2020年にはアメリカ海兵隊が主力戦車・M1エイブラムスの配備された戦車大隊を廃止し、アメリカ陸軍のみがこれを保有することに替わるなど脱戦車の動きも加速している。世界的にも今後大規模な正規軍同士の武力衝突の可能性の低下が指摘され、非対称戦において戦車よりも汎用性が高いとされる装輪式の装甲戦闘車がトレンドにもなりつつある。
しかしこれまでも大陸軍国として歴史を刻んできたロシア連邦軍から、そうした状況下においてもふんだんに新基軸を盛り込んだ新型戦車T-14が世に出され注目を集めている。
新型戦車T-14の登場までの経緯
ロシア連邦軍の新型戦車T-14は、2015年の記念すべき70年目の対独戦勝記念パレードで初めて映像で広く世界に報じられ、その存在が知られるようになった主力戦車である。
言葉上の定義が曖昧であるため第4世代戦車とも、更にその先を行く第5世代戦車とも表現されるT-14だが、ロシア軍としては早期に2,000量以上の調達を進める予定とも言われている。
旧ソ連崩壊後、ロシアの主力戦車としてはT-72やその改良版であるT-90が存在していたが、西側諸国のM1エイブラムスやレオパルト2等と比較すれば性能は1段落ちると目されていた。
そうした状況下でプーチンが大統領の座に就いた事でロシアの軍事予算は再び増加に転じ、ロシア軍の装甲車両を近代化・合理化する手法が2012年に定められた。
ここで打ち出された4種類の装甲車両のプラットフォームのうちのひとつが、重装軌車輌の「アルマータ」と呼称されるものでT-14戦車のベース車両として採用される事になったものだ。
2021年現在、この「アルマータ」ベースでT-15歩兵戦闘車、152mm自走榴弾砲コアリーツィヤSV等の車両がT-14と並行して生産されており、ロシア軍の重装軌車輌の代名詞となっている。
T-14戦車の仕様
T-14戦車は全長10.8m、全幅3.5m、全高3.3m、重量約55t、乗員3名、機関12気筒ターボ・ディーゼル、最大出力1,500hp、最大速度80km以上、55口径125mm滑腔砲を搭載している。
因みにM1A2エイブラムス戦車は、全長9.83m、全幅3.66m、全高2.37m、重量約63t、乗員4名、機関ガスタービン、最大出力1,500hp、最大速度67km以上、44口径120mm滑腔砲である。
T-14戦車は車体の大きさの割に軽量であることが特徴であり、これによって発揮出来る最高速度も80km以上と、各国の主力戦車の中でも高い機動性の確保に成功している。
また最大の特徴は砲塔部分には乗員を配置しない構造にあり、自動装填装置の採用で3名となった車長・砲手・操縦手全員を車体前部の装甲を施された専用スペースに収容する形式を取っている。
戦車において最も被弾する可能性が大きい砲塔部分を無人とする事で、被弾した際にも乗員の生存性を向上させるものと見做されているが、量産型の主力戦車としては初の試みである。
そのコンセプト自体はイスラエルの主力戦車・メルカバにも通底する設計思想とも思われるが、それとは異なり実戦投入されたことの無いT-14戦車は有用性はまだ確認されてはいない。
加えて無人砲塔の構造上からは、指揮を執る車長も直接の目視による状況観察は出来ない為、モニター等の電子機器でそれを実施する事となり、その点を疑問視する声も聞かれる。
T-14戦車の兵装等の装備
T-14戦車は以前のT-72やT-90と口径こそ同様の125mm滑空砲を主砲としているが、砲身は48口径から55口径へと延長された2A82-1Mを搭載しており、打撃力の向上が図られている。
この2A82-1Mは、専用に開発された「ヴァキューム1」徹甲弾を用いた場合、2,000mの距離でRHA換算で凡そ100cmの貫徹力を発揮するとされ、無人砲塔内の自動装填装置に32発を収容可能だ。
加えて13発を予備として無人砲塔内に収めることが出来る設計であり、他にも「テリンク」榴弾や対戦車及び対空用の「3UBK21スプリンター」ミサイルを主砲から発射する事が出来る。
対人戦闘用には12.7mmと7.62mmの機関銃が各1丁装備されており、何れも車内からの遠隔操作で発射する事が出来る設計となっている。
また「アフガニト」と呼称される固定式発射システムを装備しており、対戦車ミサイルを始めAPFSDS等も迎撃するこ事が可能だと説明されている。
eyecatch source:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由
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