2003年5月20日の大阪府泉南郡熊取町。
小学4年生(当時9歳)の吉川友梨ちゃんは、いつものように学校から帰宅するはずでした。
失踪した少女
午後3時過ぎ、友達と別れて一人で帰路についた彼女を、同級生の男児が目撃したのが最後。そして17時になっても帰宅せず、19時を過ぎたころに両親が警察に通報しました。
友梨ちゃんは白いブラウスに紺のスカート、黄色いランドセルを身に着けており、自宅からわずか400メートルほどの地点で姿を消したのです。
警察は当初、家出の可能性を視野に入れて捜索を開始しましたが、翌朝には誘拐の疑いが濃厚と判断。付近の住民への聞き込みや現場検証、車両の洗い出しも成果にはつながりませんでした。
大阪府警は公開捜査に踏み切り、ポスターやビラ配布を通じて情報提供を呼びかけ、メディアでも大きく報道され、全国的に注目される事件となりましたが、失踪から数年が経過しても有力な情報は見つからなかったのです。
まるで、神隠しのように突然に失踪したのでした。
浮上した“白いクラウン”の謎
白いクラウンに乗った男と女の子の目撃証言は、事件当初から複数寄せられていましたが、事件から約10年が経過した2013年、再び注目を集めることになります。
とくに同乗していた女の子の服装が、失踪当時の友梨ちゃんと一致していたとの証言があったため、この情報は重要視されました。目撃された男は「目が吊り上がった細面の顔立ち」とされ、同様の白いクラウンが他の地点でも目撃されていたことから、大阪府警も有力情報として捜査対象に据えました。
しかし、これらの目撃情報から決定的な手がかりが得られることはなく、事件は膠着したままです。
それにしても、なぜこれほど重要な証言が10年もの歳月を経て再浮上したのでしょうか。考えられるのは、証言者が当初は通報をためらっていたこと、あるいは警察側の情報再検証により信憑性が再評価された可能性です。他の証言との照合のなかで、精査によって価値が見出されたとも考えられます。
もちろん、これはあくまで推測にすぎません。しかし、仮に重要な証言が情報の錯綜のなかで埋もれ、捜査に活かされなかったとするならば、それは警察の限界ではなく、怠慢や判断ミスの積み重ねだったのではないか?
そんな疑念を抱かざるを得ないのです。
詐欺被害という二重の悲劇
この事件には、さらにもう一つの悲劇があったのです。
友梨ちゃんの両親が娘の手がかりを得ようと、ビラ配りなどの懸命の捜索活動を続け、失踪から間もなく15年を迎える中、吉川友梨さんの両親は「娘の居場所を知っている」と語る男女が現れました。
ところが、4年以上かけて約7000万円〜7400万円を詐取されただけ。
詐欺犯は逮捕・起訴され、懲役9年の有罪判決を受けるのですが、吉川さんの誘拐との関与は確認できませんでした。
子どもを奪われた家族の悲しみにさらに追い打ちをかけるような、卑劣な犯行にはらわたが煮えくり返る思いです。
希望は消えていない
事件から20年以上が経過し、吉川友梨ちゃんは成人を迎えている年齢になっているはずです。
未だに確たる手がかりはなく、多くの人が「もう亡くなっているのでは」と考える一方で、長期間監禁されていた被害者が保護された国内外の事例もあり、完全な絶望とは言えないでしょう。
子どもを狙った卑劣な誘拐事件は、どれほど時間が経っても忘れられる事はなく、許されるものではありません。
友梨ちゃんが一日でも早く家族の元へ帰れる日を、心から願っています。
※画像はイメージです。


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