主要国の現用主力戦車10台を考察

近年では正規軍同士の衝突の可能性の低下や、歩兵が携行可能な強力な対戦車兵器の登場などで、その存在自体に些か疑義が突きつけられているのが戦車である。
しかし第一次世界大戦での実用化以来、こうした捉え方の変遷はありつつも、陸上戦力の中核的な存在として、やはりまだ戦車は世界各国で配備・運用が継続されてる。

そうした中、戦場における戦車対戦車の直接対決が数少なくなって久しいため、どれが最強かと言う問いへの答えは、断定はかなり困難だと言わざるを得ない。
そこで今回は2021年2月現在の各国の戦車を10台ほど抽出して、寸法、兵装、などのスペックを中心に比較して見たいと思う。

M1A2エイブラムス

全長9.83メートル、全幅3.66メートル、全高2.37メートル、重量約63トン、最高速度67キロ/h、航続距離426キロ、主砲44口径120mm滑空砲、出力1,500hp、乗員数4名。

アメリカが1992年から配備を行っているシリーズの戦車であり、所謂第3世代戦車として1980年代に登場したM1A1の改良型として主力の座を担う。
前身のM1A1は1991年の湾岸戦争で実戦投入され、イラク軍が保有していた旧ソ連製のT-55・T-62・T-72戦車に対しその有効射程外の3,000メートル以上先からの一方的な砲撃で圧倒した。

その後の2003年のイラク戦争以降も中東地区での数々の戦闘に参加しており、現代の主力戦車の中でもこれらの実戦経験からは最強戦車のひとつである事は先ず間違いない。湾岸戦争などでの損害も大半は味方同士での誤射が原因と言われており、当時の旧ソ連圏の東側陣営の戦車では全く歯が立たなかったことが窺えた。

Military_MaterialによるPixabayからの画像

レオパルド2A7

全長10.93メートル、全幅3.74メートル、全高3.03メートル、重量約67トン、最高速度68キロ/h、航続距離500キロ、主砲55口径120mm滑空砲、出力1,500hp、乗員数4名。

当時の西ドイツが1977年に開発した第3世代戦車であり、レオパルド2A7は2010年以降に改修を受けた車両であり、アメリカのM1A2エイブラムスに匹敵する性能と目されてきた。これは第二次世界大戦時に名を馳せた戦車王国ドイツの伝統から評価を得たものとも言えそうだが、アメリカのM1A2エイブラムスに比べれば実戦経験に乏しい事は否めない。

それでもレオパルド2のシリーズは本国ドイツ以下、オーストリア・オランダ・スイス・ギリシャ・スペインなどヨーロッパ諸国を中心に世界16ヶ国で採用されている。

Boevaya mashina, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

ルクレール

全長9.87メートル、全幅3.71メートル、全高2.92メートル、重量約57トン、最高速度72キロ/h、航続距離550キロ、主砲52口径120mm滑空砲、出力1,500hp、乗員数3名。

フランス及びアラブ首長国連邦で正式採用されているのがフランスの第3世代以降に相当するルクレールであり、M1A2エイブラムスやレオパルド2A7と異なり自動装填のため乗員が1名少ない。
ルクレールは優れたレーダー測距儀や暗視装置を備えており、その射撃管制能力の水準がもたらす攻撃力はアメリカのM1A2エイブラムスにも引けを取らないとも評されている。

因みにドイツとフランスは次世代戦車の共同開発を行っており、互いに1国での主力戦車としてはレオパルド2A7・ルクレールが見納めになるだろうと考えられる。

Daniel Steger (Lausanne,Switzerland), CC BY-SA 2.5, ウィキメディア・コモンズ経由で

チャレンジャー2

全長11.55メートル、全幅3.52メートル、全高3.04メートル、重量約63トン、最高速度59キロ/h、航続距離450キロ、主砲55口径120mmライフル砲、出力1,200hp、乗員数4名。

1994年からイギリスが配備を開始した第3世代主力戦車がチャレンジャー2であり、ボスニア紛争・コソボ紛争・イラク戦争などイギリス軍の派遣先で実戦にも数多く投入された。
アメリカのM1A2エイブラムス、ドイツのレオパルド2A7、フランスのルクレールなど西側の主力戦車が砲身長に差はあれど軒並み120mm滑空砲を搭載する中、希有なライフル砲を採用している。

Andrew Skudder, CC BY-SA 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

T-90A

全長9.53メートル、全幅3.78メートル、全高2.23メートル、重量約47トン、最高速度65キロ/h、航続距離375キロ、主砲55口径125滑空砲、出力1,000hp、乗員数3名。

