私が通っていた小学校に、生徒の中で少し有名な絵画があった。
誰が何のために描いたのかも知らないし、何故あんな絵が田舎の公立小学校にあったかも謎だった。
その絵画は一階の職員室の前にある物置き部屋のようなところにあり、横開きのドアを開けると見えるように立てかけられていた。それはバレリーナの少女が身体の曲線を活かしたバレエポーズをとっている絵だった。
ポーズの名前を調べてみると、おそらくピルエットかグラン・フェッテのどちらかだと思う。
荘厳で立派な金色の額縁に入っていて、縦1メートル弱ほどのサイズ感だったと思う。当時と今では体感も違うので定かではないが、その時の私には大きな絵に感じられた。バレリーナのお腹の辺りが何故か鮮血にまみれていた。
ナイフで切られたような感じだったとおぼろげながら記憶している。
「血のバレリーナの絵を見ると恐ろしいことが起こるんだって」
そのようにして一部の生徒の間で噂になった。私と友達とで「怖いね〜」と身をすくませた。
勿論、そんな迷信は現実には何の作用も及ぼさなかった。少しだけ何かが起こるのか期待している自分がいた。
いつもその部屋の前を通ると、「今日はドアが開いている」「今日はドアが閉まっている」とやたらめったら意識してしまい、オカルトや怖い話が大好きな小学生だった私は授業に対しての集中力をそちらに持って行かれてしまったのだった。
もうその時の友達や先生とは現在一切関わりを持っていないが、あの絵を覚えている人はいるのだろうか。
そして、あの絵はまだあの部屋に残っているのだろうか。
※画像はイメージです。
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