ゲーム実況を眺めていたところ、赤い月の夜に怪物の襲来が激しい、といった描写があった。
確か、テラリアでも、ゼルダの伝説でもあったし、何となく「それらしい描写」だと感じはしているのだが、よく考えると具体的な出典を認識していない。
何かしら、オカルトや都市伝説に元ネタのが存在する現象なのだろうか。
月は赤くなる
月が赤くなる事自体は、実在する自然現象である。
1つは月食時に見えるもので、月が地球の影で覆われる時、屈折した赤い光が影に入る事で赤くなって見える。
「ブラッドムーン」と呼ばれる現象だ。
もう1つは、月食は関係なく、月が地平線に近い時に、赤く見える。
日が傾いている時は、光が地球に斜めに入って来る。
このルートは真上から直角に光が入るよりも、ずっと距離が長くなる。
青い光は空気の分子で散らされる性質があるため、それ以外色の光が届く。
残る色は、光の三原色で言えば赤と黄色であり、それが合わさる事で赤やオレンジの色味の月になる。
このメカニズムは月に限った事ではなく、夕日が赤く見えるのも同じ理屈である。
これが何らかの災害と結び付いているなら不吉、不幸も分かるが、周知の通りただの天体現象で、科学的には何も起こらない。
なのに何故、この現象を不吉と感じるのだろうか。
聖書の赤い月

新約聖書「ヨハネの黙示録」第6章に、丁度良く当てはまる描写がある。
第6章は子羊(キリスト)が「7つの封印」を解く場面が描かれるが、その中に
「小羊が第六の封印を解いた時、わたしが見ていると、大地震が起って、太陽は毛織の荒布のように黒くなり、月は全面、血のようになり」
「天の星は、いちじくのまだ青い実が大風に揺られて振り落されるように、地に落ちた」
という2節が存在する。
「月が全面血のようになった」というのは、色で言うならもちろん赤である。
その前に、太陽が黒くなっている事と並べられている事から、日常的な赤い月ではなく、日食と対になる月食のブラッドムーンを意味している可能性が高い。
この7つの封印を解くという場面は、キリストが積極的に動いている事からも分かる通り、彼が十字架にかけられる前、恐らくは実際に起きたエピソードが元になった記述と考えられる。
未来に関する記述は、その後に発生する「七人の天使」による、ラッパでもたらされる破壊の部分と解釈するのが自然だ。
つまり黙示録の記述は、大地震が起きた頃に日食や月食があり、赤い月が観察されたという事だ。
日食や月食、赤い月は地震のとばっちりだが、ともかく不吉なものとベストセラー書籍に描写された。
それ故に、キリスト教圏では赤い月に不吉のイメージが強固に結び付き、創作などでも繰り返し使われ、日本人の自分の感覚にも刷り込まれた、というのが1つの結論になりそうだ。
聖書以外の赤い月
他の神話で、赤い月のイメージはあるだろうか。
南米に存在したインカの神話では、月食をジャガーによる攻撃と結びつけられているようだ。
これだけだとかなり突飛な話に見えるが、中南米の幾つかの地域において、ジャガーは神格化されていた。そして、他宗教にしばしば見られるように、月も神格化され「ママ・キリャ」という女神が当てはめられていた。
彼女は結婚と月経を司る女性の守護者であるとされる。
従って、月の赤さは、ジャガーに害され血を流す女神という構図が成り立つし、経血や破瓜の血とも結び付きやすい。
ネイティブアメリカンのフーパ族の伝承では、月の神が飼っている猛獣たちが、月食時に餌の不足を理由に主人を攻撃するという。
流れた血を、月の神の20人の妻が回収し、月を修復する事で、月食が終わるという。
これらもキリスト教同様、月食における赤い月のイメージから始まっているようで、赤さよりも月食が主な要素であるようだ。
結果でしかない赤い月

お気づきだろうか。
これらの神話は、赤い理由は描写しているが、いずれも結果であって、赤い月そのものが何かをなす、と語ってはいない。
赤い月から、マイクロウェーブでエネルギーが送信され、X型のアンテナでそれを受けた人型兵器が大量破壊をもたらすとか、何かそういう直接的な話ではないのだ。
これは何故か、と言えば、月が比較的静かな神格を当てはめられやすいからだろう。
太陽のように肌を焼くエネルギー感がなく、地表の天変地異ほどの暴力性もない。
「月は出ているか」と何となく見上げると、月はそこにいる、という以上のものではない。
創作における赤い月描写も、これを比較的踏襲している。
月は、あくまで舞台装置に収まっている。
漫画『デビルマン』でシレーヌが「月を返り血で汚す」といった表現をしているが、やはり受け身の存在である。
赤い月を見かけたら
オカルトが実在する世界として考えよう。
赤い月に何かしらオカルトパワーがあるとして、気にする必要はあるのだろうか。
警戒は必要、と考えるのが自然だろう。
赤い月があなたの流血を意味しないとしても、月に関わる存在の負担やダメージを顕している可能性がある。
あなたがもし、彼らに守護されたり、力を受け取ったりしている自覚があるなら、あなたの総合的な力は弱まっている事になる。
こういった時には、無茶はせず、十分な休息と栄養をとり、場合によっては気分転換で心の安定も図り、来たるべき問題に対処出来る力を付けておくと良いだろう。
そんな暇はない、という場合も、無理してでも休むべきだ。
その多忙な状況で今までやってこれたのは、あなたを守護する月のお陰である可能性が高い。それが弱まっているのだ、最後の一押しは近い。
全てが自分の努力と根性で成り立っていると考えるのは、オカルト的には不遜であるし、科学として考えても安全マージン不足だろう。
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