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妖怪「天井嘗(てんじょうなめ)」実は人々の役にも立っていた!?

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暗闇に包まれた天井。
それは、どこまでも続くかのように感じる深い闇の世界。

異世界の空間ともいえる天井を何気なく見上げた時、人の顔のような形のしみが浮かび上がっていることがあります。
天井とは、この世のものではない何かが潜んでいるところなのかもしれません。

天井に浮かび上がる恐ろしいしみは一体何なのでしょうか?
そのしみは、どうやらある妖怪「天井嘗(てんじょうなめ)」の仕業のようなのです・・・。

時代はかなり昔にさかのぼりますが、今回は、このある妖怪と人々との関係を見ていきたいと思います。
人々はその妖怪の生み出すしみに恐怖心を抱く、それは当然のことなのですが、時にはその妖怪が人々の役に立つこともあるようですよ。

目次

天井に潜む恐怖

昔の人々は、家の天井に目をやった時、得体の知れないものの存在を感じていたといいます。
昔の家は天井がとても高く、電気もなかったため真っ暗でした。

暗闇の中、わずかな明かりを天井に向けてみると、たくさんのしみが浮き出ていた、ということがよくあったそうです。
しみはとてもいびつで不気味な形をしていて、時にそれは恐ろしい顔のようにも見えたとのことです。

暗い闇の世界である天井には、何かがいると人々に信じられていたのです。

妖怪「天井嘗(てんじょうなめ)」が生み出すしみ

たくさん浮き出ている恐ろしい形のしみは、人々を恐怖に陥れました。
恐ろしい顔のようなものが天井に浮かび上がり、それが日に日に大きくなっていくのです。

恐ろしい形をしたしみを発見し、日々それを見ているうちに、恐怖におののいて精神のバランスを崩し、なんと亡くなってしまった人もいたそうです。
得体の知れないものに対する恐怖心が大きくなると、人は心身の健康を保つことすらままならなくなるのです。
恐ろしいものに対する恐怖の感情は、おそらく今も昔も変わらないのではないでしょうか。

こういった恐ろしいしみを作り出しているのは、「天井嘗(てんじょうなめ)」という妖怪だといわれていました。
天井嘗とは、天井に出現する妖怪で、天井の汚れを細長い舌で嘗め取るため、その跡がしみとなって浮き上がるのです。

人々を震え上がらせる恐ろしいしみは、この天井嘗が作り出しているのです。

天井嘗は人々の役にも立つ?~群馬県館林市の館林城~

昔から人々は、自身の周りに妖怪の存在を感じ、驚いたり和んだり、時に恐れおののいて暮らしてきました。
さまざまな性質をもつ妖怪がたくさんいて、人にいたずらするだけのものもいれば、人に取り憑く恐ろしい妖怪もいます。
天井嘗は、作り出したしみによって人々に恐怖を与える妖怪ですが、かつて、天井嘗が人々の役に立ったという出来事がありました。

群馬県館林市にある館林城は、かつて、天井嘗をあえて住まわせ、天井を嘗めて清掃をしてもらっていました。
館林城の天井嘗は、城の美しさを保つ仕事をしていたということになります。

天井嘗が生み出すしみを見ることは、通常ならば避けたいはずですが、館林城では、あえて天井嘗を住まわせていたのです。
城をきれいにするためとはいえ、妖怪を住まわせるなんて・・・とも思いますが、昔の人々は、妖怪を単に恐れるだけではなく、上手に妖怪と共存していたのかもしれません。

天井嘗と人と

闇の世界である天井に浮かび上がる恐ろしいしみ。
それを作り出す天井嘗は人々に恐怖を与える一方で、人々の役に立つという立場でもあった妖怪なのですね。

天井嘗は、現代でも各地の家屋等の天井で活躍しているのかもしれません。

featured image:Toriyama Sekien (鳥山石燕), Public domain, via Wikimedia Commons

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