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終末の予兆?アポカリプティックサウンドと「ヨハネの黙示録」

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「小羊が第七の封印を解いたとき、半時間ばかり天に静けさがあった。それからわたしは、神の御前に立っている七人の御使いをみた。そして、七つのラッパが彼らに与えられた」
(「ヨハネの黙示録」第8章1節、2節)

『新約聖書』の最後におかれた「ヨハネの黙示録」には、神がヨハネにみせた世界の終末と、そのときに聞こえた音が書かれている。記述によれば、「最後の審判」の前には七人の御使いが七度ラッパを吹き鳴らすとある。七つのラッパは神の怒りを表し、それらがひとつずつ吹かれるたびに地上に裁きが下される。ラッパの音色は、世界の終わりを告げる破滅の音というわけだ。

2011年以降、世界各地で頻繁に確認されるようになった奇妙な現象をご存知だろうか。
なんの前触れもなく、空や地中から不気味に鳴り響く音をあなたも聞いたことはないだろうか。
この金属的な怪音がアポカリプティックサウンドと呼ばれるのは、もちろん「ヨハネの黙示録」に由来する。もしや、これはくだんの終末のラッパなのではないかと不安を感じる終末論者もいるようだ。

目次

世界中で聞こえる謎の音響現象

現在、YouTubeやSNS上にはアポカリプティックサウンドをとらえた動画が数多く存在する。この奇怪な音が注目を集めるようになったのは2011年以降のことで、「アポカリプティックサウンド」という呼称もこのころに生まれたと考えられる。それ以前にメディアで使用された例は確認できなかったからだ。
しかし、だからといって、2011年までに同様の現象がまったくなかったかといえばうそになる。突如として鳴り響く地球のうめき声のような音は昔から報告されていたし、日本にも空鳴り、海鳴りという言葉がある。

アポカリプティックサウンドの動画投稿が2011年を境に激増し、国内外のメディアに取り上げられるまでに発展した背景には、もちろんスマートフォンの普及がある。同時期に、マヤ暦の長期歴に関する誤解から2012年人類滅亡説が取り沙汰されていたことも少なからず影響しただろう。

火付け役となったのは、その年の8月にウクライナのキーウで撮影された1本の動画だった。これを皮切りに、アメリカ、カナダ、ブラジル、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、ノルウェー、デンマーク、ロシア、ベラルーシ、フィリピン、日本といった国々からの投稿があいついだ。もちろん、なかにはフェイクもあれば、音の正体は都市部の環境音だったというオチもあるので、すべての動画が謎の音をとらえたものとはいえないが。

アポカリプティックサウンドはどんな音?

肝心の音色はその時々で違いはあるものの、不協和音のような耳障りな金属音という点はほぼ共通している。錆びついた重い門扉がギィーッと開く音や、金管楽器のブォーンという重低音を連想させる。ゴジラの断末魔のように聞こえるものもある。
いずれも陰鬱な音色で、空全体が共鳴するようにエコーがかかっているところも恐怖をあおる。自分の街にこんな音が鳴り響いたら、誰だって不安にかられるだろう。

この怪現象にはふたつの大きな謎がある。
第一に、人によって聞こえ方にばらつきがあり、音の発生源を特定できないこと。ひとつの事例においても地中から響くように感じたり、空から降り注ぐように聞こえたりするため、地球の内側の音なのか外側の音なのかがはっきりしない。加えて、聞こえた方角や音の長さもまちまちだったりする。人間の可聴域は年齢や個人差によって異なるので、人がアポカリプティックサウンドをすべて知覚できているとはかぎらない。
第二に、自然界では聞き慣れない音であること。これが自然現象なのか、超自然現象なのかがわからないのだ。

わたしたちはとかく、自然界の不気味な音を大地震などの災害と結びつけて考える。目にはみえないが音は聞こえるという現象は心理的に不安をあおる。その結果、人々の想像力もふくらんでいく。この音を「災厄の前兆」ととらえる人は思いのほか多いようだ。とりわけ宗教的解釈を好む人々のあいだでは、「ヨハネの黙示録」になぞらえて、「世界の終わりがはじまった」と恐れる声が上がっている。

ヨハネの黙示録

『新約聖書』のなかでもとりわけ異彩を放つ「ヨハネの黙示録」。
その解釈について今も議論が絶えないのは、『新約聖書』でただひとつ預言書としての性格が強い文書であり、黙示文学というわかりにくい形式をとっているためだろう。たとえば、その内容がメタファーなのか、実際に起きることなのかについても解釈が分かれる、というふうに。
ギリシア語の原題は「アポカリュプシス・イオアノ」で、「アポカリュプシス」が「黙示」、「イオアノ」がヨハネにあたる。タイトルにある「黙示」とは、「覆いを取り、隠された事実を明らかにする」という意味で、それから転じて人間が知ることのできない神の意志や世界の終末といったものを示す意味合いになった。

