世界が驚いた巡洋艦「夕張」

巡洋艦「夕張」は世界を驚かせました。
それはなにか?巡洋艦「夕張」について考察していきます。

世界が驚いたのは零戦だけではない

零戦が当時の世界の戦闘機の中で、最高の性能を有していたことは有名です。
しかし海軍の艦艇でも同様に、世界の海軍関係者をその性能で驚かせたのが軽巡洋艦「夕張」でした。

世界を驚嘆させたその性能とは、排水量3千トン級の船体に、5千トン級巡洋艦並みの兵装が装備されたことでした。
例えば14cm主砲は3千トン級では4門ですが、夕張は5千トン級とほぼ同等の6門装備でした。

それは、軍縮会議による艦艇保有制約の中、火力性能を落とさずに排水トンを減らし、また同時に建造費も抑えることができるために、米国に比べ国力の劣る帝国海軍が生み出した画期的軽巡洋艦でした。

以後火力向上の手段として他の等級の軍艦にも、大型火器を小さな船体の搭載するこの手法が取り入れられました。

Naval History & Heritage Command, Public domain, via Wikimedia Commons

独自工夫と致命的欠点

大型火器兵装を小さな船体に載せるのはつまり船体の軽量化です。
そのため船体強度の不足が懸念されて、この手法を取り入れた艦艇には船首から船尾への縦隔壁が設置されました。

隔壁は通常は船体を輪切りにする状態で設置されています。
それに加え船体を縦半分に区分けする形に縦隔壁が増設されたわけです。
船体内部の隔壁を縦横に増設することで、船体強度を増そうとしたのです。

船体隔壁は、沈没を避けるために、船腹からの浸水を一部の各壁内でとどめる目的で設置されます。
船体を輪切り状にした隔壁なら、浸水した水は舷側の左右どちらかに偏ることがないので、船体は吃水が深くなるだけで左右のバランスが良いため、船体の傾きが元に戻る復元力が強くなります。
しかしここに縦隔壁を設置すると、浸水した水が左右どちらかにだけ溜まり、左右バランスが悪くなって復元力が悪くなるのです。

この欠点は戦場で顕著に表れてしまいました。
例えば重巡洋艦で見れば、全沈没数18隻中、横転沈没は7隻で沈没状況の最大件数になっています。

攻撃力最優先

零戦の優秀性は飛び抜けた航続距離と運動性能にありました。
それは機体の軽量化によって獲得したもので、そのために搭乗員や燃料タンクを守る防弾装備を極力削りました。

つまり最大の攻撃力を持たせるために防御力を犠牲にしたのです。
示し合わせたわけではないでしょうが、軽巡・夕張の設計が同じような思想が基になっているのは、帝国海軍の性質の一端を見たような気がします。

歴史大好きじいさんです。
世界最高を求めるために何かが犠牲になりました。

eyecatch source:Naval History & Heritage Command, Public domain, via Wikimedia Commons

参照:【科学で検証】太平洋戦争中 日本の軍艦が次々と沈没していったワケ 播田安博 著

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