2017年12月25日、世界中がクリスマス一色になっているであろう頃、常夏のシンガポールは気温が30℃を超え蒸し暑さでクリスマスどころではありませんでした。
「暑い~!」と荷物と水を抱えて向かった先はFORMER FORD FACTORY(旧フォード工場)。ここは「マレーの虎」と呼ばれた山下奉文大将がイギリスのパーシバル中将に「YESかNOか!」と質問したことで有名な場所です。
日本人として、シンガポール占領の真実を知りたいと思って訪れました。
受付のおじいさんの悲しそうな目
受付に着くと、感じのいい中国系シンガポール人のおじいさんが “Hi!Welcome to our museum.Are you Singaporean?” と声をかけてくれました。
私は “No,We are foreigners.I’m Japanese and he is Thai.” と答えると、おじいさんは私の目を静かに見つめて”Japanese…”と言いました。
このことから、この博物館で出会う事実の数々は私が今まで勉強してきたこととは遥かに想像を超える悲惨なものなのだろうと感じました。
その後おじいさんはこの場所からシンガポールが日本に占領された歴史が始まったこと、この場所の近くに昭南忠霊塔があったこと、近くの鉄橋は線路跡でクアラルンプールまで続いていたことを教えてくれました。
時折おじいさんは主人の肩をポンと叩き、”Are you Thai??”と聞いていたので、同じく日本が侵攻した地の出身ということで親近感を持ったのかなと感じました。
この部屋から日本の占領が始まった
私たちは、全体的に明度が落とされ、シンガポールにじりじり忍び寄る日本軍の脅威を感じるような部屋で当時の写真や映像、手紙などの資料を見ました。戦争が激化していく中で、人々の心もどんどん追い詰められていくような恐怖を感じながら次の部屋に移ると、突然こじんまりした明るい雰囲気の部屋が現れました。
この部屋こそが、山下奉文大将がパーシバル中将に「YESかNOか」と質問した部屋です。私が想像していたよりも随分小さな部屋で、白を基調にした綺麗な部屋でした。
部屋には当時の座席がそのまま置かれ、後ろに当時の会談の映像が繰り返し映し出されていました。
実際はいろいろな軍人や報道関係者もいたと思うので、私が見た静かな明るい部屋とは雰囲気が違ったかもしれません。しかし、私の目にはとても整頓されて明るい部屋が映り、「こんな綺麗な部屋で歴史が大きく動いたんだ」ということが心にずしんと響きました。
戦争は繰り返しますか?
その後の部屋では、日本に占領されてからの恐怖の時代についての展示が続きました。驚くほどの物価の高騰、反日勢力への暴力、市民への抑圧…日本人として、読み進めることが辛くなる展示ばかりでした。しかし、これはシンガポール人が実際にされたことですし、彼らの目に映った事実です。辛い歴史ですが、アジアの一員として、日本人として生まれたことを胸に、しっかりと展示を見てきました。
最後のコーナーに、戦後のアジア情勢についての言葉もありました。「未だに世界では戦争が起こっていて、アジアにも核保有国がある。あなたは戦争を繰り返しますか?」
私はこの言葉の意味は本当に重いと感じました。長い間別の国に占領され続けたシンガポールだからこそ、戦争の本当の恐怖や自由の尊さを知っているのではないかと思いました。
シンガポールは今では経済大国になり、美しい景色やアクティビティを楽しめる国になっています。しかし、もし可能なら、ぜひこの旧フォード工場も訪れてほしい場所だと思いました。
中学生の頃から戦史の勉強を始め、今ではタイ出身の主人とアジアの戦跡や戦争博物館を訪れてさらに戦史を勉強しています。
戦史の勉強、語学学習(英語、タイ語、中国語、台湾華語)、ダンスが大好きな20代主婦です。
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