徳島県北部には、昔、家畜に害を与えて殺してしまう妖怪が出没したといわれています。
今回は、この恐ろしい妖怪について、その妖怪を退治するための祭の内容も交えながら紹介したいと思います。
徳島県北部に現れた「牛打ち坊」
徳島県北部には、牛や馬に害を与えて殺してしまう妖怪「牛打ち坊」が出るといわれ、人々に恐れられていました。
牛打ち坊とは、夜更けに牛小屋や厩に入り、牛や馬に傷をつけ、血を吸ったり、呪い殺したりする妖怪です。
狸に似た黒い獣のような妖怪といわれています。
原因不明の家畜の死は、牛打ち坊の仕業だとされていました。
牛打ち坊の犠牲になった家畜には、牙の跡が残されていたという話もあります。
牛打ち坊を退治する祭
牛打ち坊に家畜を襲われてはたいへんです。
村の人々は、牛打ち坊を退治するために、毎年旧暦7月に祭を行っていました。
竹や藁等で作った盆小屋という小屋に神酒等を供えて、読経後にその盆小屋を焼き払い、牛打ち坊を退治するという祭です。
盆小屋の中に牛打ち坊を封じ込めたとする流れとなっており、その封じ込めた牛打ち坊を盆小屋とともに焼き払って退治し、家畜を守るのです。
盆小屋作りとその言い伝えについて
盆小屋を建てるためには、材料や資金が必要です。
村の少年達が、その材料や資金を集めるために村の家々を回って寄付を集めます。
寄付を行わない家に対しては、罰のようなものが与えられるといいます。
悪口に相当する呪文のようなものを唱えられ、さらに、その家の牛小屋や厩に、盆小屋を焼き払った際の焼き草を投げ込まれてしまうのです。
そればかりではありません。
盆小屋を焼き払う際に茄子が一緒に焼かれ、その茄子をも投げ込まれるのです。
盆小屋を建てて焼くと、牛打ち坊を焼き払うことができ、災いから逃れられるのですが、
盆小屋を焼き払った際の焼き草や、焼いた茄子が牛小屋や厩に投げ込まれると、投げ込まれた家の牛や馬は3日以内に死んでしまうという言い伝えがありました。
盆小屋を建てるための寄付を行わないと、祭の焼き草や茄子が投げ込まれ、家畜が死んでしまうのです。
このことを村の人々はたいへん恐れていたため、寄付を行わない家はなかったといいます。
妖怪「牛打ち坊」
徳島県北部に出没し、家畜に害を与えて村の人々を恐れさせた妖怪「牛打ち坊」。
捕獲しようと試みた人々もいましたが、それは叶わなかったようです。
牛打ち坊を退治するために使用する盆小屋に対する寄付についてですが、
その出し惜しみをすることで災難が訪れる、という言い伝えがなんとも恐ろしいものであると感じます。
村の行事に協力しないものには罰が下るということなのでしょうが、そのこと自体に対して何かしら得体の知れない恐怖を感じてしまいます。
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