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使用が懸念される核兵器を巡る思惑、戦術核と戦略核を考察

後世の他の作品に大きな影響を与えたと考えられる記念碑的な作品は、創作活動の各分野の中でそれぞれ存在していると思われるが、アクション映画と言うジャンルにおいては1979年のマッド・マックスも外せない。但し本作の少し近未来の治安が悪化したオーストラリアを舞台とした設定は、その興行的な大成功を受けて1981年に制作された第二弾のマッド・マックス2では核戦争後の無法地帯へと更に大きく変更がなされた。

そこでは核戦争後の荒涼とした世界で暴力と略奪を生業とする悪漢達と、それに生きる為に立ち向かう弱者達、そしてとその仲間となった主人公と言う鉄板の対立構図が描かれ、世界中で人気を博す作品となった。この核戦争後に力を持つ悪漢が世を支配していると言う弱肉強食の世界観は、今更言うまでもないが日本では漫画・アニメとしても80年代を象徴する作品となった「北斗の拳」などに色濃く反映されている事は疑う余地がない。

目次

戦争で使用された核兵器

実際の戦争で核兵器が使用されたケースは、太平洋戦争末期にアメリカが日本の広島と長崎に原子爆弾を投下したのみであり、幸いと言うべきかそれ以降は如何なる戦争でも使用される事はなく今日を迎えている。賛否両論は当然あろうが、アメリカ一国が核兵器を独占していた時代が終わると、核兵器保有国が相互に核兵器による攻撃を危惧するようになったため、所謂・核の抑止力が働き、それが使い辛くなった点は否定はできない。

但しこの2022年にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が実行に移されてしまい、西側諸国の兵器支援によって通常戦力によってウクライナを屈服させる事が困難となったロシアは、核兵器の使用を匂わせ始めた。
アメリカの現バイデン大統領自身もキューバ危機以来だと指摘する等、これまでにない程その仕様の恐れが高まりつつある核兵器について、今回微力ながら触れてみたいと思う。

そもそも核兵器とは

核兵器とは英語ではニュークリア・ウェポンと呼ばれ、原子核の分裂が連鎖する事で生じるエネルギーや、原子核同士が融合する事で生じるエネルギーを兵器化したもので、その爆発で生じる風・熱・放射線で破壊力を発揮する。
原子核の分裂を利用したものが原子爆弾、原子核同士の融合を利用したものが水素爆弾、水素爆弾の中で金属への透過性が高い中性子線の放射量を増加させたものが中性子爆弾と呼ばれ、他にもコバルト爆弾等が存在する。

これら爆発を行う仕組みや原理・仕様によって核兵器は複数に分けられるが、何れもその元となる原料はほぼ原子力発電によって生じた使用済の核燃料が再利用されており、よって核兵器保有国は自国の原子力発電所を供給源としている。
日本は無論核保有国ではないが、その気になれば核兵器を製造可能だと論じる言説があるのはそれ故でありつつ、技術的に可能か否かより唯一の被爆国としてその兵器利用が大多数の国民の賛同を得るとは考えづらい。

2022年現在、核兵器の保有国はアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国の国連の受任理事国5ケ国に加え、インド・パキスタン・北朝鮮、そしてイスラエルと合計でも世界の僅か9ケ国のみとごく少数に過ぎない。
これら以外の国としてはNATO加盟国の中、ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・トルコの5ケ国がアメリカの核兵器を運用するニュークリア・シェアリングに参画しており、航空機に搭載する戦術核爆弾が配備されている。

使用する用途と運用手法から見た核兵器(1) 戦術核

これまでにも述べてきたように、ロシア・ウクライナ戦争において通常戦力によるウクライナ侵攻が行き詰まりを見せ始めたロシアは、ウクライナとそれに兵器供与を行う西側諸国に対して核兵器による恫喝を始めた。
マスメディア等でも苦境に立たされたロシアが戦術核兵器をウクライナに対して使用する可能性について、軍事や政治の専門家からの指摘頻度も増しているが、2022年10月現在、未だ脅しに過ぎないとの見解が大勢を占めている。

ここでロシアが使用する可能性について触れられているのは戦術核と呼ばれる核兵器であり、これは後述する戦略核と対を成す概念ではあるが、破壊力の大小ではなく、総じて短射程で敵前線への攻撃に用いられるものを指している。
短射程とは概ね500キロメートル未満のものを意味し、これはアメリカと旧ソ連の冷戦時代末期に締結されていた核軍縮条約等で目安とされた数値で、前線への攻撃とは敵の戦闘部隊に直接の打撃を与える事だと解釈される。

