山本五十六が真珠湾奇襲攻撃に固執したのは、米太平洋艦隊殲滅による早期及び有利な戦争終結が目的であった事はよく知られています。
しかしこの作戦にはあるもう一つの大きな目的がありました。
日米海軍戦力の差
開戦前の日米の海軍戦力は、艦艇ベースで見ると日本100万トン、米国138万トンとなります。簡単な内訳は下記の通りです。
戦艦 | 巡洋艦 | 駆逐艦 | 潜水艦 | 空母 | |
日本 | 10 | 38 | 65 | 261 | 10 |
米国 | 17 | 37 | 109 | 350 | 70 |
当時、海戦の勝敗を決するのは艦対艦の砲撃戦であり、従って海軍の主力戦力は戦艦である事が日米双方の海軍首脳部の常識でした。
この観点から日米海軍戦力を比較すると米海軍が圧倒的に有利である事は明白で、米国の国力を熟知している山本五十六は、両者の現状戦力にその国力を加味して考えた時、日本の敗北必至と判断した筈です。
艦船同士の戦いでは勝ち目がないのなら、乾坤一擲、航空戦力による攻撃で勝利を得るしかないと山本五十六は考えたに違いありません。
航空機戦力の実力を証明
航空機戦力を主戦力とした戦争遂行は、日本のみならず世界の全ての海軍であり得ない思考でした。
空母は既に存在しましたが、艦載機の役目は艦隊決戦前の前哨戦で敵艦船に出来るだけ損傷を強いる事で、航空戦力による決戦は期待外でした。
そもそも航空機で軍艦を撃沈する事などは不可能と考えられていました。
日本でも帝国海軍省の中枢である艦政本部は、大和・武蔵の様な超弩級戦艦建造に予算を注ぎ込むべく活動していました。それが海軍の主流だったのです。
そんな状況下、非常識といえる航空機主体の戦争を上層部に認めさせるには結果しかありません。
つまり真珠湾攻撃はこの面からも失敗は許されなかったのです。
真珠湾攻撃の成功率を大幅に上げる為には敵艦隊母港への奇襲攻撃しかありませんでした。
何故なら奇襲でなければ艦隊は外洋へ退避してしまうからです。
重要なのは敵主力の艦船が集まって停泊している事です。
動いていない艦艇への攻撃は訓練と全く同じで、失敗の可能性は極端に低くなります。
かくして真珠湾奇襲作戦は大成功を収め、航空戦力が艦船攻撃に十分以上に有効である事を帝国海軍上層部に対して証明する目的を達成しました。
featured image:National Museum of the U.S. Navy, Public domain, via Wikimedia Commons
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