米海軍空母艦乗船日記【施設編その1】

ミリタリーレポート

アメリカの本社から届いたメール。
「空母艦ジョージ・ワシントンの航海に同行して教えてみないか。」
このメールから私の人生の航路は新天地を目指して空母艦と共に出航するのであった。

本社からのメールの1週間後、45Lのバックパック2つを持って、ジョージワシントンに乗っていた。
スポンサーになってくれたマスタチーフのジョーさんから、乗船前に以下の物を用意するようにと言われた。

「ビーチサンダル、タオル、着替え、洗濯用バッグ、洗剤、石鹸、シャンプー類」
正直、これだけ!?と思った。

中の構造がまったくわからない状況で、何が必要になるかが皆目見当がつかない。
とりあえず言われたものと、仕事道具の教科書や絵カードを詰められるだけつめた。

必要な物のメールには、キャリーバックは禁止と書いてあったのだが理由はすぐに分かった。
全長約330メートルの艦内は5メートルおきに、高さが40cmぐらいの浸水防止用の壁があり、持ち上げて進むのは体力も時間もかかる。
おまけに上下の階に行くには鉄製の梯子のような階段のみ。

エレベーターは一応あるが、飛行甲板の下にある広大なハンガー(格納庫)から戦闘機やヘリをデッキまで上げ下げするときのみに使われるので人は使えない。搭乗口から自分の部屋まで行くのに、荷物をもって20分ぐらいかかった。

■ 艦内の廊下の様子

私の部屋は飛行甲板からから2階おりた所にあり、飛行訓練中もそこまでうるさくはない。
耳栓などしなくてもなんとか寝られるレベルだ。
甲板の真下にある階は離着陸時はものすごい騒音だ。対面で座っていても声が聞こえない時が多々ある。

後から知ったのだが、私の部屋はスリーピーホーローと呼ばれ、艦内でも人気の場所に位置していたらしい。部屋は2人部屋で8帖ぐらいで、収納もクローゼットと引き出しが十分にあり、収納式の机と洗面台と2段ベットがあった。この2段ベットにはカーテンがついていて、しめた状態が唯一のプライベート空間だ。

下士官と士官の部屋は別々の場所にあり、下士官はマスターチーフ(下士官の最上級ランク)にならない限り大部屋だ。

5000人ほど乗っているうち、女性は400から500人程度。下士官の女性の部屋は、1部屋20から50人ほど、士官も2から6人部屋。
男性の下士官は200人の大部屋もあり、彼らの部屋は基本3段ベットだ。1段の隙間は人がぎりぎり入れるほどしかない。体の大きい人は足がはみ出てしまったり、床ずれをする人もいる。

私物も健康ランドのロッカーほどで、ベッドのカーテンも破れていたりしてまるで難民キャンプのようだった。士官は女性も男性も大体同じつくりだ。何人部屋になるかはその人の階級と運らしい。

1人部屋がもらえるのは艦長とアドミラル、護衛艦隊のキャプテン、各飛行隊の隊長(お風呂は共同)と5000人中20人程度だ。

さすが軍艦、縦社会だ。

■館内の自室

艦内には士官用の食堂が3つ(Ward room)、そのうち1つアドミラル直属の人たちしか使えないので、実質2つ。下士官用の食堂はMess deckと呼ばれ、1フロアの半分が食堂になっていて、その中で4つにエリア分けされている。またチーフのみが使える食堂も1つある。

食事は1日4回。朝5時半から7時半、11時から13時、17時から19時、夜食の22時から25時となっている。夜食は主に夜勤の人が利用する。

士官はお菓子やシリアル、果物が常においてあるので小腹がすいてもなんとかなるが、下士官はそういったサービスはない。

全体の70パーセントを占めるので食事にありつけるまでとにかく長蛇の列だ。
ひどい時には1時間ほど待つことがある。

食べ物はアメリカンなハンバーガーやサンドウィッチや肉が中心だが、フィリピン人が多いからか週2ぐらいでフィリピン料理のアドボや春巻きがでる。
また毎週火曜日はタコスの日、土曜日はピザの日で、日曜日はサンデーブランチといて朝食と昼食が合体する。この日は料理も豪華で、定番の朝食プラスローストビーフだったり、手作りワッフルがふるまわれる。

■士官食堂

最初は毎週毎週同じ料理で嫌だなと思っていたが、航海も2週間を過ぎると時間の感覚がわからなくなってくる。とくに窓もなく、今どこあたりにいるかもわからない、毎日同じことの繰り返しな生活が続くと、本当に時間の感覚がなくなる。

そして日光に当たらない生活で心も病んでくる(笑)
そんなときの唯一の楽しみが食事だった。

幸い、私は全部の食堂で食べることが許可されていたので、その日のメニューで食べる場所を変えていた。
1番おいしいのはアドミラル直属の食堂。土曜日の夜はコース料理になっている。艦内の3つ星レストランだ。
1番おいしくなかったのは下士官の食堂だった。おいしくないというより、食器も四角いプラスチックで料理もボンと雑に盛られ、なんだか刑務所にいるような感覚になった。

アメリカ軍人の福利厚生はかなり充実しているのに続く人が少ないのは、こういう日々の積み重ねなのかなと感じた瞬間だった。

次回 施設編その2をお楽しみに。


ガンちゃん

語学講師として米海軍基地、また空母艦ジョージ・ワシントン、ロナルド・レーガンにて計5年間勤務。
現在はその当時知り合った軍医の主人とサンディエゴ在住。