第二次世界大戦時にはドイツと並ぶ戦車大国として君臨してきた旧ソ連だが、この流れを組むのがロシアのT-72をベースにした輸出仕様のT-90A戦車と言えよう。
T-90Aは1両あたり約1.5億円相当と非常に安価に設定された第三国向けのコストパフォーマンス追求型の車両であり、アゼルバイジャン・トルクメニスタン・シリア・アルジェリアなどが採用している。

Mike1979 Russia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

T-14アルマータ

全長10.80メートル、全幅3.50メートル、全高3.30メートル、重量約55トン、最高速度80キロ/h、航続距離550キロ、主砲55口径125滑空砲、出力1,500hp以上、乗員数3名。

2020年からの配備が見込まれているロシア軍の第4世代戦車がT-14アルマータであり、速度や出力などのスペック上からは従来の第3世代戦車よりワンランク上の性能が窺えるものと言える。
T-14アルマータの特徴は砲塔部分に搭乗者が配置されていない無人砲塔設計にあり、後述のイスラエルのメルカバMK.4とは別のアプローチで搭乗員の生存率の向上を図っている。

但しこの配置は従来の戦車が砲塔部分に搭乗した戦車長が肉眼を駆使して行っていた敵の視認を、全てモニター上や赤外線センサーで行う事を意味し実用に耐えられるものか疑問視する声もある。

Dmitriy Fomin from Moscow, Russia, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

メルカバMK.4

全長9.04メートル、全幅3.72メートル、全高2.70メートル、重量約65トン、最高速度64キロ/h、航続距離500キロ、主砲44口径120mm滑空砲、出力1,500hp、乗員数4名。

イスラエルが2004年に配備を開始した主力戦車がメルカバシリーズの最新型MK.4であり、全長に比して幅広で小振りではあるものの重量からは重装甲が窺える仕様となっている。
第一次から第四次までの中東戦争を周囲を囲むアラブ系の国々と戦って国を守ってきた人口の少ない小国イスラエルだけに、搭乗員の生存を優先した造りが特徴の戦車である。

メルカバMK.4はエンジンを敢えて車体の前部に搭載し、敵からの攻撃によってそれが破壊され車両自体が停止しても搭乗員の生存率を高める盾となるように設計が施されている。
決して人道的な人命尊重では無く、戦力低下を懸念し搭乗員の損耗を防ごうとするリアリズムからは、イスラエルならではの戦略思想が垣間見える。

IDF Spokesperson Unit, modification by User:MathKnight, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

K2ブラックパンサー

全長10.0メートル、全幅3.60メートル、全高2.50メートル、重量約55トン、最高速度70キロ/h、航続距離430キロ、主砲55口径120mm滑空砲、出力1,500hp、乗員数3名。

2014年に配備が開始されており、所謂3.5世代相当の実力と評されているのが韓国のK2ブラックパンサー戦車だ。
機関部と変速機にトラブルが多発し、当初予定されていた2011年より3年遅延しての配備となったが、現在でもこれを換装する為の国産化を進めている状態である。

Simta, CC BY-SA 3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

10式戦車

全長9.42メートル、全幅3.24メートル、全高2.30メートル、重量44トン、最高速度70キロ/h、航続距離–キロ、主砲44口径120mm滑空砲、出力1,200hp、乗員数3名。

日本の陸上自衛隊が2011年から配備する3.5世代戦車が10式戦車であり、今回取り上げた10種類の世界の戦車中でも最小・最軽量であることが一目瞭然である。
実際前級である90式戦車よりもサイズ・重量共に小型化されており、これは日本における戦車の展開が旧ソ連・現ロシアの北海道侵攻を念頭に置いていたことに起因している。

従来この北からの脅威に対抗する為に総重量で50トンを超過する10式戦車を採用していたが、これは他の日本国内での運用は困難であり、ロシアの北海道上陸の可能性の低下から見直されたものだ。
現在の10式戦車の仕様であれば日本の約8割に該当する橋や道路を移動する事が可能といわれており、時代に即したダウンサイジングを実施したものと見て良いだろう。

VT-4

全長10.1メートル、全幅3.50メートル、全高2.40メートル、重量52トン、最高速度70キロ/h、航続距離500キロ、主砲125mm滑空砲、出力1,300hp、乗員数3名。

VT-4戦車は中国とパキスタンとで共同開発された戦車MBT2000を原型として、同戦車がパキスタン以下、ミャンマー・バングラデシュ・モロッコへの輸出に成功したことから生み出された。
2011年前後に試作車両が完成したVT-4は、2016年に量産化が始められ、これまでにタイが採用、またパキスタンもライセンス生産を実施するなど中国の目論見通りの展開が図られている。

こうした展開はロシアのT-90A戦車と似たものとも言え、中国自体は主力戦車として第3世代相当の99式戦車を配備し、最新型の99式A型は韓国のK2や日本の10式の登場以前にはアジア最強とも謳われた。

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