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人魚の肉は、どれだけ食べれば良いのか

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海は身近な未踏の地であり、様々な伝承に人魚や、人魚にカテゴライズされるものが出て来る。
人魚というと、アンデルセンの『人魚姫』がよく知られる。
『リトル・マーメイド』『マーメイドメロディーぴちぴちピッチ』『トロピカル~ジュ!プリキュア』『インスマウスの影』などでイメージ固定されてしまった、ざんねんな人もいるかも知れない。

和風の人魚伝説として有名なのは、八百比丘尼(やおびくに)伝説だろう。
これは、人魚の肉を食べた事で、不老不死になった女の話で、様々なヴァリエーションがあるが、少々描写が曖昧だ。
つまり、量の描写である。
一体どれほどの肉を喰らえば、不老不死になるのだろうか。組織を食べれば良い、というのであれば、血の一滴、髪の毛1本でも良いのだろうか。

目次

八百比丘尼伝説

八百比丘尼伝説は、日本各地に存在する。
柳田国男らの調査によると、本州から九州まで分布が見られるという。

幾つかの系譜があるが、

  • 集落の外の人間が人魚の肉を持ち込んだ
  • 奇妙な魚(人魚)が獲れた
    といった経緯で、海や外部(まれびと)からもたらされ
  • 気味悪がって食べない人が多い
  • 事情を知らない幼い娘が食べ、老いなくなった(1000年、または不死)

という流れになっている。

ここで分かる事は、「丸ごと食べた訳ではない」という事である。
昔の人間は、身体を動かす分よく食べたとはいうが、まだ幼い女の子が人魚を完食するというのは無理がある。

シラスや稚魚サイズのものを丸呑みするという可能性はあるが、気付かず食べるという話も多い事から、「切り身」であった事は間違いないだろう。
内臓を食べたのであれば、「肝」「はらわた」といった表現をするから、やはり切り身部分と考えた方が無理がない。
そして、「料理として出されたものを、持ち帰った」、「子供がうっかり食べた」といった表現から見るに、小鉢1つ程度の量がイメージされる。

刺身が向いてます

つまり、人魚の肉は、一口齧り取る程度のサイズで、永遠の命が得られると考えられる。
これは、どういうメカニズムだろうか。

極めて滋養強壮に優れていた、という場合はどうだろう。
ただの滋養強壮ではない、魔力の領域に達するほどの滋養強壮である。
ある程度信憑性はある。
だが、その場合、それはあくまで与えられただけ。いつかは尽きるエネルギーだ。
1000年と時期を区切った伝説の場合は良いが、「永遠の命」となると少々無理がある。

回復の魔力的なものを持っている場合はどうだろう。
それが人に宿り、時間の流れや災いを退け続ける、といった可能性である。
だが、この場合、人魚自体がそこまでパワフルに描かれていない事に違和感がある。
無限に近い回復力を持つ者が強いというのは、吸血鬼系キャラクタやローガン、藤井八雲など、枚挙に暇が無い。

肉片1つで永続的に不死身になる、という設定で違和感が少ないのは、「細胞の入れ替わり」だろう。
魚類は、成長に限界がないとされる。成体となった後も、成長を続ける。

一方、人間は成長期以降、大きく育つ事はない。
人魚が、この両方の性質を持っていると考えれば、サイズを増やす方ではなく、新陳代謝の方に細胞分裂機能が用いられるというパターンがあり得る。
つまり、常に若い細胞が供給され、永遠の命が実現される。
だが、永遠に生き続ける細胞は、通常の細胞よりコストのかかるものだ。それが種の保存に役立たないのであれば、寿命が短く多産な人魚種に淘汰される。
短命品種に勝つためには、長寿がそのまま生殖に有利、つまり、生殖可能年齢が長い必要がある。例えば、事故で欠損した部位、特に性器を、再び作り出せる程度の、強力な再生能力は必要だ。
つまり、人魚の細胞は、かなりの自由度を持った、いわゆる「ES細胞(胚性幹細胞)」の可能性がある。

テセウスの船問題は

つまり、結論はこうである。
人魚を喰うと不老不死になるのではなく、人魚のES細胞に喰われた結果、不老不死に見えたのではなかろうか。

強力な増殖機能を持つ人魚の肉(細胞片)を取り込んだ結果、体内で増殖し始める。
人魚細胞は、隣接した細胞の遺伝子を真似ながら置き換わっていく。このため、すっかり細胞が入れ替わっても、形は人間のままだ。
結果として、不老不死の「人間」、八百比丘尼が出来上がった。

彼女が人間なのか、そうではないか、という「テセウスの船」問題は、気にする事もないだろう。
とりあえず、人魚細胞は宿主の遺伝子を参照している。さもなければ、途中で破綻して癌細胞として駆逐されるだけの事だ。同じ遺伝子を持って同じ肉体と置き換わるのだから、通常の新陳代謝と変わらないと言って良いだろう。

この説に従う場合、ほぼ死んだ細胞である髪の毛は、食べても意味はない。血液については、癌細胞が血流に乗って転移するように、人魚細胞も含まれている可能性は充分ある。

新陳代謝のマンガ的解決

と、ここまで考えたところで、この発想は、恐らく高橋留美子先生が漫画「人魚シリーズ」でやっている。
昔読んだものなので少々うろ覚えだが、食べたけれど不老不死に上手くなれなかった「なりそこない」の描写がある。

彼らは、上手く人魚細胞が学習出来ず、人魚細胞オリジナルの姿が出てしまったと考えればおかしくはない。
作中描写では、目に見えるスピードで変化が現れていたが、そこはマンガ的表現というヤツだろう。

尚、高速新陳代謝をリアルにやると垢の山が出来る、というのは同じ出版社の『陸軍中野予備校』(作:安永浩一郎)などで、既に描写されている。

※画像はイメージです。

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