記紀にある誓約（うけい）の真相は？

古事記・日本書紀にある姉弟神、天照大神（アマテラスオオミカミ）と素戔嗚尊（スサノオノミコト）が誓約を行ったという記述が記紀にある。素戔嗚尊が高天原にやってきたのを、攻め獲るわけではないことの潔白を証明するために行った古代の卜占である誓約。

それは、ただ素戔嗚尊が身の潔白を証明するだけのものだったのか。
考察を交えて検証する。

天照と素戔嗚が誓約に至る背景と内容

三貴子と言われる貴い神である天照大神と素戔嗚尊は、素戔嗚尊が海原の任務を拒否し泣き叫んで父神の伊弉諾神（イザナギノカミ）に追放されたのが始まりである。
素戔嗚尊は、母神である伊邪那美神（イザナミノカミ）のいる黄泉の国に行く前に、姉神である天照大神に別れの挨拶に向かうことにしたのである。
そんな素戔嗚尊を待ち受けていたのは、攻めに来たと思って武装をしていた天照大神だったのだ。

素戔嗚尊は誤解を解こうとしたが、話は聞き入れられず、誓約をしようということになった。
それぞれ互いの装備している剣と勾玉を交換し、それぞれのアイテムを噛み砕き吹き付けると、素戔嗚尊からは5柱の男神、天照大神からは3柱の女神が生まれたという。
古事記では、素戔嗚尊の持つ剣から清らかな女神が生まれたから潔白の証明となり、日本書紀では男神が生まれたら身の潔白の証明となっている。これにより、素戔嗚尊は高天原に残ることになったのだ。
その後、暴虐の限りを尽くした素戔嗚尊の行為に恥じて、天照大神は天岩戸に隠れてしまう。

誓約という行為の真相の説

二人の誓約にて神々が生まれたという行為に対して子ができているということから、この誓約は、天照大神と素戔嗚尊との姉弟間で秘密の関係となったという解釈もあるという。
分かりづらい表現を古事記や日本書紀では散りばめているため、神々の神聖な行為と感じるようにしていたのだろうか。

誓約の記述に関しては、偽書と言われている極秘口伝竹内文書にもある。
竹内文書では、天照大神の天孫族の国と素戔嗚尊の出雲国が戦争になったというのだ。
天照大神の国は素戔嗚尊の国に敗れ、戦争後の屈辱的な和解を?むこととなった。
それが、天照大神と素戔嗚尊の結婚であったという。
しかも、天照大神の先の夫は、素戔嗚尊に殺されたと言われ、その名は天之忍穂耳命（アメノオシホミミノミコト）と言ったのだが、古事記や日本書紀では天照大神の長男として誓約で生まれる神である。天之忍穂耳命は別名・正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命とも言われている。
この天之忍穂耳命の弟たちが、竹内文書では天照大神と先の夫との子と記している。

天照大神と素戔嗚尊の間に生まれた子は、素戔嗚尊が所持していた十拳の剣から生まれたとされる宗像三女神の「田心姫神（タゴリヒメ）」・「湍津姫神（タギツヒメ）」、「市杵島姫神（イチキシマヒメ）」なのだ。
国のための政略結婚だった天照大神と素戔嗚尊の結婚は、素戔嗚尊の武力によって紛争は収まったが、恨みを持っていた天孫族により後に出雲族を駆逐していくことになるのだ。
それが、諏訪や関東、東北にある蝦夷等の討伐の話へと続いていくのだろう。