こうした特異性に加え、不吉な言葉のオンパレードでもあるせいか、なにやら恐ろしいイメージが先行しがちな黙示録だが、その一方、壮大で仰々しすぎる厨二病的な世界観があまたの創作作品へ影響を与えてきたのも事実である。日本でもっともよく知られた一節はこれだろう。

「ここに、知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は六百六十六である」(「ヨハネの黙示録」第13章18節)

書かれたのは1世紀末、ローマ帝国によるキリスト教徒迫害が激化していたころと推定される。エーゲ海のパトモス島に流された著者は、迫害下にある信徒に激励と警告を与えるためにこれを書いた。冒頭でみずからを「しもべヨハネ」と名乗っているから、書き手はヨハネという人物でまちがいない。では、このヨハネとは誰なのか。
伝統的な解釈にしたがえば、十二使徒の一人であるヨハネと同一人物となるが、別人物とみる向きも強く、決着はついていない。
しかし文中で記されているのが名前だけであり、それ以上のことが語られていないところをみると、よく知られた人物だからこそ自己
紹介が不要だったとも考えられる。これはつまり、書き手が使徒ヨハネであることを示唆している。

信徒を励ますために筆をとるのだから、彼はおそらく、信徒にはわかるがローマ人にはわからないように書かなければならなかった。そのために黙示文学という難解な形式をとったのではないかと筆者は勝手に解釈している。

七人のラッパ吹き

この書に書かれているのは、戦乱、飢饉、天変地異、疫病の流行といった、ありとあらゆる禍だ。ただし世界が滅亡しておしまいではなく、天使と悪魔の戦いや最後の審判を経て神の国が到来し、信仰者が勝利するまでが描かれる。不謹慎を承知でざっくりと要約すれば、「最終的に神は悪魔をやっつけて新しい国がもたらされるから、そこで神と暮らせるようにイエス・キリストを信仰しなさい」ということだ。

ヨハネのみた七人のラッパ吹きは、つぎのようなものだった。
神の右手には巻物があり、七つの封印で封じられていたが、七つの角と七つの目をもつ小羊(復活したイエス・キリスト)がひとつずつ封印を解いていく。封印が解かれるごとに地上が禍に襲われる。第七の封印を解いたとき、七人の御使いがあらわれて、それぞれにラッパがわたされた。御使いたちが順番にラッパを吹いていき、ヨハネに地獄の光景が示される。

天から雹(ひょう)や火が降り注ぎ、木々は焼け、海は血となり、多くの生き物が死滅する。空からは燃え盛る星が落ち、太陽も月も光を失う。人々はイナゴの大群に苦しめられる。さらに、人間の三分の一を殺すために四人の御使いが解き放たれる。大地が大きく揺れ動く。

聖書を正典とするキリスト教徒が、どこからか鳴り響く金属音のような音に黙示録のラッパを重ねたとしても不思議ではないだろう。

専門家の見解は諸説紛々

アポカリプティックサウンドは科学界でも注目を集め、さまざまな見解が乱れ飛んでいる。
おもだったものには、大気中の放電現象にともなう電磁ノイズ説(NASA)、太陽プラズマと地球の磁場の相互作用説(地球物理学者)、地殻変動の影響説(地質学者)などがある。諸説として上がっているものにはそれなりの根拠があり、一定の説得力もあるのだが、いずれもすべての事例を説明できるまでにはいたっておらず、仮説の域をでていない。
もしかしたら、すべての事象を「不気味な音がする」という共通点で同一視する人間がまちがっているのかもしれない。じつはそれらはまったく異なる原因による音響現象で、人間の視点では同じにみえるだけかもしれない。

テクノロジーの発達や情報の拡散がめざましい現代においても、いまだ明かされない謎はたくさんある。不明な部分が多いからこそ、いたずらに不安をあおるような書き方はしたくない。
しかし世界には、「ヨハネの黙示録」の記述は文字どおり真実で、そのとおりに世界の終末がおとずれると信じている人もいる。テロや戦争、核兵器、環境問題、新しい疫病など、たしかに人類は多くの問題を抱えている。

彼らにとって、アポカリプティックサウンドは神の警告なのだ。
世界の空で鳴り響く謎の音は、当分のあいだは未知の領域にとどまることになりそうだが、発生メカニズムの研究が地道につづけられることを望みたい。

※画像はイメージです。

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