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狸の八化けの仮説―化け狸の化けるバリエーションはなぜ豊富?

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愛嬌のあるイヌ科動物のタヌキは、日本固有の動物でありながら、古典的な童話や落語、アニメなどでも扱われ、海外での認知度も高く、動物園では珍獣として多くの客を集めるという。
だが、外国人が期待するのは、化け狸の方ではなかろうか。

「ラクーン・ドッグ」と言われて喜び勇んで見に行った外国人が、現実のタヌキの、ざんねんなイヌか、アライグマとの間違い探しのような姿に、ガッカリするという悲劇も多そうだ。

目次

化け狸の能力

化け狸は、妖怪の中でも有名な存在である。
「狐の七化け、狸の八化け」と言う言葉があるように、化ける能力に長けているとされる。地域によっては狢(ムジナ)と呼ばれる事もある。
狸が化けて人前に現れたという伝説は非常に多く、分福茶釜の他、一つ目小僧、ろくろ首、白い袋、松の株、隠居の亡霊、重箱を持った老婆、赤い殿中を着た子供、白徳利などなど。
むしろ八化けは控えめな表現と分かるラインナップである。

他の化け狸の特徴として、陰嚢の大きさがある。
「狸の金玉八畳敷き」という言葉があり、皺を伸ばして広げると、畳8枚(約14.4平方メートル)になるという。
信楽焼の狸の陰嚢が大きいのはこのイメージと考えられる。

単なる見た目の特徴というだけでなく、化け狸はこれを伸ばして化ける時の小道具に使う。
落語「たぬき」では布団代わりにしており、おおよそ肉体の一部であるというルールや、物理法則を無視し、「平べったいもの」全般として使えるようだ。つまり、持ち主が棒っぽいものと思えば、中華鍋にも、推し団扇にもなる、吉田家伝来のずるい杖と概ね同様の物体だ。
ジャングルの王者ターちゃんは、異様に伸びる陰嚢の皮で飛んでいたが、これもムササビというより狸の発想だろう。

そして腹を叩いて鳴らす、腹鼓も良く知られる。
複数でセッションする場合は狸囃子と呼ばれる。證誠寺周辺に出没した狸達は、和尚と対バンしたという伝説もある。野口雨情の童謡『証城寺の狸囃子』として、知る人も多いだろう。

それ本当に狸でした?

狸が化ける妖怪である事、そして、それが様々な姿を取る事、ここに1つ大きな見落としがある事にお気づきだろうか。
何か怪異を目撃した時、それが狸の仕業であると証明されるのは、目の前で「正体」として狸の姿を明かした時のみである、という事だ。

単に怪異を見ただけでは、それが狸の仕業かは分からない。埼○○○○○で行われた○○全てを、証拠無しで○○○○の仕業と決めつけてはいけないようなものだ。そして、目の前で怪異が狸に変じたとしても、怪異が狸に化けたのか、怪異に化けていた狸が正体を現したのか、本当のところは分からないのである。

我々は狸が出そうな場所で出会す怪異を、全て狸のせいにしているのではないだろうか。
だからこその「八化け」ではないか。

狸とタヌキ

そもそも、狸とは何であるのか。
敢えて書き分けてきたが、狸はタヌキではない。

狸という漢字は、中国において「ヤマネコ」を指す文字だった。
仙狸がヤマネコの妖怪であるという、真・女神転生シリーズの説明で気付いた人も多い筈だ。
分類学の成立はカール・フォン・リンネを待たねばならない。

伝来時点で日本では、「ヤマネコ」にせよ「狸」にせよ、複数の生物がごちゃ混ぜに呼ばれていたのだろう。
無論、ヤマネコも当てはめたかも知れないが、他の山の仲間達、タヌキ、アナグマ、イタチ、ムササビなども「狸」の括りに放り込まれたのである。
古くは「お母さんはどのゲーム機もファミコンと呼ぶ」理論、現代的に言えば「お母さんはPCで観る動画は全部ニコ動と呼ぶ」理論である。

こうなって来ると、「八化け」がどんどん怪しげになっていく。
同じ狸の筈なのに、何だか尻尾がシマシマしている、穴に棲んでいるかと思えば、謎の皮を広げて空を飛び、蔵に出没してネズミを取る事もある。
やがて、暗がりの藪から出て来た怪しげな輩を見て、「あれは狸だったやら、人だったやら」となり、そしてそれらの噂は化け狸に収斂されていく。
狸は「藪で蠢く物」程度の概念となり、妖怪「化け狸」が成立していった訳だ。

タヌキの負担を減らそう

ワールドワイドにタヌキが活躍する時、狸に向けられた期待を全て背負わせるのは、何とも苛酷である。
タヌキを海外で展示する際は、是非、狸に含まれるその他の生物と一緒に展示して欲しい。

それによって、妖怪を見に来たヲタク外国人達も、多少納得した顔で受け容れられるだろう。
少なくとも、狐につままれたような顔にはならない筈だ。

※画像はイメージです。

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