妖怪界一の癒し系マスコットと聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?
頭に浮かぶ妖怪は千差万別でしょうが、夜の峠道に化けて出て旅人を翻弄するすねこすりは、その見た目と性質も相俟って、チャーミングな妖怪の筆頭ですね。
今回はそんなすねこすりの逸話や正体に迫っていきます。
すねこすりは無害な妖怪?犬派と猫派の戦い
すねこすりは岡山県に伝わる妖怪の一種。見た目は小型の犬に似て、雨の降る晩に現れます。その生態は夜道を行く人の足の間を擦りながら通り抜けるというもので、うっかり転ばされることも少なくないとか。
特に目撃談が多いのが岡山県井原市で、同市七日市町の井領堂付近によく化けて出ては、旅人を翻弄したと語り継がれています。「股くぐり」「すねっころがし」とも呼ばれているものの、すねこすりのほうが断然可愛いですね。
なお人間を転倒させる以外に害はなく、妖怪の中では比較的無害で安全な部類に属します。
平成以降すねこすりを目撃した人たちが「猫に似ていた」と口を揃えるのは、水木しげる漫画の影響でしょうね。
それ以前のすねこすりはむしろ犬寄りの見た目をしており、名前と相俟って紛らわしさを覚えます。
水木しげるお気に入りの妖怪
すねこすりは漫画家・水木しげるお気に入りの妖怪でもあり、『ゲゲゲの鬼太郎』他、多数の作品に登場します。
鳥取県境港市・水木しげるロードに設置されたすねこすりのブロンズ像は、ちんまり丸まった姿がなんとも愛くるしく、道行く人々の微笑みを誘っていました。
これは江戸時代の犬の根付けをモデルに描き起こしたもので、水木しげるの描写力の確かさが伝わってきます。
同作者の『悪魔くん』では大胆にデザインが変更され、二頭身に細い手足を携えた、マズルの尖った魔獣として表現されます。
6期鬼太郎ではよりスコティッシュフォールドに近い見た目となり、マスコット的可愛さが強調されました。
すねこすりの正体は勘違い
さて、すねこすりの正体とは何でしょうか?注目してほしいのは出現条件。すねこすりが現れるのは雨の日の夜と決まっています。
しとしと雨が降る夜道は視界が悪く、タヌキを別の何かに見間違える事も多かったと考えられます。草や布が脚を掠めるくすぐったさを、妖怪の仕業と誤解した可能性も高いでしょうね。
岡山県がタヌキの生息地なのは有名な話で、金長狸伝説が広まっています。珍しいところでは雌雄のタヌキを使役する、狸憑きの家系もあるそうです。
別の説を推すなら静電気の発生も捨て置けません。昼夜の温度差が激しい雨の日は静電気が発生しやすくなる為、脚の毛穴が縮む感覚を、すねこすりの悪戯と間違えたのではないでしょうか。
井領堂付近における報告例が多いのは、坂の傾斜などで方向感覚を失って転びやすい、地理的条件を兼ね備えているからかもしれません。


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