「バリア」は本来は障壁や障害という意味を持つ語であり、欧米では「シールド」や「フォースフィールド」等の呼称が一般的ともされる、何かしらの「力」によって様々な脅威を「防ぐ」機能を意味する語とされます。
19世紀末頃のSF小説にはその概念が既に見られるとされ、日本の子供達は光の国からやって来た某巨人の敵役たる宇宙忍者が見せたそれを擦り込まれたのであろうとも言われる「古典的」なものと考えられます。
しかしエンターテインメント界隈においては「古典的」とされながら、現実においてはまるで実現性の片鱗すら見えないものとなってしまっている。
この「謎」の技術、その現実における存在を阻むものは何なのか?
界隈におけるいくつかの事例を検証しながら迫ってみたいと思います!
「バリア」の基本
「バリア」と呼ばれる存在は今やすっかり「概念」として定着し、その名に限らない様々な技術や装備を送り出しています。その「基本」と言える要素が過去から現在に至るまで受け継がれ、作り上げた「2大巨頭」と言えるのが「光波バリヤー(ウルトラマン)」と「光子力バリヤー(マジンガーZ)」でしょう。
前者は「ウルトラマン」の敵対者にして、奇妙な笑い声と分身の術を始めとする多彩な技でウルトラマンを翻弄し、何度となく立ちはだかった伝説の敵役「バルタン星人」が繰り出した「技」です。
原理などについて詳細が明かされてはいないものの、ウルトラマンの必殺技である「八つ裂き光輪」を一度は完全に防いで見せた「奥の手」と言える正体不明の「光の壁」です。
ウルトラマンの発する強力なエネルギー源である「スペシウム」を高速回転させる事で、巨大怪獣を容易く両断してしまう「八つ裂き光輪」を完全に防いでいる事から、何らかの物質的防御壁であると考えられます。
一方でそれを「張る」事にエネルギーを要する描写や光そのもののように見える事などから、非実態のスクリーンのようなものに「見える」という事が挙げられます。
結局の所「それが何なのか」という問題に対して明確な設定は見受けられないようで、深遠な宇宙の闇から現れた「宇宙忍者」の「奥義」であるというような存在として語られるものとなっています。
後者は「マジンガーZ」における主人公側の拠点にして最前線であり、最後の砦となる「光子力研究所」の有する強固な防御装置です。
そのあまりに苛烈な立ち位置から「マジンガーZ」共々、常に敵の攻撃にさらされる事が必定である為「~研究所」と称しながら「金城鉄壁」の守りを有する施設。中でも「光子力バリヤー」は中核を為す防御装置であるとされます。
物語的には「敵が圧倒的な力を誇示するように」バリバリと音を立てて破られ、或いは穴を開けられてしまうというものであるばかり。敵に研究所を乗っ取られた際には、その凶悪な性能を遺憾なく発揮してマジンガー達を苦しめるという残念な扱いを受けるもの。
その原理についても、そもそも「~バリヤー」のみならず、「光子力」そのものが極めて多岐に渡る性質を持った未知の技術。「光子力研究所」の中枢以外で、その全容を理解出来ている者はほぼ居ないと言える謎の存在である事でしょう。
少なくとも外形的に理解が及ぶ範囲としては、これらはいずれも「光」の文字が入っており、光る壁のようなもので様々な攻撃を防御するといった類似性を持っています。「バリア(バリヤー)」のイメージを「光るエネルギーのようなもので防護する技、もしくは装置」といったイメージを定着させたものです。
踏み込んだバリアの技術
「バリア」系統の「技術」として、もう少し設定的に踏み込んだ情報が見受けられるものとして、「ガンダム」シリーズに現れる「Iフィールド(ジェネレーター)」と呼ばれる装置が挙げられます。
「一年戦争」では「ビーム攪乱幕」と呼ばれる「高分子ガス」によって、ビーム兵器を散乱させるという防御兵器が確立されていました。これは例えば大気中でレーザーやビームが様々な分子に反応し、結果として目標まで到達する前にエネルギーを減衰・散乱してしまうという現象から「現実的な発想」に基づいたものと言えます。
ただ「バリア」という技術からは若干アプローチが異なる技術であると言えるもので、より「バリア」としての方向性を増したものが「Iフィールド」と呼ばれる装置です。
これは「ガンダム」シリーズにおける「宇宙世紀」の物語で根幹を為す技術である、「ミノフスキー粒子」にまつわるもの。同粒子が形成する「立方格子(Iフィールド)」状の原子モデル、もしくはそれによって形成される「特殊な力場」を意味します。その現象を利用してビーム兵器の構成要素である「メガ粒子」を偏向させる、技術や装置を同様に称するものです。
