つくば市には「溶解人間」という都市伝説があり、ネットなどで時々話題になります。
その本質は、ありえない存在を創作したというよりも、あるかもしれないと思えてしまうのです。
それは舞台が一貫して「筑波」であるという点だからなのです。
「溶解人間」について考察します。
学園都市つくばと科学
筑波研究学園都市は、国の主導により1960年代から整備された日本最大級の学術都市であり、理化学研究所、産業技術総合研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など300以上の研究機関が集中しています。
ここでは高度な研究が日々行われているので、「市民には知り得ない極秘プロジェクトが存在していてもおかしくない」とするイメージが醸成されやすい土壌があります。
2000年代初頭、科学技術が急激に進歩していく一方で、情報公開や倫理的議論は追いついていなかった時代に、ヒトゲノム解読、ES細胞の誕生、そして後年のゲノム編集技術(CRISPR)が登場します。
科学が「人間を改変できる可能性」を現実にし始め、学園都市には遺伝子工学実験棟やバイオリソースセンターと、それを連想させる施設があるのです。
表向きには発表出来ない実験として、「遺伝子を改良された人体生成に関する研究」がこの学園都市内で行われているのではないかという噂が広がったとしても、誰も嘘とは言い切れなかったでしょう。
溶解人間の噂
研究施設の近くに広がる森には「幽霊が出る」という噂があり、肝試しに訪れた学園都市の生徒たちが目撃したのは幽霊ではなく「溶解人間」でした。
遺伝子操作によって生み出された強化人間の失敗作、皮膚がドロドロに溶けた姿をしている事から「溶解人間」と呼ばれ、生命維持には月光浴が必要であり、満月の夜になると森で月の光を浴びているというのです。
なぜ彼らがこの森に存在しているのかについては諸説あり、「実験材料として活かしておくため、ひと目のつかない森に放たれる」や「研究施設から逃げ出した個体である」という説もありますが定かではありません。
そしてこの森は「ミュータントの森」と呼ばれていたというのです。
溶解人間を都市伝説を紐解く
都市伝説のロケーションであるつくば学園都市、研究施設が一箇所に集まって陰鬱なムードが漂う町だとおもっていました。実際に訪れてみると、施設の建物は市内のあちこちに点在しており、どこも広々として緑豊かで、爽やかでオープンな雰囲気が漂っています。
ですが、時折目にする巨大なレーダーやロケット、変わった形の建物などが人々の想像力をかき立て、漠然とした疑念や不安感が生まれ、次第に邪推や憶測を呼び起こし、様々な噂へと発展していったのではないかと考えられます。
「溶解人間」というネーミングが、おそらく怪談やホラー映画の影響を受けた表現とすれば、記憶の中の映画のワンシーンとそういったモノたちがシンクロし、生まれた怪異ではないでしょうか?
「溶解人間」は、まさに科学と人間の境界が溶けていく不安のメタファーとも言えるのかもしれません。
※画像はイメージです。


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