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何故、彼はラストサムライとなったのか?

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トム・クルーズ出演の”The Last Samurai”(邦題「ラストサムライ」)は、幕末に実在したフランス軍人がモデルだったと謂われています。

目次

映画ラストサムライ

時代は幕末の日本。
日本の新政府軍を近代化するための外国教導団の一員として、来日した米国南北戦争の元北軍将校の物語です。
サムライの時代が終焉を迎えて欧米の文物が流入し、サムライが古いものとして忌避されていく新生日本の中で、古来からのサムライ精神を頑なに守り続け、新政府に未だ従わない最後のサムライ集団がありました。

この集団との戦いで負傷し囚われたこの米国人は、彼らと暮らすうちにその精神に感化されていきます。
古来から連綿と受け継がれてきた、穏やかで心豊かな生活がその村にはありました。
そしてその掛け替えのない生活を守るために、伝統の武技と精神が受け継がれてもいました。

それは優しい抱擁感と厳しい緊張感が見事に調和した、人としてあるべき純粋な姿でした。
母国の南北戦争で心に傷を負っていた男は、サムライの無垢な精神に癒されたのです。
やがて彼は青い目のラストサムライとなって、新政府軍との最後の戦いに身を投じていきます。

フランス軍事顧問団

映画にはモデルとなった人物が実在したと謂われています。それは仏国陸軍近衛砲兵連隊 ジュール・ブリュネ中尉。
日本の幕末期に幕府に招聘された、軍事顧問団の副団長として彼は来日しました。

この顧問団の使命は幕府軍の近代化でした。ブリュネたちは約1年間の厳しい教練により、日本人約3千名のフランス式近代軍団を育成し、幕軍最強軍団・伝習隊を創り上げました。
しかし大政奉還、鳥羽伏見の役敗北、江戸城無血開城と世情は急展開し、徳川幕府は政権を降板してしまいます。
旧幕府との契約により派遣されていたブリュネたち軍事顧問団は、その任務を解除され本国より帰国が発令されました。

しかしブリュネはその命令に反して部下の下士官4人と共に軍を脱走し、東北地方の反政府諸藩で結成された、奥羽越列藩同盟の招聘に応じました。しかしここでも旧幕軍は破れ、ブリュネたちは江本武揚らを中心とする旧幕勢力と共に蝦夷函館に後退し、その中にはブリュネたちが育てた伝習隊隊員が多く含まれてました。
ブリュネは江本軍の主任参謀として、また4人のフランス人下士官は4旅団の各司令官として、日本人と共に函館戦争を最後まで戦い抜きました。

仏国軍から離脱してまで彼らが旧幕軍と共闘したのは、数多くの武士たちを教練する中で日本のサムライ精神に感応し、義を持ってかつての教え子を助太刀しためだったと、今日一般に多く理解されています。
それをデフォルメして制作されたのが、映画「ラストサムライ」といいうわけです。

青い目のサムライではなかったブリュネ

しかし実際のブリュネは実は最後の最後まで生粋の仏軍軍人でした。

戊辰戦争は新政府対旧幕府の戦いであると共に、薩長と幕府をそれぞれ支援してきた英仏の勢力争いでもありました。
薩長を中心とした新政府が樹立されると、その背後にいる英国の対日影響力が増大し、ブリュネはそれを非常に懸念していました。
彼は手紙に、幕府から新政府への政権移行後、仏国軍事顧問団が新政府に継承されなかったのは、英国の仏国排除活動の結果だと記しています。そしてこの仏国の外交的失敗の回復は可能であるという信念から、彼は本国命令に逆らい軍籍を離脱しまで旧幕軍に合流したのです。その信念の根拠はフランス軍人としてのフランス的思考にありました。

フランス的思考は世界一流であり、この思考を基にしたフランス式軍隊こそが最強であるとブリュネは考えていました。
即ちこの優秀なフランス式思考によって組織され、指揮された最強軍隊が劣勢を逆転し、結果フランス外交の後退は挽回できると信じていたのです。

そこに日本のサムライ精神に感応同化した形跡は皆無です。
個人的に人間としての絆が存在したであろう事は否定できませんが、彼は徹頭徹尾仏国軍人であり、この軍人精神を日本人に植え付ける事に邁進しました。
ジュール・ブリュネは最後まで青い目の仏国軍人であり、決して「青い目のラストサムライ」ではなかったのです。

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歴史大好きじいさんです。
巷に喧伝されている事柄と事実は、違うことがしばしばあります。

出典
仏蘭西学研究 フランス人士官ジュール・ブリュネが見た戊辰戦争 中津匡哉

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