現在の広島県三次市を舞台にした、稲生物怪録(いのうもののけろく)という物語があります。
稲生物怪録は、実在した江戸時代の三次藩の藩士である稲生武太夫の不思議な体験が元となった妖怪物語です。
物語の中で稲生武太夫は怪異と戦い、最後に妖怪の大親分から木槌を受け取りますが、その木槌が実在しているといいます。
稲生武太夫の妖怪の物語~稲生物怪録~
江戸時代の三次藩士である稲生武太夫が、平太郎と名乗っていた頃の話です。
剣の腕が立ち、たいへん勇敢で評判だった武太夫は、隣に住む相撲とりと、勇敢さを競うために百物語を行いました。
百話を話し終えると、本物の妖怪が出るといわれているのが百物語です。
百物語終了後、くじを引き、当たった方が山に一人で入ることになり、くじに当たったため武太夫は一人で真夜中の山道を歩きますが、山の中で怪異のようなものは何も起こらず、武太夫は無事に戻ってきました。
それからしばらくしたある夜から、急に異変が起こり始めます。
武太夫は、30日間にわたって自宅でさまざまな怪異に遭遇するようになったのです。しかし武太夫はひとつも怖がることなく、ありとあらゆる妖怪に勇敢に立ち向かっていきました。
大男や生首、老婆や虚無僧の妖怪、火や水、石、紙等、さまざまなものが怪異を起こして武太夫に襲い掛かりましたが、武太夫は常に冷静でまったく動じません。
怪異が現れてから30日目に、山本五郎左衛門と名乗る武士が武太夫の前に現れました。
山本五郎左衛門は、自身を妖怪の大親分であるといい、30日間怪異に耐え続けた武太夫の勇敢さを大いに称え、武太夫は妖怪退治に役立つという木槌を山本五郎左衛門から受け取ります。
山本五郎左衛門は武太夫に、もしも神野悪五郎が現れたら木槌を使って私を呼ぶようにと伝え、敵対視する神野悪五郎を倒すために、武太夫の力になる約束をしたのです。
その後、山本五郎左衛門は手下の妖怪達が担ぐ籠に乗って去って行きました。
國前寺に奉納された「ばけもの木槌」
三次藩は廃藩になり、その後武太夫は、現在の広島県広島市にある國前寺を菩提寺とする浅野家に仕えるようになります。武太夫は、山本五郎左衛門から受け取った木槌をその國前寺に奉納し、現在でもこの木槌は、広島県広島市にある國前寺に大切に保管されています。
國前寺で毎年1月に行われる稲生祭において、「ばけもの木槌」として公開されています。
本物のばけもの木槌を実際に見てみるのもよいですね。ちなみに撮影は禁止のようです。
※画像はイメージです。
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