がそう結論する事自体、生理的におかしくなっている証拠だ。
医療に相談すべきで、努力や愛情でどうなる話でもない。
人間の頭は思っている以上にメカニカルな物理的存在なのだ。
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