小学生の頃の夏休み、母の実家に泊まりに行った時におじいちゃんから聞いたお腹の傷痕と戦争のお話。
おじいちゃんのお腹には、何かで削り取られたような傷痕がありました。正確に言うと左の脇腹でしょうか。
「その傷、なあに?」と尋ねた小学生の私に、おじいちゃんは当時を懐かしむように教えてくれました。
おじいちゃんは昔、戦争に行ったんだよ。
アメリカの人と鉄砲を撃ち合ったんだ。
それはもう怖かったけれど、後ろを向いたら仲間から裏切り者扱いをされてしまうから、怖くても前を向いて戦っていたんだ。
死にたくなかったから、それはもう必死だったよ。
遠くからパンッ!って鉄砲を撃つ音が聞こえたと思ったら、左のお腹が痛くなったんだ。
すると今度は、後ろからドサッ!って音がしたんだ。おじいちゃんの後ろで体を低くしていた兵隊さんが倒れた音だったんだよ。
おじいちゃんは運よく鉄砲の玉がかすっただけで済んだんだけど、その鉄砲の玉は後ろにいた仲間の兵隊さんの頭に当たってしまったんだ。
さっきまで右だ!左だ!正面だ!なんて敵の位置を教えてくれていたのに、振り返ったら死んじゃっていたんだよ。
結局、その後アメリカの人に捕まってしまったんだ。10人くらいの仲間と一緒にね。
アメリカの人は話に聞いていたのと全然違って、とても優しくしてくれたんだ。
何が食べたい?なんて聞かれたから皆は「肉!」とか言ったりしてね。おじいちゃんはこれからどうなるのか心配で食べられなくて、お湯を飲んだりお粥をもらったりしてた。
それまであまり良いものを食べてなかったから、脂っこい肉を食べた仲間はお腹を壊して死んじゃう人もいて、お腹に優しいものを食べてたおじいちゃんは生きて日本に帰って来られたんだ。
この傷痕を見るたびに、後ろにいた仲間の兵隊さんを思い出すよ。
※写真はイメージです。
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