陸軍高射砲兵隊の訓練兵だった父をはじめ、大勢の人達が聞かせてくれた戦中談。
その中でも国内の話をまとめた拙作のさらなる続編です。
今回は空襲下の話をメインに挙げてみました。
頭上のドックファイト・その1
空襲の話になると、父はよく神妙な顔で言ったものです。
「命のやり取りは何度も見たな。機銃の撃ち合いを」
B29による夜間空襲。それに対する防空部隊。
敵機の編隊へ突進する姿は、まさしく「空を駆け上がる」大変な急角度上昇だったのが印象に残っているそうです。
「おそらくは雷電やないかな。あのエンジン出力は零戦ちゃうやろ」
そしてB29の腹部銃座と局地戦闘機、撃ち合う様がはっきり見えたのだとか。
頭上のドッグファイト・その2
戦時中、遊園地や動物園などの施設は軍に使われていました。
当然、一般人は出入りできなくなります。
逆に末端の兵士でも、軍にいた父は出入りすることができました。
頭上には通行人を無差別に銃撃していたグラマンがやって来るおそれもありますが、日本側にも迎撃するだけの力が残っています。
昼日中の誰もいない遊園地。丘の上で寝転ぶ父の頭上で、戦闘機が空中戦を始めたのだとか。
戦時下の女
最近知り合った高齢女性から聞いた話。
その方は戦時中、看護婦として大阪にある公営の大病院に勤めていました。
その病院には、防空壕として機能していた地下室も設けられていたのです。
空襲の最中、地下室の窓から外を覗くと、見えるのは燃え盛る大阪の街。
あまりのことに、その様子は一種幻想的なものに感じられたのだそうです。
また病棟内には、梅毒を患う女性達を専門にした区画も設けられていたとの話を聞かせてくれました。
梅毒と結核、猛威を振るったこの2つに関して、当時の世代は知識を徹底的に叩き込まれたとの話は常々よく聞く処です。
密殺牛
正確には戦後のことですが、父から聞いた話。
当時は日々の食料を得るのには、所謂『闇市』の密売品に頼らざるを得ません。
それらの品は入手経路も分からず、まして品質管理なぞできているわけが無いのです。
ある日、父の友人が牛肉を手に入れ、久しぶりのスキ焼きという御馳走にありつきました。
ところが真夜中になると、父は激しい頭痛で目が覚めました。部屋の明かりを点けても暗いまま。眼が見えなくなっているのです。
そこで脳裏に、医大生である友人から常日頃気を付ける様に教え込まれていた話が浮かびました。
「プトマイン中毒だ」
正しい知識を得ていたお蔭で落ち着いた対処ができ、誰も大事に至らなかったのだとか。
戦中談、今後も仕入れられるかもしれません。またの機会に……。
※画像はイメージです。
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