前述したようにNATO加盟国のドイツ等のようにニュークリア・シェアリングにて共有されるアメリカの核兵器は戦術核と位置付けられ、冷戦期に通常戦力で上回る旧ソ連を中心とするワルシャワ条約機構に対抗するべく装備された。
これが採用された理由は当時のNATOの地上部隊の戦力は、ワルシャワ条約機構に劣ると考えられれていた為、もし仮にそれが現実のものとなった場合には、その進撃を止める為に核兵器を使うと言う想定がなされた為である。

今のロシアは自らがウクライナに侵攻しておきながら、いざ劣勢に立たされそうになったと見るや戦術核の使用を匂わせる恫喝を行っているが、不謹慎ながら冷戦末期と真逆の流れである事は歴史の皮肉かも知れない。

使用する用途と運用手法から見た核兵器(2) 戦略核

戦術核が総じて短射程(500キロメートル未満)で敵前線への攻撃に用いられる事に比して、戦略核は概ねそれ以上の射程距離を持ち、且つ軍事的な目標に限定されず敵国の継戦意欲を削ぐ為に使用される核兵器だと考えられる。
但し戦術核・戦略核ともに射程距離がそれらを隔てる最大の理由とは言えず、後者の方が総じて長射程・高威力と言う側面はありつつも、最終的な目的が局地戦での勝利なのか、戦争そのものの帰趨を制しようとするのかの違いと思われる。

それを考えた場合には正に太平洋戦争でアメリカが広島と長崎に投下した原子爆弾は戦略核としての使用であり、仮に同じ原子爆弾を硫黄島などの制圧に使用したと仮定するならば、それは戦術核と見做されるだろう。
但し今日的には戦略核と言えばICBM(大陸間弾道弾)やSLBM(潜水艦発射型弾道弾)が一般的であり、それらが前線の敵部隊に対する攻撃に使用される可能性は限りなく低い事から、それをイメージしておけば間違いではなかろう。

戦略核は冷戦時代初期に旧ソ連が宇宙開発でアメリカに先行した時期に、西側諸国が一様に想起した世界の終焉を予期させる兵器であり、其れ故に保有国が互いに自制して使用を戒めると言う核抑止の象徴と見做されている。

核保有国に見る核兵器の運用を巡る思惑

前述した通り2022年現在で自国で核兵器を製造して保有している国は、アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国・インド・パキスタン・北朝鮮・イスラエルだが、それぞれの国の政治・地理的環境の相違からその思惑も異なると思われる。
殊にここで挙げた後半3つのパキスタン・北朝鮮・イスラエルは、それ以外の所謂大国とは核兵器を保有・運用する意味が異なり、パキスタンは対インド、イスラエルは対アラブと使用対象とする国は隣接する対立国のみを想定している。

北朝鮮はこれらの中では異質だと感じられ、直接朝鮮戦争で対峙した韓国・アメリカは当然としても、日本のような周辺国にも核兵器による恫喝で様々な譲歩を引き出そうとしているきらいは否めない。
だがこうした北朝鮮と異なり、アメリカやロシアのような軍事大国が冷静な思考かと言えばこれにも疑問符が付き、例えばロシアのプーチン大統領は既に2015年3月の時点で国営放送でウクライナへの核兵器の使用に言及している。

これはその前年に成功させたクリミア半島の併合時の事を指していると思われ、今のロシア・ウクライナ戦争のようにウクライナが抵抗を行っていれば、戦術核兵器の使用も辞さなかったと明言しているに等しい。
また2018年当時の前トランプ政権下のアメリカでも、戦略核と比して低威力な戦術核を見直そうと言う軍事戦略が俎上に上げられ、使えない兵器から使ってもそれ以上のエスカレーションを招かない手法が検討されている。

あくまで恫喝だけで使用されない事を願いたい核兵器

ロシア・ウクライナ戦争では通常兵力で劣勢に回り、ウクライナの反攻作戦によって占領地を奪還されつつあるロシアが、プーチン大統領の決断如何によっては戦術核を実際に使用する可能性が排除できないとする見方も増えている。

先のクリミア半島の併合時にも既にその覚悟を示していたプーチン大統領の言動を考慮すれば、これはあながち的外れな指摘とも言い難い面があり、そのような事態に発展しない事を祈るくらいしか個人的は出来ない。
しかし今のウクライナのゼレンスキー大統領を始めとする動きを見れば、例え戦術核を使われようともロシアへの抵抗を止めるようには思えず、軍事面でも政治面でもロシアがそれを行う事には利点が薄いように見える。

ウクライナではかつての旧ソ連時代に大規模なチェルノブイリ原発事故を経験しており、謂わばこうした放射線被害に関しては国民の耐性が高く、戦術核による被害よりも独立を躊躇なく選択するとの指摘もある。
こうしたウクライナの姿勢には驚きと畏敬の念を禁じ得ないが、願わくば日本についでの2番目の核兵器の被爆国にはなって欲しくはないと思わずにはいられない。

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