第二次世界大戦においてアメリカの爆撃機B-17やB-29が有名ですが、ドイツとの戦いで長く爆撃を続けたのはイギリスのランカスター重爆撃機でした。
イギリス空軍のドイツ爆撃
第二次世界大戦の前にイギリス空軍が保有していた爆撃機はブレニム軽爆撃機やウェリントン重爆撃機などを保有していました。
これらの爆撃機を使い、イギリス軍はドイツ本国への爆撃作戦を開戦直後から開始
しかし、昼間の爆撃はドイツ軍の戦闘機をはじめ迎撃に遭って損害は大きいものでした。
それでもドイツへ直に反撃できる手段としての爆撃は続きます。
ランカスター登場
1941年にイギリス軍に新たな爆撃機が登場します。
それがスターリング爆撃機です。
4発のエンジンを備えた大型爆撃機でしたが、上昇限度が5180メートルと低いのが難点でした。
翌年の1942年からもイギリス空軍は新型爆撃機を実戦投入します。
それがアブロ社が開発したランカスター爆撃機です。
全長21.18m
全幅31.9m
最高速度462km(MkⅢ)
航続距離2784km(爆弾5433kg搭載時)
実用上昇限度6500m
4発エンジンのこの爆撃機はアメリカのB-17に並ぶ機体です。
爆弾搭載量とエンジン
このランカスターはB-17を上回る性能があります。
それが爆弾搭載量です。
B-17は5800kgに対して、ランカスターは9979kgです。
ランカスターの前に登場したスターリングで6300kgで、同時期に開発されたハリファックスで5900kgと見比べるとイギリス空軍の中でも飛び抜けて爆弾が搭載できる爆撃機だと分かります。
アメリカの爆撃機ではB-29の最大搭載量に匹敵します。
この多くの爆弾を搭載する事が可能になったのは、全長10mも大きく作られた爆弾倉があったからです。
この爆弾倉がある事で、ドイツ戦艦「ティルピッツ」に止めを刺した全長6mの大型爆弾トールボーイを搭載でき、ドイツのダムを破壊する「チャスタイズ作戦」においては、反跳爆弾を搭載する改造が可能でした。
これら大量・多種の爆弾を運べる爆撃機になれたのはロールス・ロイス社のマリーンエンジンがあったからです。
1280馬力から1390馬力ものエンジンを4基装備したランカスターはドイツを追い込む爆撃機となったのです。
進歩するイギリス空軍の爆撃
ランカスターの登場と共にイギリス空軍のドイツ爆撃作戦は変化を見せます。
地上からの複数の電波によって位置が分かる無線航法支援装置「GEE」の実用化、大量のアルミ箔を散布してドイツ軍のレーダーを攪乱する「ウィンドウ」の投入開始、爆撃機の編隊より先に行き、爆撃の位置を示すパスファインダーの導入
これら爆撃作戦を支える技術と手段は大量の爆弾を搭載するランカスターによる爆撃をより効果的にさせました。
ランカスターの登場はイギリス空軍が攻めに出る時期の象徴でもありました。
featured image:Bzuk, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由
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