SNS界隈で、キャベツ枕が話題に上がっていたようだ。
なんでも、キャベツを枕にする事で、血液がアルカリ性になって熱が下がるとか、そういう健康系オカルトのようだ。
血液をキャベツに接触させ、然る後に体内に戻すというのは、血液透析や瀉血より遥かに危険な行為だが、一体どのような超常能力で可能となっているのだろうか。
キャベツ枕とは
キャベツ枕について調べると、2018年頃のネット記事がいくつか出て来る。
つまり、その頃に流行ったものが、最近になってまた発掘され、目に触れたようだ。
ネタの再発掘は、まとめサイトやSNSがやりがちな事である。
だが「だから無意味なもの」とも言い切れない。
何度も擦られるうちに、結果として定着するという事も十分あり得る。
さて、キャベツは「解熱」と「鎮静」が主な目的のようだ。
解熱の理屈としては、熱だけでなく、「毒素」を吸収する、「血液をアルカリ性にする」といったものがあるという。
では、熱の吸収、毒素の吸収、血液のアルカリ性化。
この3点について、キャベツ枕がどう作用するか考えてみよう。
キャベツ枕の作用の考察
キャベツ枕の作用についてあげていく。
1.熱の吸収
熱は高い方から低い方へ移動する性質がある。
20℃の水1リットルと30℃の水1リットルを混ぜると、30℃の水分子の熱は20℃の水分子に移っていき、中間の25℃で均衡する。
30℃の水が2リットルだった場合、27.5℃で均衡状態になる。
つまり「熱×質量」が、そのものの持つ熱エネルギー量で、熱は高い方から低い方に移る。
人間が熱発している時の温度が38.0℃だとして、キャベツを枕にしたり、頭に被せたりした場合、どうなるだろう。
冷蔵庫に保管されたキャベツの温度は、最低でも0℃である。
そしてキャベツはひと玉で1200g程度、1枚で50g程度である。
人間が60kg(60000g)だとすると、
ひと玉:人間1人=1200:60000=2:100
1枚:人間1人=50:60000=1:1200
つまりひと玉全てに熱を移動させたとして、1℃も下がらない。
そして、肉体は筋肉運動などで熱を継続的に作り出すが、冷やしたキャベツは温まっていくだけだ。
2.毒素の吸収
毒素というのが何であるかは曖昧だが、これが身体に影響を及ぼすには、血液か細胞内に入る必要がある。
皮膚のバリア機能は強力なので、キャベツを接触させただけで内側に届く事はない。
一方、肌に付着した有毒物質を拭き取るという形で、毒の影響を防ぐ事は可能そうだ。
キャベツの葉には水気もあるので、それなりに綺麗に拭き取れそうだ。
無論、ウェスやお手ふきがあれば、それに越した事はない。
キャベツを枕として使う場合、毒素を取り除くのは難しそうだ。
枕が体内にアプローチするためには、皮膚を切開する必要があるが、キャベツ枕の使い方を説明する記述に、皮膚を切開する手順が入ったものは見た事がない。
姥ヶ池(淵)の伝説のように、硬い枕で頭を割るという方法なら内部にアプローチする事は可能だが、これは殺害方法であって、健康法、治療法とは真逆のものだ。
3.血液のアルカリ化
血液のphは極めて厳密に保たれているため、簡単に動く事はなく、動くのであれば重篤な病気である。そして毒素でも述べた通り、枕にしたキャベツは血液にアプローチ出来ない。
強アルカリの水酸化ナトリウムを枕に浸した場合、皮膚も侵食してくれるが、頭をかち割るのと同様、健康を害するだけだ。報告者が言うような「効果」が生じているなら、上記3つの説明は的外れと言わざるを得ない。
だとすれば、一体何がどう働いて「健康効果が得られる」という効果に至ったのだろうか。

キャベツの真なるオカルト作用
科学で分からない事は、とりあえずオカルトを根拠にするのが最も利口なやり方である。
オカルトにおけるキャベツには、どんな力があるのだろうか。
キャベツは野菜にしては長持ちするため、保存用の野菜として用いられた。
更に、ザワークラウトのような発酵食品にする事で、更なる長期保管ができ、長期航海時のビタミン補給に役立ったという。
ヨーロッパでは科学的には否定されているものの、痛み止めとしてキャベツを患部に貼るという民間療法も存在した。
胃腸に効くという説もあるようだ。
一方文化面の登場機会は多い。
「キャベツ頭(cabbagehead)」は、硬い頭(石頭)を指す。
また、スコットランドでは、ハロウィンにキャベツを引き抜いて、伴侶に関する占いが出来るという伝承があるという。
コウノトリ伝説同様、キャベツの茎の根元から、人間の赤ん坊が生まれるという話もある。
1980年代にアメリカでブームを起こした「キャベツ人形」は、このキャベツから子供が生まれるという伝承を聞き覚えていた制作者による発案だという。
これらの文脈から、キャベツは「命」を象徴するものと理解出来る。
無数の葉が次々に生えて球を作る姿は、無限の生命力をイメージさせ、その巻きの内側に何かしらの力を包み込んでいるというのは、連想しやすい。
キャベツがこのように生命力溢れるものであるとすれば、キャベツ枕がその生命力をもって体調を整えるが故に、熱発時のような弱った状況を改善させ、結果的に解熱効果があるように見えた、と解釈できる。
直接的な解熱と認識したのは、キャベツに触れた時の冷たさからの連想だろう。
だとするとキャベツ枕は、葉を剥がして頭に載せるような緩い方法ではなく、生命力溢れる丸ごとのキャベツをそのまま枕として使うのが正解だろう。
札幌大球のような巨大なタイプなら、尚良い。
安全にキャベツの力を取り込むには
キャベツがかくも強力なエネルギーを持つのなら、扱いにも気を付けなければならないのが道理だ。
人間を癒す以上、他の生物も間違いなく強化する筈だ。例えば部屋の中に入り込んだ亀虫や油虫の類も強化されるだろう。それらが苦手な場合、枕元には置かず、冷蔵庫の野菜室に入れておく方が安全だ。
冷蔵庫に入れてはエネルギーが採れないと思うかも知れないが、こういう場合は身体の中から吸収するのが良かろう。
幸い、キャベツには生の状態でも毒がないので、経口摂取に適している。
枕に出来ないのは残念だが、せめてロールキャベツで枕型にしてやれば、キャベツ枕を使ったというアリバイにはなるのではなかろうか。
SNSでバズるかは分からないが、健康は何にも勝る宝である事は、間違いないだろう。


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