その部屋、空いてますか?

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20大半ばの頃、雑誌関係の仕事をしたくても、地方にはそういった仕事がありません。
そこで意を決し、就職先も決めずに東京で1人暮らしを始めることにしました。

友人宅に居候してアルバイトをしながらの就職活動をするかたわら、極力家賃が安い家を探したのですが、家賃が5万円前後では都心部から電車で30分以上離れたところばかり。
もし会社が決まっても通勤で苦労する・・・・初っ端から苦戦していました。

目次

お手頃物件

精神的にも金銭的にも限界だと思いはじめた頃、賃貸情報誌で目を疑うような物件を見つけました。
「池袋から1駅」「駅徒歩5分」「築10年」「1R」「家賃5.6万円」

・・・・・条件が良すぎる。

今ならそういう物件には裏があるとわかりますが、当時の私はそうした不動産知識に乏しく、ただ「これは掘り出し物だ」と浮かれてすぐに不動産会社へ電話をかけました。
電話に出た担当者によれば、物件は「現状まだ空いています」とのこと。
ただし、「契約関係の話になるため、一度事務所に来ていただきたい」と言われ不動産屋へ迎いました。

指定された事務所に訪問して話を始めると、担当の方が違う物件を勧めてきます。それも予算をオーバーした物件ばかり。
最初は丁寧に断っていたのですが、だんだんイライラしてしまい、「雑誌に載っていた物件しか契約しない」と声を荒げてしまうと、単相者が渋々と見取り図を出してきます。
そして「ここで良いんですか?」と、できれば借りて欲しくないような雰囲気を醸し出しています。

この部屋はなにかある?

あ、これは何かあると感じ、担当者を問い詰めると。

「この部屋、1年ほど前に住んでいた方が室内で亡くなっていまして」
言いにくそうに、しかしはっきりとそう言いました。

事故物件・・・その単語が頭をよぎりましたが、私には霊感もなければ心霊なんか科学的にいないと思っています。
それ以前に、立地も条件も完璧で、何より家賃が相場より安いのです。

「どうしてもと言うならご案内はできます。ただ、念のため詳細をお伝えしておきます」と担当者は続けます。

その入居者は中年の男性で、生活保護を受けながら暮らしていたそうです。
ある日連絡が取れなくなり、大家と管理会社が部屋を訪ねたところ、ロフトの柱にロープをかけて首を吊っていて、死後数日が経っていたとのことでした。

「なんだ、そんなの気にしないし、問題ない」と契約を進めようとすると、「それだけなら、まだ・・・」と担当者は口を濁します。

次に入居したのは体育系の大学に進学してきたばかりの新入生だったそうです。
若くて明るくて、貴方のように「霊とか全然信じないんで、気にしないです!」と笑っていた。しかし、彼は入居からわずか3週間後に亡くなりました。

発見したのは、連絡が取れないことを心配して訪ねてきたご両親で、死因は睡眠薬の大量摂取と窒息。
ゴミ袋を頭から被っていたそうで・・・正直、その時点でもう「ただの偶然」では済まないような気がする。

本来、そんな事は関係なく契約してしまえば良い事ですし、詳細に説明する義務はないらしいのですが、亡くなった大学生に似ていたことから、契約する事に不安を感じたと担当の方は謝っていました。

とにかく、2〜3日、落ち着いて考えてみて、もしそれでも借りたいと言うならば連絡をくださいと言われ、いったん持ち帰って検討するということで事務所を後にしました。

ねえ?どう思う?

家に戻ってから、私はその物件のことを居候している友人に話しました。
すると、思ったとおりの反応が返ってきました。

「いや、やめとけって。そんなとこに住んだら、絶対誰も遊びに来ないし、就活どころじゃなくなるぞ」

現実的なアドバイスですが、条件の良さに未練があり、霊なんていないし、ただの偶然。
2人死んだ部屋でも、3人目にはなにも起きないかもしれない・・・数日悩んでいたところ、不動産会社から再び電話がかかってきました。

「あの物件、別のお客さまから申込みの希望が出てまして。ただ、最初にお問い合わせいただいたのが〇〇さんなので、先に意思をお伺いできればと思いまして」

私はその時に、ようやく冷静になっていました。
それに、あの物件ほどではないけれど、許容範囲の物件が見つかっていたのもあり、「では、そちらの方を優先してください」と返答し、電話を切りました。

・・・これで終わりだと思っていたんですが・・・・。

担当者からの

それから数日後、なぜか再び不動産屋から電話がありました。

「あの、ちょっと話しにくいんですが・・・」

電話の向こうの担当者は声を潜めるように話します。

「先日ご来店された入居希望者の方なんですが、引っ越し荷物を積んで移動中に事故に遭ってしまって、いま重体なんです。全治4ヶ月とのことで、今回の入居はキャンセルになりまして・・・それで、あの、念の為にご連絡を」

正直、背筋がゾワリとしました。
入居すらしていない、その物件に一歩も入っていないのに「3人目」に何かが起こった。

「いや・・・今回は見送らせていただきます」
私は静かにそう答え、電話を切りました。

あれから

あれから28年。ふと思い立って、その住所をGoogleマップで検索してみました。
あの建物は今も変わらず同じ場所にありましたが、事故物件情報サイトには、その部屋の記録は載っていません。

もう何も起きていないのか・・・それとも、あの部屋だけ、ずっと空き部屋のままなのか。
ストリートビューで見てみると、窓があいていた。

※画像はイメージです

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