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ホームビデオの白い女

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物心ついた頃から、妖怪や幽霊、とにかくホラーが大好きな子供でした。

私がまだ中学生の頃、レンタルビデオ屋に行くと、必ずと言っていいほど怖いビデオを借りていました。
それも映画等のフィクションではなくて、一般人から投稿された幽霊が写り込んだ動画を集めたものばかり。

なのでいつも「またそんな気持ち悪いビデオ持ってきて」と文句を言われてますが、「だって見たいんだもん!借りていいでしょ!ね!」となんとかお願いしていたのでした。

目次

不穏なビデオ

いつものように、居間に置いてあるテレビで再生。
聞き慣れたナレーションが流れ出す、「これはある投稿者により撮影されたもの・・・」。
ワクワクしながら見ていると・・・「ん?」

いつもなら、ここからすぐに動画が再生されるのですが、急に画面が真っ黒になり、赤字で【これより先は、自己責任です。】と表記され、次に説明が始まりました。

この動画には謎の白い女が映り込むということ。そして、この動画を見た者の場所に現れる。
もし、あなたの前に現れても責任はとれない。と言った内容だったと思います。
私はホラーが好きでも霊感はなかったので「まさか」とは思いましたが、子供なりに不穏な空気を読み取り、急いでテレビを消しました。

「どうしよう・・・・」私は、白い女が気になって仕方がありませんでした。
ですがどうしても一人で見る勇気が出ず、私は小学生の妹にお願いをしました。
「一緒に見てほしい」

妹は小さかったので「わかった」と何もわからないまま承諾してくれました。

映り込むもの

テレビをつけ、再生ボタンを押すと最後に消した黒い画面から始まる。
そして、その白い女が写っているという動画が流れ始める。
動画の内容は、ごく普通の家庭で行われる、誕生日パーティーの様子を映したホームビデオでした。

子どもたちの笑い声が響く中、母親が飲み物を取りに席を立った時、ビデオカメラが母親の背中を追うように動くのですが、その時に数秒映るテレビの画面に・・・「いた!!」。

テレビの電源は切れていて、暗いままの画面に向かい側の部屋の様子が反射して映っていました。
そして確かに、そこにいる家族の誰でもない、白装束のようなものを纏った長い黒髪の女性が立っている。
次にテレビが映り込んだ時には白い女は消えて、ビデオはこれで終わり。
「なんだ、これだけか」とほっとして、そのままビデオを最後まで再生しました。

それから数日が経ち、特に変わったことはなく、白い女のこともすっかり忘れていました。

きた

学校が終わり、下校途中。
小学校から帰る妹を見つけ、一緒に帰ろうと声をかけたのですが・・・。

家の近くに大きな坂があり、その頂上に何かの石碑が立っていて、その辺りを見つめてぼーっとしたまま動かない妹。
どうしたの?と肩を叩くと、はっとしたように私を見て、石碑を指差し、

「あそこに白い女の人がいる」

恐る恐る顔を上げると、私には何も見えず、そこにはいつものように夕日を浴びながら、そっと立っている石碑があるだけ。

「誰もいないよ」
「うん。いなくなったね。」
「誰かいたの?」
「この前ビデオで見た白い女の人がいた」

私は怖くなり「一緒に帰ろう」とだけ言うと、手をつないで家路を急ぎました。

「本当にきた?」半信半疑でもありましたが、まさか小学生の妹があんな嘘をつくわけがないとも思い、ただただ恐怖心だけが私を支配していました。

聞こえてくる声

こんな日に限って、次の日が期末テストということもあり、私は一夜漬けの徹夜で勉強。
時計の「カチカチ」という音が響くほど静けさが増す深夜2時頃、横で寝ていた妹が急に目を覚ましました。

「ごめん、起こした?」
「ううん、なんか聞こえる」と眠そうに目をこすりながら言う妹。

私は思わず今日の白い女のことを思い出し、慌てて寝る準備を始め、「大丈夫だよ。夢見てたんじゃない。何も聞こえないよ」と妹を慰めた。

「まだ聞こえるよ、お外から聞こえるよ。誰か泣いてる」
私は恐怖をこらえ、耳を澄ましました。
すると確かに聞こえるんです。「ギャー」というような子供が大泣きしているような泣き声と、それを罵倒するかのように怒鳴っている女の声。

窓の外は、すぐ道路になっているのですが、田んぼと山に囲まれたど田舎。こんな夜中に車一台通らず、ただただ、泣き声と怒鳴り声が響き渡る。
近所の子の夜泣き?でも、そんなに怒ること?まさか誘拐?
私はなんとか現実の出来事だと思おうとしましたが、考えれば考えるほどありえない状況に、妹を抱きしめ震えていました。

夢か現実か?

少しずつ、少しずつ大きくなるその声は、窓のすぐ側までそれが来たことを物語っていました。

私は、目を瞑ったまま、勇気を出してカーテンをバンっと開けると・・・。
その瞬間、怒鳴り声と泣き声は止み、元の静けさを取り戻す。恐る恐る目を開けると、真っ暗な闇が広がるだけ。

私は妹を見て、「ほっ」と一息ついた瞬間、耳元で「$%#$^%*&*」と不可解な女性の声が聞こえます。
もう一度窓の外へ目をやると、小さい子どもと手をつないだ白い女が、こちらをじっと見ていました。

私は急いでカーテンをしめ「南無阿弥陀仏」と唱えながら震えて布団に潜り、いつの間にか眠っていた。
気がつくとカーテンから朝日が差し込んでいました。

昨日の出来事が夢だったのか、現実だったのか?
妹とはその話をしていないので、今となってはわかりません。

母に、ビデオを見て妹が白い女を見たこと、不思議な体験をしたことを話すと、たっぷり叱られ、怖いビデオのレンタル禁止令が出たのは言うまでもありません。
それ以降、白い女が出ることはありませんでした。
あのビデオが今でもあるのかわかりませんが、あまり見ることはオススメしません。

※画像はイメージです。

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