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戦中体験者からのちょっとした話・その6 ~前線編その2~

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私が物心ついた頃から、周囲の大人達は戦時中の話を聞かせてきました。
戦争の記憶は体験者本人だけでなく、聞かされる側にとっても鮮烈なものとなりました。

何かしらの意図も無く、ただただ「戦争があり自分はそこで過ごした」という事実を並べただけの話。
しかし今になって思い返すと、語った本人も意図しなかっただろう様々な物が感じられるのです。

~前線編 その2~

以前お話しした、前線で過ごした兵士達の話、続編です。
いずれも父が歳上の友人達から聞いた話です。

目次

南方の人斬り

南方のジャングルで米軍と戦った話。

その人は分隊を率いてジャングルに隠れ潜みながら、米軍へ夜襲を繰り返していました。
野営地に忍び寄って寝込を襲うのですが、それには当然、歩哨達を音も無く殺してしまう必要があります。

そこで使われたのは日本刀。その人は剣道5段なのです。
しかも、後ろから襲うのは武士道に反するとしていました。

まず、ジャングルの空き地に張られたテントを見つけて、忍び寄ります。
そして周囲を歩き回っている歩哨に近付き、肩をつついて呼び止めるのです。
驚いた歩哨が銃口を向けてくるタイミングに合わせて、白刃一閃。
後は部下に合図して、テントにダイナマイトを仕掛けさせ皆殺し。

曰く、「拳銃の銃身なら日本刀で断ち落とす事が出来る」のだとか。

鹵獲品の検査

日中戦争での話。

交戦の末、中国軍の武器を大量に分捕る事が出来、士官は自らそれらを検査していました。

作業は順調に進んでいましたが、手榴弾の1つを拾い上げると、急に手の中で爆発しました。
士官は両手両足が千切れてしまったのです。
部下達は慌てて士官の身体を樽に入れて運び出し、ボートで揚子江を下りながら野戦病院へ搬送しましたが、助ける事は出来ませんでした。

キスカ島みたいなわけにいかない

南方にある島の守備隊にいた人の話。

米軍の攻撃は熾烈を極め、食い止めきれなくなって 来ました。
とうとう撤退作戦が命じられ、ある夜、浜辺に大量のボートが送り込まれたのです。

「怪我や病気の者は置いていけ。動ける者だけ、今すぐ身体一つででも浜へ集まれ」

島の状況や命令内容からして、ガダルカナル撤退の「ケ号作戦」かも知れません。

精鋭、英雄、その後

空挺兵からの話。

敵の頭上に突入する際、パラシュートはかなりのスピードで落下していきます。
そのため空挺兵の訓練とは、地面に組んだ矢倉に登って、地面へ飛び降り着地の際に転がって衝撃を逃がす訓練を延々繰り返すものでした。

さらに、その技術を高めるため、飛び降りる高さはどんどん高く設定されるのです。
訓練の最終段階になると、10m近い高さから飛び降りさせられたそうです。

それほどまでに過酷な訓練を切り抜けた空挺兵達は、パレンパン油田を奪取する大戦果を挙げました。
その後、除隊し内地で普通の生活に戻った人達もいましたが――。過酷な訓練が日常となると、やはり身体に歪が出るのかも知れません。

内地で静かに暮らし始めると、途端に不調を起こし 命を落とした元隊員が少なからずいたそうです。

ほらほら撃ってみろ

関東軍兵士で、ソ連との国境警備に就いていた人の話。

ソ連との国境線には小屋が立ち並び、極寒の中、見張りが続いていました。
そんな中、夜になると 狼の群れが現れ、兵士達に寄ってきたそうです。

狼達はとても賢く、兵士達が銃を持っているだけで、撃つ事が出来ないと見抜いていました。
そうなると最早、人間なぞ、からかって遊ぶ対象に過ぎません。

狼達は、悠然と兵士達のすぐそばを歩き回りました。兵士を取り囲んで、ぐるぐる走り回ったりもします。
挙げ句の果てには、見張り小屋の屋根に飛び乗って遊び始める事までありました。彼らは大きな身体で、造作なく屋根に乗る事が出来たそうです。

もし襲い掛かられたとしたら? 銃剣だけで戦うしかありません。命の危険を感じたからと言って、その場所で銃声を響かせたら、ソ連との全面戦争になりかねないのです。

 

MK
昭和40年代生まれ。戦争体験者にはとことん縁の深い人生を送る。
遠縁の親戚はインパール帰還兵
小学4年生時の担任は高射砲設営をさせられていた中学生
小学校の同級生の父親は隼鷹乗員
ある日たまたま乗ったタクシーの運転手の父親は潜水艦艦長……などなど、運命すら感じる今日この頃。
※画像はイメージです。

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