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帝国海軍が海上通商航路護衛を疎かにした理由

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戦争に勝つ事は、国を守るという目的のための手段です。
しかし太平洋戦争当時の帝国海軍は、勝つ事自体が目的になっていました。

目次

太平洋戦争は国家存立の為の戦争

ABCD包囲網により石油など資源の輸入が困難になった日本は、対英米戦争を決断しました。
それら資源は国の経済活動の必需品で、その欠乏は国家の経済的滅亡に直結します。
これを回避するために、資源産出地域である東南アジアの確保を大日本帝国の指導者たちは考えました。
それは即ち、その地域の宗主国である英米との戦争を意味しました。

つまり当時の日本の指導部にとっては、太平洋戦争は国家存立の為の戦争でした。
その観点から戦争遂行の手順を考えた場合には、以下の論法に依らねばなりません。

  1. 資源は日本国内で使う為に当然日本まで運ばねばならず、その運搬手段である海上航路は、戦時下においては敵からの保護が最重要。
  2. そのために制海権確保が必要であるから、敵の海軍戦力をその海域から撃退しなければならない。
  3. 当時の軍事的常識では、海上戦の勝敗は艦隊決戦によるとされていたので、水上戦力の整備拡充が必須。

つまり国家存立を考えた時の第一義的な海軍の責任は、海上航路安全確保の為の護衛活動であり、戦力拡充はそのための手段である事を、帝国海軍はしっかりと認識すべきでした。

帝国海軍思考の実際

大日本帝国海軍は仮想敵国を米国として、強大な米艦隊に対抗し得る戦力を整備する事に奔走していました。
勿論その目的は艦隊決戦による米艦隊撃滅でした。

海軍は軍備増強の為に莫大な予算を政府に求めます。
しかし巨大な米艦隊と互角の戦力を持つことは所詮不可能です。
そんな状況では、海軍首脳部の思考は決戦の為の艦隊戦力拡充一色にならざるを得ず、もう一つの重要責務である海上航路護衛任務に対して、思考も予算も向ける余裕はありませんでした。

政府は本来、国家全体の経営という観点から種々の政策を決定し、それに基づいて各方面に対する予算配分を行わなければなりません。国の経済的経営に必要な民政用資源運搬の、海上航路保全のため十分な海軍戦力を、政府は海軍に要請しなければなりません。

統帥権の壁

しかしここに統帥権の壁が立ちはだかります。
統帥権は天皇の大権であり、政府の干渉は認められません。
この統帥権の行使を補佐するのは参謀総長(陸軍)と軍令部総長(海軍)なので、実質的には軍部の政策に政府が異を唱える事ができない仕組みになっていました。

そんな国家体制の中で、米海軍との艦隊決戦が第一目的となってしまっている海軍指導部の、海上航路護衛を軽視した決戦用軍備偏重の戦争政策を止める事は不可能だったのです。

歴史大好きじいさんです。
軍部の視野は狭くなりがちです。

参照:海上護衛戦 大井篤 著
※画像はイメージです。

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