テレビなどで観る武士は、必ず体の左側に刀を差していますが、サウスポーの武士は右に差していたのでしょうか?
人の心臓は体の左寄りにある
心の臓は重要な急所の一つです。右手で持った刀の方が、僅かではあるものの相手の心臓に近くなります。
だから左に帯刀して右手で抜くのが有利になります。
もちろん人の急所は他にありますが、生死を賭けた立ち合いでは、少しでも有利な方法を選ぶのが当然だから、左体側の帯刀が当たり前になったといいます。
右手に刀を持つのが、不戦意志の表明
全ての武士が左側に帯刀、右手で抜刀という決まりができると、敵意のないことの証明に、歩く時は鞘ごと刀を右手で持ち、座る時は刃を自分の方に向けた刀を、右側の床に置くようになりました。
左手では抜刀しにくく、例え無理に抜刀しても、即座に刃が相手に向かないからです。
また武士同士が擦れ違う時、互いの刀がぶつからないように道の左側を歩きました。
そんな礼儀が確立された中、自分は左手が利き手だからと右側に帯刀すると無礼となり、武士にとって無礼は、命を張っての果し合いに繋がりかねないので大変です。
サウスポーの武士はどうしていた?
昔だからといって左利きがいなかったはずがありません。
でも剣術の教練過程で全て右使いに矯正されました。
しかし生れ付きの左利きは、どうやっても左手が力強く、思う様に動かせるのが現実です。
それを利用して得意技を考案した者もいました。
大石進という剣豪は「左片手付き」という得意技で、江戸の有名道場を荒らし回ったといいます。
刀を構える時、右手で鍔に近い所を、左手は柄尻近くを握ります。
相手と対峙して突きを繰り出す際に、右手を離して左手だけの方が、柄の端を握っている分、通常の両手突きより刀を長く使えます。
大石は元々サウスポーだったので、この左片手突きが正確で強力だったのです。
また二刀流で有名な宮本武蔵もサウスポーだったので、右利き手一刀流の弱点をカバーするために、左手に小太刀を持ったという解釈があります。
左手でお箸はお行儀が悪いと叱られた
半世紀以上前、私が幼い頃には、左手でお箸を使うのはお行儀が悪いと叱られたものです。
右手使いに矯正されることも珍しくはありませんでした。
この左利き悪者意識は、もしかしたら左帯刀が元になっていたのかもしれません。
将来のスポーツ選手目指し、わざわざサウスポーに転向する子供がいる昨今、正に隔世の感です。
※写真はイメージです。
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