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クリス・ヴェクター(KRISS VECTOR)とは

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21世紀を迎え20年以上が経過した昨今、第一次世界大戦の塹壕戦における浸透戦術用の銃器として登場したサブマシンガンだが、世界各国の軍隊での使用も廃れ、第一線の兵器からは外されている感が強い。
これは従来のサブマシンガンが軍隊で必要とされた主たる理由、フルオート射撃が可能で、当時の主力小銃などより小型・軽量で取り回しに優れるといった用途が、M4カービンに代表されるアサルトライフルで代替された事が大きい。

第一次世界大戦までの流れを汲み、第二次世界大戦時にはまだボルトアクション式の小銃が各国の主力だった為、兵士個人が携行、貴重なフルオート射撃も可能だったサブマシンガンには一定の有用性があった。
しかし軍用としては拳銃弾を使用するサブマシンガンは低威力故に不向きとなり、1960年台に登場したH&K社のMP5が命中精度の高さから特殊部隊の必須装備となったものの、軍隊での使用は下火になって久しい。

だがそうした世の流れ・傾向に逆行するかのように、アメリカ軍と現在のクリスUSA社が共同開発を行ったサブマシンガンが存在し、それこそが45ACP弾を使用するクリス・ヴェクターである。

目次

遅れて来たサブマシンガン「クリス・ベクター」

今でこそアメリカ軍は1985年にM9としてイタリアはベレッタ社の拳銃を正式採用して以後、最新のSIG社のP320に至るまで9mm×19パラベラム弾を使用しているが、1911年から70年以上に渡り45ACP弾を使用するM1911A1を用いていた。
現在でも45ACP弾の強力なストッピング・パワーを活かし、特殊な部隊でこれを用いる拳銃等の使用が継続されているが、そこからも窺えるようにこの弾薬の有用性を信奉する声も一部には根強い。

そうしたアメリカ陸軍の思惑もあって、その傘下にあるピカティニー・アーセナル(造兵廠)と旧TDI社(現・クリスUSA社)が開発に取り組んだ結果、2006年に生み出されたのが45ACP弾仕様のクリス・ヴェクターである。
クリス・ヴェクターは一般的に9mm×19パラベラム弾よりも発砲時の反動が強くなりがちな45ACP弾を使用する為、独自の「クリス・スーパー・V」と呼ばれる機構を採用、これが銃そのものの名称にもなった。

クリス・ベクターの名称の元となった「クリス・スーパー・V」とは

「クリス・スーパー・V」とはクリス・ベクターの名称の元ともなった独自の機構であり、9mm×19パラベラム弾よりも発砲時の反動が強くなりがちな45ACP弾のフルオート射撃を容易にするために開発された仕組みである。
セミオートやフルオート・バースト等での射撃を行う銃器は、一般的に機関部内の薬室に使用する弾薬を送り込んで発砲し、その射撃時の火薬の圧力で遊底を後方に押し下げて排莢、それが再び前進する事で次弾を装填する。

ここで後退する遊底部分はその衝撃に耐えうる強度が必要な事から、機関部の中でも重量のある部品であり、これが前後に動作する事で銃全体にブレを生じさせ、これが所謂発射時の反動を発生させる元となる。
更に通常多い銃器の構造は薬室と銃身よりも、引き金を引く指とグリップがそれらよりも低い場所に位置している事から、後退する遊底の動きに対して前方の銃口は上に、ストックなど後方は下に下がる力が働く。
この力を軽減させて発射時の反動を抑えようと言う仕組みが「クリス・スーパー・V」であり、遊底を後方に下げるのではなく、斜め後方に沈み込むように動作させる事で物理的にこれを低減する事で反動の吸収を企図している。

これは遊底を斜め後ろに沈ませる事で反動を軽減させると同時に、通常であれば遊底が下がるために確保して置かなくてはならないスペースを切り詰め、その分引き金の位置を薬室と銃身との平行に近い位置への配置を可能とした。
理論上はこの「クリス・スーパー・V」という反動吸収用の機構のおかげで射撃時の制御が容易になったと喧伝されているが、あくまでもこれは机上論であり、その有用性を疑問視する声も多々見受けられる。
但し昨今はYouTube上でもクリス・ベクターの射撃時の様子を確認出来る動画が数多くあり、それらを見る限り確かに反動はそこまで強くはなさそうではあるが、射手の技量にも左右される部分だけに定かではない。

クリス・ベクターのバリエーション

Wikipedia等によればクリス・ベクターのベース・モデルであるSMGは、全長が406mm(ストック伸張時は617mm)、銃身長140mm、重量が2.5kg、発射速度が毎分1,200発とサブマシンガンとしてはかなりのハイレートを誇る。
これはセミオート・フルオートの射撃切り替えが可能で、発火方式はクローズド・ボルト・ファイアリング方式であり、基本の45ACP弾は13発・17発・30発のボックス・マガジンが使用可能で同口径の拳銃・グロック21のマガジンとの互換性も備えている。

この基本モデル以外にも、折り畳みストックを省略したSDPや、民間用にセミオートのみに変更されたSBR/SO、同様に民間向けだが銃身長を2インチ延長したカービン・タイプのCRB/SOなどが存在している。
使用弾薬も45ACP弾、9mm×19パラベラム弾、10x25mmAUTO弾、40S&W弾、357SIG弾、9x21mm弾、22LR弾など複数の仕様が登場しており、これは本来の45ACP弾の使用時に反動を抑えると言うコンセプトからは逸脱した感も否めない。

因みにクリス・ベクターそのものの設計はアメリカの銃器パーツ製造企業として著名なマグプル社が手掛けたものであり、同社の関連パーツもある他、ストックは専用のアダプタを介せばAR-15のものも取り付け可能である。

Tac6 Media, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

クリス・ベクターの知名度を高めたと思しき作品

クリス・ベクターはそこまで銃器に興味はないと言う方でも、少なくとも一度は目にしたのではないかと思える理由として、アクション映画・バイオ・ハザードVで主演のミラ・ジョヴォヴィッチが使用していた事が挙げられる。
バイオ・ハザードVでは折り畳みストックを省略したSDPを拳銃のように片手で使用するアクションが印象的だったが、まるでモーゼルC96の現代版かのようで特異なクリス・ベクターの形状が際立っていた。

又かつてはガスブローバック形式のトイガンとして、日本ではKSC社が本家のクリスUSA社から許諾されたオフィシャルなものとして販売されており、こちらで初めてクリス・ベクターの存在を認識したと言う方も多いだろう。

個人的に思うクリス・ベクターの評価

クリス・ベクターを取り巻くイメージには、アメリカ陸軍が45ACP弾仕様の新型サブマシンガンを指向し、「クリス・スーパー・V」という反動吸収機構を搭載した等の刺激的な文言がどうしても頭をよぎってしまう。
しかし2006年の開発以後、実に16年もの歳月が経過しているが当のアメリカ軍が採用した実績は無く、そもそもH&社のPDWであるMP-7等の新ジャンルのもっとコンパクトな銃器が生み出されている以上今後も期待は出来ないだろう。

そう考えれば個人的にはクリス・ベクターの存在はつまるところその開発経緯にしか注目すべき点はなく、悲しいかな実用性と言う部分でも既出のサブマシンガンに勝る点があるとは残念ながら思えない。

※アイキャッチはイメージです。

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