太平洋戦争で日本は米国の物量に負けたという話はよく知られています。
しかしこの事を日米の国力差による単なる工業生産量の違い、と考える事は正確ではないのではないでしょうか?
兵器性能の対する考え方の相違
日米の兵器に対する考え方の違いを見る時、最も判り易いのが戦闘機です。
日本代表は言わずと知れた世界的名機・零戦です。極限までその戦闘性能を追い求めてこの名機は生まれました。
しかし職人技の集合の様な零戦は、作るにも使うにも熟練した技術が必要でした。
帝国陸海軍では零戦以後にも数々の名機が出ていますが、戦後米軍に鹵獲されたそれら戦闘機のいくつかでは、 完全に整備された機体を高オクタン価燃料で飛ばすと驚くべき性能を発揮しています。
つまり名人芸に過ぎる飛行機の為に取り扱いが難し過ぎたのです。
それに比べて米国のF6Fなどは、零戦を始めとする日本機との格闘戦を避ける交戦方法をとり、頑丈、高出力を優先しました。
その分扱いも比較的楽で、熟練パイロットでなくても十分な戦力になり得る飛行機でした。
即ち少数精鋭主義と多数平均主義の違いと言えます。
生産体制の違い
兵器に対する考え方はその生産体制にも現れました。
例えば航空機生産従事者の数を見ると1944年に日本121万人、米国129.7万人と、意外な事にそれほど大きな差はないのです。
また熟練工不足を補う女性労働者の割合にいたっては、1943年日本で10%、米国36.6%と米国が圧倒的に多いのです(電脳 大本営参照)。
然るに戦場の現場では撃墜される航空機の補充が追い付かない日本と、航空戦力が増強される米国の差は歴然で、その差は生産体制の違いで生まれたものでした。
米国は熟練工に頼らないで品質を落とさずに大量生産できる体制をとっていました。
そのポイントは、他種の兵器でも使い回せる規格化部品、その規格部品を作れる専用機械、そして規格部品で簡単に組み立てができる作業の標準化です。
規格部品は熟練工でなくても専用機械での製造が可能で生産効率は上がり、またその部品を使った製品の組み立て作業が簡素化できます。
作業が簡単になればやはり熟練工でなくても生産スピードが上がって大量生産できます。
米国はT型フォード生産によってこの大量生産システムを既に知っており、それが兵器供給の差となりました。
つまり日本はT型フォードに負けたという事になります。
※画像はイメージです。
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