今、私たちは日独伊三国同盟の締結は誤りだったと単純に考えがちですが、 ある面では当時としては必要性がありました。
太平洋戦争開戦
太平洋戦争の開戦では海軍の真珠湾作戦だけでなく、 陸軍のマレー作戦も同時に決行されています。
真珠湾攻撃は対米戦略によるもので、 米海軍に大打撃を加えることによる米国との早期講和が最終目的でした。
一方、陸軍マレー作戦は、石油などの重要資源地帯を攻略確保することが最終目的の、 東南アジア侵攻の南方作戦第一段階でした。
日本軍の南方作戦
当時の東南アジアは、マレー半島がイギリス領、インドシナ(今のベトナム)がフランス領、 インドネシアがオランダ領、フィリピンがアメリカ領など欧米列強の植民地でした。 従って各国が軍を駐屯させていました。
日本軍がこの地域に侵攻する場合、最も近い日本支配地である台湾から軍を移動しなければなりません。
しかし大軍団をいきなり敵勢力下の地域に投入するのは危険が大き過ぎるので、 前進基地となる橋頭保が必要でした。それがフランス領であるインドシナです。
またインドシナは、日中戦争の敵、重慶中華民国政府への軍事物資補給ルートにもなっていたため、 これを遮断するために軍を送る必要もありました。
ナチスドイツのフランス、オランダ占領
太平洋戦争開戦の1941年の1年前には、 ヨーロッパではナチスドイツが既にフランスとオランダを占領していました。
即ちフランス領インドシナとオランダ領インドネシアは、実質的にはドイツ領と化していました。
南方作戦でこれらの地域に日本軍が侵攻して日本の占領下に置くと、 ドイツとの政治的軋轢が生じかねません。
万が一、ドイツとの関係が悪化してインドシナ侵攻ができなくなると、南方作戦全体に大きく影響してしまいます。
つまりドイツとの協力関係を密に保っておくことは不可欠でした。
同盟はそのためにも必要だったのです。
日独伊三国同盟
第二次世界大戦は英米を中心とする連合国と、日独中心の枢軸国が敵対する対戦です。
ですから日本を敵視する米英蘭に対抗するために、それらの共通の敵であるドイツと軍事同盟を結んだと、 ほとんどの人は単純に大雑把に理解しています。
そして悲惨なその結末を知っている私たちは、この同盟を誤ったものとして捉えてしまいます。
しかし実際にどんな利益があるのかを具体的にみていくと、 その善し悪しはともかく、その時点ではそれなりに必要性があったことも事実です。
参照: 伊藤博文 豊田穣 著
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