「宇宙世紀」において「ビームサーベル」や「ビームシールド」と言った、ビームを特定の形状に加工するようなものに多く用いられた技術。
場合によってはそれそのものを機体周囲に発生させる事で、その斥力を用いてビーム兵器を無効化する「バリア」の用に運用するケースも見られました。
このように「特殊な力場から発生する斥力(中心となる物体から押し退けようとする力)」を用いるケースが見られる。他にも作品によっては「生命なら誰しも持っている心の壁を増幅して力場として発生させる」であったり、「別次元への移動経路が持つ物理現象を一切遮断する作用を壁として援用する」等のアプローチが見受けられます。
結局「バリア」とは何なのか?現実と創作を隔てる「壁」
エンターテインメントにおいて多用される「バリア(バリヤー)」の性質を幾つか羅列してみると、防御対象を「包む」ように展開される「幕」であったり、相対する脅威を防ぐ「壁」や「盾」の形状を取るものである。
大方において共通する「仕様」という事が見えて来ました。
そうなると防御に用いられる「力」というのは、「物理的に対象の力を遮断する=密度と質量」「対象を中和もしくは破壊・蒸発せしめる=高電流や高熱、プラズマ等高エネルギー状態」「侵徹しようとする対象を押し退ける=斥力」という辺りが考えられる事になります。
密度と質量
まず第一に「密度と質量」は、最も単純に「固くて重い」ものが相当する事になりますが、これではただの「装甲」であったり「盾」であって「バリア」とは一線を画するものだと言わねばなりません。
また「固くて重い」障壁は、文字通り「固くて重い」以上、収納したものを必要に応じて展開しようと思えばそれを移動させる力が必要であり、当然ながら瞬時に展開と解除を切り替えるといった芸当は実質的に不可能という事になります。
高エネルギー状態
次に「何らかの高エネルギー状態」。これは「ガンダム」シリーズにおける「ビームシールド」を始めとして、SF的なアプローチでは「電磁バリア(シールド)」等が見られる事から、最も「現実的」だと言えるものです。
実はこの方策は現実において「爆轟による衝撃波を緩衝する技術」という形で特許が取得されたという話もあります。
最もそれはあくまで「衝撃波の緩衝」。いわゆる「バリア」のように「張っていれば幾らかの攻撃を受け止め無効化する」というものではありません。発生した衝撃波に対抗してプラズマを発生、ぶつける事で衝撃波を減衰させるという方法であるという事です。
電磁装甲
他にも「電磁装甲」という次世代型防御兵器として、装甲部分から瞬間的に強力な電磁気、ないし放電を行う事で接近した弾体を破壊するといった方策が研究途上ながら存在しているという話題もあります。
方向性としては「似て非なるもの」といった具合ではありますが、将来的にエネルギー源の問題等をクリア出来たとすれば、より「バリア」に近いものが実現する可能性が無きにしも非ず。
といった具合で有望ではあるという事も言われているようです。
斥力
最後に「斥力」ですが、これは物理的に最も難解なものだという事になります。そもそも完全な形で「斥力」と言える力を発揮出来るものが現実では発見されておらず、物理的に極めて難しいと言わざるを得ないのが現状です。
一応電磁力における同極に作用する力が在りはしますが、電磁力には常に「反対の極」が存在する為、強力に弾き返そうとする程、反対側には強烈に引き寄せる力が働いてしまう事になる。
「危険性」があり、現実的とは言い難いものであると考えられるのです。
電磁力のように「発生源から放たれる」タイプの力は「発生源から離れる程力が弱くなる=発生源の周囲が一番強い」という「バリア」として運用するには「本末転倒」となりかねない性質が存在します。
バリアの候補
以上を踏まえると「バリア」の候補として最も有望と現状言えるのは「超高圧のプラズマ」であるという事は一応出来そうではあるようです。
但し、それも結局は「受け止める攻撃に対してそれだけのプラズマを作り出すコストが見合うか」という問題が最大の「壁」となって立ちはだかるものだと考えられます。
現行兵器の装甲で十分事足りるようなものに、強力なプラズマを用いる事は「無駄」であるばかりか、場合によっては悪い結果をもたらす事もあるかもしれないという問題があります。
防御とはあくまで「安全に運用出来る事が必要」である為、適材適所。即ち攻撃の質を見極め、どんな対策を取るのか定めて対応するというのが「現実的」な落とし所であるというのが「現状」であるようです。
この「現状」を打破するような画期的アイデアが生まれれば或いはという事かもしれません。
※画像はイメージです。
思った事を何でも!ネガティブOK!