昨今の創作物において「ゾンビ」は便利に使われる存在である。
そこまで無茶に強い訳ではないので、状況がゆっくり進む。感染性を持っている事が多いため、倒しておしまい・・・とはなりにくく、ねずみ算式に増やせる為、アポカリプス世界にもしやすい。
血が腐っているので赤くなくても良い。
二次創作指摘は無粋だからこそ面白い
さて、この感染性という部分は吸血鬼との混同で、一個人の発明に過ぎない。
ゾンビの語源は、ブードゥー教が元であって、目的は使役以上に魂を不当に留める処刑法としての意味合いが強い。このゾンビは基本的に術者のコントロール下にあるし、増殖機能はない。
性質で言うならば、フランケンシュタインの怪物の方が近い。
吸血鬼的増殖方式を導入したのが、映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』であり、言ってみれば二次創作設定と言える。
軍隊さんはゾンビを使いたい?
現実の都市伝説において、ゾンビは軍事と絡めて取り扱われやすいモチーフである。
ナチスドイツのラスト・バタリオンを、一種のゾンビによる「不死の兵士」の集団としたのは漫画『ヘルシング』であった。
「死なない兵隊」の研究は、創作と都市伝説が入り乱れ随所に存在する。
ゾンビを利用するパターンもある、人造人間、つまりロボットの研究の場合もある。鉄人28号もその類だ。戦場で使用される覚醒剤も本質的には同じと言える。
さて、このような吸血鬼的ゾンビを、軍隊が開発する事はあり得るだろうか。
まずゾンビ物に出る「制御不能に増殖するゾンビ」は、基本的に失敗例なので考えない。
だとすると、比較的容易に感染させる事は出来るが理性は保ち、怪我や致命傷に対して怯む事がないゾンビ兵士、というものが考えられる。
これが出来れば、軍隊は無敵の力を得るだろうか?
答えは否だろう。
「死んでも良い」と「死なないから良い」
大前提として、軍隊は「死なない兵士」など求めてはいない。
それよりも「命令で死ぬ兵士」を求めているのだ。
死なない事を目指すのは、「命令で死ぬ兵士」、を繰り返し使えるからに他ならない。
軍隊の統制に、上官への畏怖は不可欠だ。その畏怖は体罰に裏付けられている。だがゾンビ兵に痛みによる罰は効かない。
僅かでも命令と異なるものに欲求があれば、そちらに注意が向いてしまう。そうなった時に止める方法は物理破壊しかない。
それよりは、命令に従順である事の方がずっと重要だ。
会社でも。能力があるが反抗的な社員より、能力はそこそこでも素直に言う事を聞く社員の方が、チームとしてずっと役に立つ。こう考えれば、軍主導でゾンビを開発する理由がない。
では、誰が開発するのだろうか?
ゾンビも人なり
これは医学でしかなかろう。
医療の世界もQOLの概念は導入されてはいるが、結局病気を治して死なせない事の比重は未だに大きい。
ゾンビになる事は死と考えるかも知れないが、脳死の臓器移植の例からも、生死の基準は所詮法律の中で定義されたものに過ぎない。
であれば、とりあえず生きているっぽくなるゾンビウイルスを導入するのは、医者としては当たり前である。
無論、ゾンビ化したら後は腐るだけだ。未来ある者に使うものではない。
だが、終末期医療ならどうだろう。終末期は治療して治すというより、苦痛軽減が重要になっていく。
余命3ヶ月の寝たきりの人が、ゾンビウイルスで元気な6ヶ月になるなら、躊躇いなく使われるだろう。
寝たきりになって管だらけのまま死ぬ事を望まれつつ生きるより、最後にゾンビになってパッとパーティーでもしてから死ぬ。
そんな世界になったとして、ゾンビは一体どのように描写されていくのだろうか。
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