海洋国家日本の特異な軍備は何故?
大陸国家と海洋国家
世界中の国は地政学的に大陸国家と海洋国家に大まかに分けることができる。大陸国家とは隣国との国境が陸上にある比率が高く、陸上交通が主となる。ドイツ、ロシア、中国などがこれに当たる。
そして国土の多くが海に囲まれているアメリカ合衆国、英国などが海洋国家に分類され、日本はその典型である。
この地政学上の特徴はその国の軍備に大きく影響する。航空機やミサイルなど航空戦力が無いか微力だった時代にはそれが顕著だった。防衛上、周囲の海が有利に働く海洋国家は攻撃側より少ない陸上戦力で防衛が可能であり、海という障壁がない大陸国家では防御用陣地を含め強大な陸軍が必要となる。
また対外的に勢力を膨張させるためには大陸国家は陸軍戦力をさら増強せねばならず、一方、海洋国家では制海権確保のために大きな海軍力が不可欠となる。その結果、大陸国家の戦備は陸軍が主となり、海洋国家では海軍が重要視される傾向がある。第二次大戦開戦直前の米英独ソ各国の戦力を見るとこの傾向は次の様に明らかである。
陸軍(師団) | 海軍(戦艦・巡洋艦) | |
ソ連 | 208個 / 450万人 | 沿岸防衛程度 |
ドイツ | 120個 / 250万人 | 5隻 |
英国 | 17個 | 39隻 |
米国 | 24個 / 50万人 | 30隻 |
日本 | 32個 / 60万人 | 26隻 |
これらの数字は非常に大雑把ながら陸海軍の戦力傾向を推測するには十分である。
即ち大陸国家・独ソは圧倒的な陸軍大国であり、一方、海洋国家・英米が強大な海軍力を保持している。
翻って日本の戦力をみると、国土の大きさと周囲全てが海洋である点で、地政学的には英国同様の海洋国家であるはずの日本は陸軍戦力の比率がかなり高くなっており、国土と国力が巨大な米国と比べても遜色ないほどの陸軍力を保持していた点が特異である。
陸主海従の日本軍戦力
明治維新は黒船の来訪(来襲?)から始まっており、明治新政府が海軍力の重要性を認識していないわけではなかった。
しかし戊辰戦争から西南戦争に至る、数多くの内戦に対処するため、明治政府は陸軍戦力の増強を優先せざるを得なかった。
その影響により陸主海従の軍制が先ず定着したのである。
海洋国である日本としては不都合なこの偏りを是正するべく海軍の強い働きかけにより、一旦は陸主海従は是正された。
結果、海軍戦力は整備増強され、日清日露戦役での海戦で日本は勝利を得た。
これにより日本海の制海権を獲得した日本が、世界の大洋に比べればはるかに狭い日本海を渡洋することは困難ではなくなり、ロシア・中国に対する防衛上の必要性から朝鮮半島に勢力を浸透させることに成功する。
このことは日本軍が陸上の境界線を挟んでロシアや中国の軍隊と直接対峙することを意味する。
つまりこの時点で日本は大陸国家に変貌したのだ。
さらに膨張政策をとる日本は中国大陸での勢力拡張を計った。
満州国の設立を画策して中国東北部を勢力下に置くと、西へ南へと進攻して日中戦争が勃発した。
大陸でのこの戦争継続のために、日本は大陸国家型の強大な陸軍力を持つに至ったのである。
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